相続人以外に財産を渡す包括遺贈とは? 遺言での指定方法や注意点を紹介
2026/02/12
「遺産を相続人以外の人に残したい」と感じたことはありませんか?
このような手続きは、法律上、相続と区別して「遺贈」と呼ばれます。そのなかでも包括遺贈は、財産全体や一定割合を指定して特定の団体や法人へ遺贈できる方法として注目されています。
しかし、包括受遺者は財産だけでなく債務も承継するといった注意点があり、遺留分や税務手続きなど、慎重な確認が必要となります。
本記事では「包括遺贈とは何か」の基本から、相続や特定遺贈との違い、具体的な方法、手続き上の注意点までわかりやすく解説します。
目次
そもそも遺贈とは?
● 遺贈とは?
遺贈とは、遺言によって財産を相続人以外の第三者に渡すことをいいます。
人が亡くなると、その人の財産や負債は、通常、相続人に引き継がれます。しかし、遺言に書いておくことで、相続人以外の第三者にも財産を残すことが可能です。
遺贈は、贈与ともよく似ていますが、贈与は生前に行うのに対し、遺贈は被相続人が亡くなることによって初めて効力が生じる点が異なります。そのほかにも、贈与は贈与税がかかる一方、遺贈は相続税の対象であるという特徴もあります。
あくまで相続手続きの一環として「遺産を相続人以外に渡したい」という希望を叶える仕組みが、遺贈なのです。
● 相続との違い:法律上の違い
相続と遺贈はどちらも被相続人の財産を受け取る方法ですが、法律上は大きく異なります。
相続は法律の規定に基づいて、法定相続人が当然に財産を取得する仕組みです。遺言がなくても、配偶者や子などの法定相続人は相続権をもちます。相続人は原則として被相続人の立場をそのまま承継することになり、財産や負債はもちろん、法律上の様々な権利義務を引き継ぐこととなります。
一方、遺贈は遺言によって初めて財産を取得する仕組みであり、遺言書がなければ成立しません。そして、遺贈先として指定された人(受遺者)は、遺贈を拒否することも可能です。さらに、遺贈を受ける側の権利や義務は、相続人より制限されていることが通常です(ただし、以下にも説明しますが、包括遺贈であれば、相続人に近い立場となります)。そのため、名義変更などの相続手続きが複雑になる傾向があります。
このように、相続と遺贈は、法律上様々な違いがあります。
● 相続との違い:税務上の違い
相続と遺贈は、法律上のみならず、税務上も様々な違いがあります。
遺贈は、人が亡くなったことによって始まるため、贈与税ではなく、相続税の対象となります。相続人以外が遺贈を受けた場合であっても、相続財産の総額が基礎控除額を超えていたら、相続税を納める必要があるのです。
そして相続と遺贈の違いですが、「配偶者・一親等の血族関係にある者(親や子)・代襲相続人の孫以外」に遺贈をする場合は、相続税が2割加算されます(相続税の2割加算)。つまり、近い血縁者以外の人に遺贈をして、その人が相続税を支払うことになったら、その相続税は20%増額されるのです。
また、相続では不動産取得税が課税されませんが、相続人以外への遺贈では不動産取得税が課税されます。さらに、相続登記の際に生じる登録免許税は、相続であれば不動産の固定資産税評価額の0.4%、遺贈であれば2%と、5倍の差があります。
以上のような違いから、一般的に、相続よりも遺贈の方が税務上の負担は大きくなりやすいです。
● 相続人には「相続」、それ以外には「遺贈」という認識でOK
実務上、シンプルに考えると、法定相続人(配偶者、子など)に財産を残すことを「相続」、それ以外の人(相続人でない親族、友人、知人など)に財産を残すことを「遺贈」と考えて問題ありません。
ただし、厳密にいうと、相続人に対しても遺贈という方法で財産を渡すことができます。たとえば、「長男に相続させる」と「長男に遺贈する」のどちらでも可能です。とはいえ実務上はそのような事例はほとんど見受けられず、相続人への場合は「相続させる」という文言を使うことが一般的です。
● 遺贈であれば法人にもできる
遺贈の大きな特徴として、個人に対してだけではなく、法人に対しても行うことができる点が挙げられます。
相続は人間関係に基づく制度であり、法人は相続人になれません。しかし遺贈であれば、株式会社、学校法人、公益団体、宗教法人など、様々な法人にも財産を残すことができます。
さらに、公益的な目的の法人に遺贈する場合は、遺贈先が相続税の負担を免除されることもあります(遺贈寄付)。
「事前に受取先に確認する必要がある」「遺留分を考慮する必要がある」といった注意点もありますが、自分の財産を希望する形で後世に残す方法として、法人への遺贈は検討に値する選択肢といえるでしょう。
包括遺贈の特徴と特定遺贈との違い
● 包括遺贈と特定遺贈
遺贈には「包括遺贈」と「特定遺贈」という2つの種類があります。
包括遺贈は「財産の全体または一定の割合を指定して行う遺贈」であり、特定遺贈は「具体的な財産を特定して行う遺贈」です。
具体的には、
- 全財産をAへ遺贈する
- 財産全体の2分の1をBへ遺贈する
という書き方が包括遺贈であり、
- 大阪府○○の土地はA、東京都××の土地はBに遺贈する
- △△株式会社の株式は、CとDに2分の1ずつ遺贈する
という書き方が特定遺贈です。
大した差はないように感じるかもしれませんが、これら2つには法律上、大きな違いがあります。
● 包括遺贈の特徴
包括遺贈の最大の特徴は、受遺者が相続人と同等の権利義務をもつという点です。
どういうことかというと、まず、包括遺贈の受遺者はプラスの財産だけでなく、マイナスの財産(借金など)も引き継ぎます。たとえば、先ほどの例のように「財産全体の2分の1をBへ遺贈する」とされていた場合において、遺言者に借金があれば、Bは、その借金の2分の1を引き継ぐことになります。この借金には、遺言者が連帯保証人になっていたときの保証債務も含みますので、注意が必要です。
さらに、包括遺贈の受遺者は、遺産分割協議に参加することができます。
このように、包括遺贈を受けると、事実上相続人のような扱いを受けることになるのです。そのため、遺贈を受けるか拒否するかの判断を慎重に行わなければなりません。
なお、包括遺贈の放棄は、家庭裁判所に申述して行う必要があります。期限は相続放棄の場合と同じく、自分に遺贈されることを知った日から3か月以内です。「包括遺贈を拒否したい場合には手続きが必要」ということを認識しておきましょう。
● 特定遺贈の特徴
包括遺贈には上記のように様々な特徴がありますが、特定遺贈はどうでしょうか。
特定遺贈は、包括遺贈に比べてかなりシンプルで、受遺者は指定された特定の財産のみを取得します。たとえば、自宅の土地建物だけを遺贈された場合、受遺者はその土地建物のみを取得し、他の遺産や借金には関わりません。
また、特定遺贈の受遺者は、遺産分割協議に参加する必要がありません。
さらに、放棄の手続きも簡単で、特定遺贈を放棄する場合には、相続人に対して放棄の意思を伝えれば足ります。家庭裁判所への申述は不要です。
● 包括遺贈と特定遺贈の違いまとめ
包括遺贈と特定遺贈の違いをまとめると、以下のとおりです。
【包括遺贈】
- 財産を個別に指定せず、財産全体の一定割合を遺贈する
- 借金などのマイナスの財産も引き継がれる
- 遺産分割協議に参加できる
- 放棄する際は期限内に家庭裁判所での手続きが必要
【特定遺贈】
- 財産を個別に指定して遺贈する
- 借金などのマイナスの財産は引き継がれない
- 遺産分割協議に参加できない
- 放棄する際は相続人への意思表示をすれば足りる(期限はないが、相続人から催告をされたら期限内の意思表示が必要)
包括遺贈のメリットと注意点
● 包括遺贈を選ぶケース
包括遺贈は、どのような場合に活用されるのでしょうか。
たとえば内縁の配偶者に財産を残したい場合、戸籍上の配偶者ではないため相続権がありませんが、包括遺贈であれば遺産全体を譲ることができます。
また、複数の相続人以外の人に遺産を分けたい場合も、複数の包括遺贈を組み合わせることで実現できます。
包括遺贈を活用することで、遺言者の意思を反映した、円滑な資産承継が可能です。相続人に財産を残したくない場合や、そもそも相続人がいない場合において、自分の財産を親しい友人やお世話になった人、またはホスピスや慈善団体へ残すことができるのです。
● 包括遺贈のメリット
包括遺贈のメリットは、他に相続人がいる場合において、柔軟に遺産分割ができるという点です。包括遺贈を受けた人は、遺産分割協議を通じて具体的にどの財産を取得するかを相続人と交渉できます。
また、包括遺贈であれば、遺言書作成時に全ての財産を詳細に特定する必要がありません。特定遺贈では、「○○銀行の預金」というように具体的に指定する必要がありますが、包括遺贈なら「遺産の3分の1」というように割合で示すだけで足ります。
さらに、遺言者が亡くなった後に新たに発見された財産や、遺言書作成後に新たに取得した財産も、包括遺贈に含むことができます。特定遺贈では、新しい財産は対象外になってしまいます。
● 包括遺贈の注意点
一方で、包括遺贈には注意すべき点も多く存在します。
まず、包括受遺者は財産だけでなく債務も承継することを理解しておく必要があります。たとえば「遺産の全部をAに遺贈する」とした場合、Aは遺産全体を受け取る権利を得ると同時に、被相続人の全ての借金も負担することになります。負債が資産を上回る場合は、受遺者にとって極めて不利になってしまいます。そのような場合に遺贈を放棄しようにも、家庭裁判所での手続きが必要であるため、受遺者にとって負担になってしまうでしょう。
また、法定相続人には遺留分が認められているため、遺留分を侵害するとトラブルになる可能性があります。遺言によって全財産の大半を包括遺贈された場合、他の法定相続人の遺留分を侵害していないか注意が必要です。
さらに、包括遺贈によって財産を受け取る場合、包括受遺者には相続税が課されます。これは法定相続人とほぼ同じ扱いとなり、基礎控除額や税率も相続人と同様です。しかし、相続人でない包括受遺者は、生命保険の非課税枠や配偶者控除など一部の特例が適用されません。
このように、包括受遺者は権利を得ると同時に義務も負うため、遺言内容や財産・債務の状況、遺留分の有無を事前に十分確認することが不可欠です。トラブルを防ぐためにも、専門家のアドバイスを受けながら慎重に対応しましょう。
遺言書で包括遺贈をする方法とコツ
● 包括遺贈の方法
包括遺贈を実現するためには、法的に有効な遺言書の作成が不可欠です。
遺言書には自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類があり、いずれの形でも遺贈をすることはできますが、一般的には自筆証書遺言と公正証書遺言が選ばれます。
自筆証書遺言とは、本人が全文・日付・署名を自筆で書く形式の遺言です。費用がほとんどかからず手軽に作成できますが、形式不備や紛失のリスクがある点に注意が必要です。
一方、公正証書遺言とは、公証役場で公証人の立会いのうえで作成する公的な遺言です。法律上の不備を防げるうえ、原本が公証役場に保管されるため紛失や改ざんのリスクが低く安心です。ただし、証人2名の立会いや手数料が必要になる点も押さえておきましょう。
遺言書には、包括遺贈の内容(例:「財産の全てを○○に遺贈する」「財産のうち3分の1を公益財団法人○○に遺贈する」など)を明確に記載します。その際、相続人や包括受遺者の範囲、各人の相続分の割合、遺留分についても考慮しておくと、トラブル防止に繋がります。実務上は、遺言執行者の指定や財産目録の添付も重要なポイントです。
以下に、各方式でのより具体的な遺言の作り方を紹介します。
● どの種類にも共通する遺言書作成の流れ
自筆証書遺言と公正証書遺言は作り方が異なりますが、どちらの場合であっても遺言書自体の作成方法には共通している部分があります。
遺言書の作成は、自分の財産や負債を把握するところから始まります。このとき、現預金や不動産、株式はもちろん、ローンの残債や保険など、自分が死んだ後に残るものの全体像を把握することが大切です。
次に、自分の相続人が誰かを確認しましょう。相続人以外に財産を遺贈する場合であっても、この確認は事前に終えておくことをおすすめします。
続いて、誰に・何を・どうやって遺贈するかを決めましょう。
内容が決まったら、どの形式で遺言書を作るかを決めて、実際に遺言書を作成していきます。
どちらの遺言方式を選ぶべきかは、ご自身の財産内容や家族構成、将来のリスクへの備えによって異なります。たとえば、財産が少額で相続人が限られている場合は自筆証書遺言でも十分なケースがあります。一方で、不動産や預貯金が多く、相続人が複数いる場合や、特定の相続人に配慮したい場合は公正証書遺言の方が安心です。
迷ったときは、相続の専門家に相談するのが確実です。大阪市内にも無料相談窓口や司法書士事務所が多数あり、個別事情に応じたアドバイスを受けられます。判断基準としては、「形式の確実性」「費用」「保管・発見のしやすさ」「家族間トラブル予防」の4点を比較し、ご自身にとって最も納得できる方法を選びましょう。
● 自筆証書遺言の書き方
自筆証書遺言は、全文を遺言者自ら手書きする遺言書ですが、法律で定められた形式を守らなければ無効となる可能性があります。具体的には、以下のような形式です。
- 署名や日付、本文はすべて手書きで書く(ただし、財産目録は自書不要)
- 作成日を明確に書く(「吉日」はNG)
- 署名の後に捺印する(複数枚にわたる場合には契印が必要)
このような点に注意すれば、自筆証書遺言は自宅でも簡単に作れます。一方、相続関係や財産の内容が複雑な場合には、書く内容が複雑になってしまい、形式上の不備が起こりやすくなります。
書き方や内容、書いた後の保管方法も含め、不安がある場合には専門家への相談を検討することが失敗を防ぐポイントです。
● 公正証書遺言の作り方
公正証書遺言を作るには、公証役場に必要な資料を提供して、公証人に遺言書の案文を作成してもらいます。公証人が関与しながら作成するため、法的な有効性が高く、相続手続きの際に検認が不要な点も大きなメリットです。大阪市内には複数の公証役場があり、アクセスしやすい点も大きな特徴です。
そして案文が完成すると、公証役場に行く日を案内されますので、予約を取って公証役場に行きます。その際、証人2名を準備する必要がある点に注意してください。作成当日には、公証人の面前で内容を確認し、証人とともに署名・押印を行い、公正証書遺言を完成させます。
近年はオンラインでの作成や電子署名も可能であり、一部の公証役場では出張にも対応しているので、対面での手続きに不安がある場合には公証役場に相談してみましょう。
● 遺言書で包括遺贈をする際におさえたいコツ
包括遺贈を遺言書に記載する際の重要なコツを、いくつか挙げます。
まず、受遺者が複数いる場合は、各人への遺贈の割合を明確に記載し、合計が100%になるようにします。曖昧な表現は避けましょう。「一部を遺贈して残りは相続人に任せる」といった指定も可能ですが、その場合にも、遺贈先と遺贈する割合を明確に指定するようにしてください。「誰が読んでも同じように読み取れる遺言書」を目指しましょう。なお、包括遺贈と特定遺贈を組み合わせることも可能です(例:「遺産の全部をAに遺贈する。ただし、東京都○○の土地建物はBに遺贈する」)。
さらに、相続人以外の人に包括遺贈をする場合は、遺留分に配慮する必要があります。相続人の遺留分を著しく侵害する内容になっていないか、確認しましょう。
また、受遺者が遺言者より先に亡くなった場合に備えて、予備的な定めを記載しておくことも重要です。「Aが遺言者より先に亡くなった場合は、その遺産をBに遺贈する」といった記載があれば、いざというときのトラブルを防げます(この記載がなければ、Aに残すとした財産は、相続人が相続することになります)。
最後に、できる限り遺言執行者を指定しておくことをおすすめします。遺言執行者とは、遺言の内容を実現するために、財産の調査や名義変更等をする権限をもつ人です。遺言執行者がいない場合の遺贈の手続きには、相続人全員の協力が必要となってしまいます。「相続人が多すぎて手続きが大変」「相続人が手続きに協力してくれない」といった事態を避けるためにも、遺言執行者を指定しておきましょう。
相続発生後の手続き
● 包括遺贈をする場合の相続手続きの流れ
包括遺贈に関する記載がある遺言書が残されているケースにおいて、遺言者が亡くなった場合、相続手続きは以下のような流れで進行します。
- 相続人と財産・負債の調査
- (必要であれば)遺言書の検認
- 包括受遺者への通知
- 包括受遺者による承認・放棄の意思表示
- (必要であれば)遺産分割協議書の作成
- (必要であれば)相続税の申告・納付
遺言を書く際は事前に上記の流れを把握し、可能であれば遺言書に指定している遺言執行者にも共有しておきましょう。
以下に、各手続きを解説します。
● まずは相続人と財産・負債の調査から
相続が発生したら、まずは相続人と財産・負債の調査をします。
戸籍を集めて誰が法定相続人となるのかを明確にすることで、相続財産調査がスムーズになり、今後の手続き全体の方針なども考えられるようになります。大阪市では区役所やサービスカウンターで戸籍や住民票を比較的スムーズに取得できるため、早めの手続きを心がけましょう。
すべての相続で必要となる戸籍は、「被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本」と「相続人全員の現在戸籍の謄本または抄本」です。不備があると相続人の確定や財産の名義変更に支障をきたすことがあります。前者については、広域交付制度を利用することで、他市区町村にある戸籍も一括で取得できるため、効率的な調査が可能です。専門家に依頼する場合も戸籍の収集がスピーディーに進む場合が多く、費用対効果を考えて検討するとよいでしょう。
相続財産調査では、不動産(土地・家屋)、預貯金、有価証券(株式・投資信託など)、保険金、動産(自動車・貴金属・美術品など)、事業用資産、デジタル資産、そして債務(借金・ローン・保証債務など)といった多岐にわたる財産を網羅的に調べる必要があります。たとえば、不動産の場合は登記事項証明書の取得、預貯金は金融機関への残高証明依頼、有価証券は証券会社への照会など、各財産ごとに調査方法が異なります。大阪市内であれば、地方銀行の支店があることも多く、地元の法務局や金融機関を活用しやすい点がメリットです。調査の際は、漏れのないようチェックリストを作成し、専門家のアドバイスも活用しましょう。
● 遺言書に関する手続き
遺言書については、その形式によって対応が異なります。
自筆証書遺言であれば、家庭裁判所での検認が必要となります(ただし、法務局に保管されている場合は検認不要です)。遺言書の検認とは、自筆証書遺言が形式的な法的要件を満たしているか確認する手続きです。検認していない遺言書では銀行口座の解約手続きや不動産登記などが進められないため、相続手続きを進める前に速やかに検認を受ける必要があります。
検認の申立先となる家庭裁判所は「被相続人の最後の住所を管轄する家庭裁判所」であり、大阪市の場合は大阪家庭裁判所です。管轄を確認したら、同じく家庭裁判所のホームページで案内されている必要書類を確認して準備しましょう。主な書類としては、検認申立書、被相続人の戸籍謄本(出生から死亡まで)、相続人全員の戸籍謄本、800円分の収入印紙、郵便切手(内訳は裁判所によって異なる)が挙げられます。検認申立書には、申立人や遺言者の住所氏名などの情報、申立ての理由のほか、相続人の目録をつける必要があります。この目録には全相続人の住所も記載しなければならないので、戸籍を集める際には住民票または附票も請求しておきましょう。
なお、検認前の段階では、封がされている遺言書については開封しないよう注意してください。
公正証書遺言であれば検認は不要です。遺言の内容を確認し、相続手続きに取り掛かりましょう。
● 包括遺贈を実施する方法
包括遺贈の実施方法は、状況によって異なります。
まず、すべての財産が相続人以外の人や法人に包括遺贈されている場合、その人や法人に連絡を取り、遺贈を承認するかどうかを確認します。承認してもらえたら、順次すべての財産の名義変更を進めていき、必要であれば相続税の申告準備も進めます。
一方、「一部の財産は包括遺贈されているが、残りは相続人が相続する」といったケースもありますが、この場合には少し手続きが異なります。
残りの財産について、相続人がどのように相続するか指定があればそのとおりに名義変更をしていきますが、「受け取り方を変えたい場合」や「具体的な分け方について指定がない場合」には、遺産分割協議を行い、遺産分割協議書を作成する必要が生じます。この遺産分割協議には相続人全員と包括受遺者が参加することになるため、関係者を正しく把握するようにしましょう。
● 遺言執行者がいなければ「遺言執行者の選任の審判」を申し立てるのが賢明
特に相続人以外の人への包括遺贈の場合、相続人が協力的でない可能性があります。このような場合、遺言執行者がいないと、手続きが滞る恐れがあります。
遺言者が亡くなった後、遺言書に遺言執行者が指定されていない場合には、家庭裁判所に「遺言執行者の選任の審判」を申し立てることができます。この申立てをすれば、家庭裁判所が公平な第三者(弁護士や司法書士など)を遺言執行者として選任してくれます。また、申立時に「この人を遺言執行者にしてください」という候補者を指定することも可能です。
遺言執行者がいれば、相続人の協力がなくても、遺言の内容に基づいて遺産分割や登記手続きを進めることが可能です。スムーズな手続きのためにも、包括遺贈をするには遺言執行者の指定をおすすめします。
まとめ
包括遺贈を選択する際には、想定されるメリットとリスクを総合的に判断することが重要です。
包括遺贈は、遺贈したい財産や寄付先が明確で、かつ包括的な承継を希望する場合には有効な手段となります。一方で、受遺者が債務も承継し、その強力な権限から他の相続人の権利にも影響を及ぼすため、財産の全体像や負債の状況、相続人同士の関係性などを事前に確認する必要があります。
遺言書作成時に財産目録を作成し、相続人や遺留分権利者への配慮も忘れないようにしましょう。また、税務上や手続き上の不明点があれば、早い段階で司法書士や税理士などの専門家へ相談することをおすすめします。

