自筆証書遺言書保管制度の概要やメリット、利用方法をわかりやすく解説!
2025/10/09
遺言書を作るにあたって、どこに保管したらよいのか、誰にも見つからなかったらどうしよう、といった不安を感じたことはありませんか?
従来の自筆証書遺言は紛失や改ざん、相続発生後の手続きの煩雑さが課題となっていましたが、近年導入された自筆証書遺言書保管制度を活用することで、これらの不安が大幅に軽減されます。
本記事では、大阪市においても相続対策として注目される法務局による遺言書保管制度の概要や利用方法、注意点等をわかりやすく解説します。
目次
自筆証書遺言の基本と特徴
● 自筆証書遺言とは
遺言書は、その作り方によって大きく「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3つの種類に分けられます。
そのなかでも自筆証書遺言は、いわゆる「手書きの遺言」です。紙とペン、印鑑があれば自宅でもすぐに作成でき、他の2種と比べると最も手軽でコストが抑えられる点が特徴です。
有効な自筆証書遺言を作るにはいくつか要件があります。具体的には、署名や作成日付を含めて遺言者本人が全文手書きで書かなければならず、押印も必要です。このような法律上の形式的な要件を満たすことにさえ注意すれば、誰でもその場で作ることができます。
自筆証書遺言は、「ひとまず遺言書を書いてみたい」「簡単なものでいいから遺言書を残しておきたい」という方にぴったりの作成方式といえるでしょう。
● 自筆証書遺言のデメリット
しかし、自筆証書遺言には、その手軽さゆえ、以下のようなデメリットもあります。
- 形式の不備で無効になる可能性がある
- 内容が法律的に誤っており、思い通りに遺産が分配されない
- 紛失、改ざんの可能性がある
- 遺言者が亡くなった後、実際に遺産を分配するには家庭裁判所による「遺言の検認」が必要となる
このようなデメリットのうち、形式面の不備や内容の不備に関しては、司法書士などの専門家に事前に相談しておくことで防ぐことができます。
一方、「遺言書をどこに保管するか」という問題は相談によって解決できるものではありません。保管の方法としては、自宅の安全な場所に保管して信頼できる家族に保管場所を伝えておくという方法が一般的ではありますが、この方法も確実とはいえず、大阪市でも実際に、「遺言書があるらしいがどこを探しても見つからない」「遺言書はないと思っていたが後から見つかって困ってしまった」といった事例が報告されています。
また、遺言者が亡くなった後に必要となる「遺言の検認」は、家庭裁判所が自筆証書遺言の形式的な審査をする仕組みですが、この手続きに時間がかかってしまい、遺産の分配が遅れてしまうといった事例も少なくありません。
このようなデメリットの多くを解消してくれる制度が、今回紹介する「自筆証書遺言書保管制度」なのです。
自筆証書遺言書保管制度とは
● 自筆証書遺言書保管制度とは
自筆証書遺言書保管制度とは、自筆証書遺言を、国の機関である法務局に保管してもらう制度です。
利用には、遺言者本人が法務局に出向いて本人確認を受ける必要があります。本人確認後、遺言書を提出し、遺言書に形式上の不備がないかの確認を受けます。無事に確認が終われば、遺言書は画像データ化されたうえで法務局に保管されることになります。保管期間は、遺言書原本は遺言者の死後50年間、画像データは遺言者の死後150年間と非常に長く、遺言書を紛失したり、遺言書が改ざんされたりしてしまうリスクがほとんどなくなります。
自筆証書遺言を法務局で保管することで、遺言書の所在が明確になり、相続人が遺言書を探し回る手間や、発見できないリスクを回避できます。さらに、第三者による改ざんの心配もなくなり、遺言の内容が確実に相続人へ伝わる安心感が得られます。相続対策として、安心できる遺言書の保管方法を求める方には嬉しい選択肢です。
また、自筆証書遺言書保管制度では、保管するときに形式上の不備がないかのチェックを受けられるため、「形式的な不備があって遺言が無効になった」という事態を防ぐことができます。そして、このタイミングで審査を受けられるため、遺言者が亡くなった後の遺言の検認も不要です。
保管費用も1通につき約3,900円と比較的低額ですので、手書きの遺言のメリットである「コストを抑えられる」という点を活かしたまま、デメリットを軽減することができます。このような点からも、遺言書の保管方法の一つとして、十分に検討する価値のある制度だといえるでしょう。
● 利用の流れ
自筆証書遺言書保管制度を利用するには、自筆証書遺言書を作成する→法務局に予約を入れる→必要書類を持って法務局へ行くという順で手続きを進めます。
この制度はあくまで自筆証書遺言書の保管を目的としているので、利用対象者は「自筆証書遺言書を作成できる人(15歳以上で、判断能力が著しく低下していない人)」に限られる点に注意してください。
また、利用するには法務局に予約して、実際に出向く必要があります。手続きは代理人が行うことはできず、必ず遺言者本人が窓口まで行かなければならない点に注意が必要です。
なお、予約先の法務局は、「遺言者の住所地または本籍地を管轄する法務局」「遺言者が所有する不動産を管轄する法務局」のいずれかになります。せっかく行ったのに管轄外だったといった事態を防ぐためにも、事前によく確認しておくようにしましょう。予約の際に、「管轄が合っているか」「必要書類は何か」を明確にしておくと安心です。
● 基本利用料と相続人への通知制度
自筆証書遺言書保管制度の利用料は、遺言書1通につき3,900円です。さらに、一度保管した遺言書を閲覧する際や、書いてある内容の証明書を請求する際には、別途手数料が必要です。
「想像より高い」と感じる方もいるかもしれませんが、形式面の不備を審査してくれるうえ、長年安全に保管してくれることを思うと、かなり良心的な値段設定だといえるでしょう。参考として、公正証書遺言を作ろうと思うと、数万円から十数万円の公証人手数料がかかります。ただし、公正証書遺言の作成時は「この遺言が法律上問題ないか」も審査してもらえますが、自筆証書遺言書保管制度ではあくまで形式面の審査に留まる点には注意が必要です。
また、自筆証書遺言書保管制度では、事前に「自分が亡くなったときに遺言書の存在を知らせてほしい人(遺言者の相続人、受遺者、遺言執行者等)」を3人まで指定することができます。この指定をしておけば、遺言者が亡くなった後、遺言書が法務局に保管されているという事実が指定された人に通知されます。これにより、せっかく書いた遺言書が誰にも見つけてもらえないという事態を防ぐことができます。
このような通知をしてもらえることを考えると、3,900円はさらにお手頃に感じるのではないでしょうか。
● メリット
自筆証書遺言書保管制度のメリットをまとめると、以下のとおりです。
- 遺言書の紛失や改ざんを予防できる
- 遺言書の形式的な審査を受けられ、自分の死後、相続人による検認が不要になる
- 死亡後、遺言書の存在を相続人などに通知できる
- 比較的低コストで利用できる
遺言書の所在や真正性に関する不安が大幅に軽減されるだけでなく、自分が亡くなった後にも、相続手続きが円滑になるというメリットがあるのです。まさに自筆証書遺言におけるデメリットを軽減するための制度といえるでしょう。
● 注意点
自筆証書遺言書保管制度には多くのメリットがありますが、利用時にはいくつかの注意点も存在します。
まず、チェックされるのは形式上の不備のみで、内容の有効性までは確認されないという点です。自分の意思がきちんと反映されているのか、法律上の懸念点はないかなど、事前に専門家によるチェックを受けておくことが望ましいです。
さらに、保管制度を利用するには、必ず遺言者本人が法務局に行かなければなりません。たとえ本人の身体上の事情で外出が難しくとも、他の人にお願いして手続きを代わってもらうことはできませんし、郵送で申請することもできません。
また、預けた後に内容を変更したい場合は、再度新しい遺言書を作成し、改めて保管申請を行う必要があります。こうした点を理解し、正しい手続きで利用することが円滑な相続につながります。
遺言書を安全に保管するために
● 遺言書の紛失・改ざんが起こるとどうなるのか
自筆証書遺言は自宅などで保管されることが多く、紛失や改ざんのリスクが常に伴います。
万が一、第三者による加筆や差し替えなどの改ざんが疑われる場合には、遺言の有効性自体が争われ、相続人間でのトラブルに発展する可能性もあります。遺言書は本来、相続人間の争いを防ぐためのものですが、保管方法が適切でないと、かえって紛争の原因となりかねないのです。
このような事態を防ぐためには、安全性の高い保管方法を選択することが重要です。
● 遺言書を発見してもらえないとどうなるのか
遺言書は、作成しただけでは意味がなく、相続開始後に発見されて初めて効力を発揮します。しかし、保管場所が家族に知られていない場合や、遺品整理の過程で見落とされてしまうと、遺言書の存在自体が認識されないまま相続手続きが進んでしまうことがあります。その結果、遺言の内容と異なる遺産分割が確定してしまい、後から遺言書が見つかっても、手続きのやり直しや相続人間の対立を招くことになり、混乱に繋がりかねません。
特に不動産の名義変更や預貯金の払戻しが完了した後では、実務上の調整も煩雑になります。確実に遺言の内容を実現するためには、「見つけてもらう仕組み」を整えておくことが不可欠なのです。
● 発見されないリスクは公正証書遺言にもあるが……
ここで「発見されないリスクがあるのは自筆証書遺言だけなのか」と疑問に感じる方もいらっしゃるでしょう。
結論からいうと、発見されないリスクがあるのは、自筆証書遺言に限られません。公証役場で作成する公正証書遺言にもそのリスクはあり、いくら費用をかけて作ったとしても、見つけてもらえなければ、その効果は発揮されません。
しかし、公正証書遺言の保管に関しては、以下の3点が自筆証書遺言と異なるため、自筆証書遺言よりも発見されやすいといえるでしょう。
- 原本は公証役場で保管しているため、改ざんのおそれがない
- 正式な証書として発行されるため、重要書類であることが見た目にもわかりやすく、誤って捨ててしまう可能性が低い
- 正本と謄本(または2つの謄本)の2冊が発行されるため、「1冊は自室に保管して、もう1冊は家族に預ける」といった保管が可能である
● 自分の死後、遺言書を確実に使ってもらうために
自筆証書遺言は発見されないリスクが大きく、遺言書の内容を確実に実現するためには、作成だけでなく「保管」と「発見」の仕組みを意識することが重要です。
具体的には、「信頼できる家族に保管場所を伝えておく」「遺言執行者を指定しておき、遺言書を預けておく」といった方法が考えられます。
そこにさらなる選択肢として、今回紹介している自筆証書遺言保管制度を利用すれば、法務局において遺言書を安全に保管してもらうことができ、紛失や改ざんのリスクを大幅に軽減できます。さらに、相続開始後には遺言書の存在が通知される仕組みもあり、発見されないリスクも抑えられます。
大切なのは、遺言を「書いて終わり」にせず、確実に実現される環境まで整えておくことです。これにより、遺された家族の負担やトラブルを未然に防ぐことができます。
自筆証書遺言書保管制度の流れと必要書類
● 遺言書を作る
それでは、実際に保管制度を利用する際の手続きの流れを確認しましょう。実際の申請は、遺言書作成から法務局での手続きまで数段階に分かれており、各ステップごとに注意点があります。
まず、預ける遺言書を作成します。作成の基本的な流れは以下のとおりです。
- 遺産をリストアップする
- 相続人や受遺者を確認する
- 遺言の内容を決める
- 実際に作成する
作り方は法律で定められており、全文・日付・署名を自分で手書きする必要があります。署名のあとに捺印をすることも忘れないでください。
また、保管制度を利用するにはさらに細かな要件(用紙はA4サイズ、上下左右に余白を作る、用紙の片面のみに記載する、各ページにページ番号を記載するなど)もあるので、書き始める前に、公式ホームページを見て、要件をよく確認しましょう。公式ホームページには、この要件を満たした遺言書の書式のひな形も掲載されているため、ダウンロードして活用してください。
● 法務局に予約を入れる
自筆証書遺言を作成したら、次に、法務局へ予約を入れます。
予約先となる法務局は、「住所地を管轄する法務局」「本籍地を管轄する法務局」「所有している不動産を管轄する法務局」のいずれかです。法務局によっては遺言の保管を取り扱っていないところもあるので、予約時にきちんと確認しましょう。
予約ができたら、必要書類を準備します。一般的な必要書類は所定の保管申請書と預ける遺言書のほか、住民票、顔写真付きの身分証明書、3,900円分の収入印紙です。他に持ち物はないか、当日は何階のどの窓口に行けばよいか、予約時に確認しておくと安心です。
不安を解消するためには、事前に必要書類や流れを確認し、予約時の確認事項をしっかりとメモしてから法務局へ出向く準備を整えることがポイントです。公式サイトの案内やひな形を活用し、万全の準備を心がけましょう。
● 法務局で保管の手続きをする
予約の日がきたら、必要書類を持って法務局へ行き、保管の手続きをします。
必要書類については、提出時に原本を確認されるため、有効期限があるものについては必ず有効期限内のものを持参しましょう。また、遺言書は封をせず、そのまま持参してください。
仮に書類の一部に不備があった場合、再度の来庁や手続きのやり直しが必要になるため、不安がある場合は事前に司法書士などの専門家に相談するのも有効な手段です。
● 保管後の手続きおよび遺言者が亡くなった後の手続き
一度保管をすれば、特段手続きは不要です。ただし、遺言者や通知先の相続人などの氏名や住所が変わったら、変更の届出をしなければなりません。
また、保管した遺言書を変更・撤回する場合には、その旨を申し出る必要があります。変更・撤回は何度でも可能です。保管を撤回した遺言書は手元に返ってきますが、法務局で保管がされないだけで遺言書の効力はあるので、遺言自体を撤回したい場合は破棄しておくようにしてください。
遺言者が亡くなると、相続人や受遺者、遺言執行者などの関係者は、法務局に遺言書情報証明書の発行を請求できるようになります。この証明書は、銀行預金の解約や不動産の名義変更などの相続手続きで利用できます。
通常の自筆証書遺言であれば相続手続きの前に家庭裁判所での検認が必要となりますが、保管制度を利用すれば検認が不要になるので、相続手続きを迅速に始められます。
この一連の流れをしっかり把握しておくことで、自筆証書遺言書保管制度を安心して利用することができるでしょう。申請書の記載ミスや書類不足があった場合も、法務局窓口で丁寧に案内を受けられるため、初心者でも安心です。ご自身で納得のいく自筆証書遺言が完成したら、ぜひ保管制度の利用も検討してください。
まとめ
法務局の自筆証書遺言書保管制度は、遺言書の紛失や改ざんリスクを大幅に減らせるのが最大の特徴です。遺言者本人が直接法務局に出向き、厳格な手続きのもとで保管されるため、第三者による不正な開封や書き換えが防止されます。
この制度では、遺言書の原本が法務局で厳重に管理され、相続発生後も相続人が証明書類を持参すれば内容の確認や記載事項の証明書の取得が可能です。これにより、相続開始後の「遺言書が見つからない」「本当に本人が書いたのかわからない」といったトラブルの防止に役立ちます。
また、保管された遺言書は家庭裁判所での検認手続きが不要となるため、相続開始後の手続きがスムーズになるメリットもあります。大阪市内の法務局では予約制で対応しているため、事前準備をしっかり行い、当日を迎えるようにしましょう。


