補助人とは? 役割や権限、成年後見人との違いを解説
2026/07/21
後見制度について調べていると、「補助人」という言葉を目にしませんか?
補助人とは、成年後見制度において、判断能力が低下している方の財産管理や法律行為をサポートするための役職です。しかし、後見制度は複雑で、補助人の権限や成年後見人との違いはわかりづらい部分でもあります。
本記事では、補助人の役割や成年後見人との具体的な違い、権限の範囲に加え、どのような流れで選任されるのか、選任申立てをする際の流れをわかりやすく解説します。
※ 成年後見制度は、令和10年あたりに大幅な改正が予定されています。本記事はあくまで現行制度に基づいていますので、ご了承ください。
目次
成年後見制度の基本
● 成年後見制度とは
成年後見制度は、判断能力が低下した方の財産管理や生活上の重要な契約を、後見人が本人に代わって行う仕組みです。
認知症や知的障がい、精神障がいなどで、自分自身での契約の締結や財産の管理が難しくなった場合、家庭裁判所へ申立てをして後見人を選任してもらうことで、成年後見制度を通じた適切な支援を受けられるようになります。
成年後見制度を利用することで、不正な財産の流出や悪質な契約から本人を守ることができる反面、後見人の選任や報酬、定期的な家庭裁判所への報告義務など、制度利用の際には注意すべき点も多く存在します。大阪市でも多くの市民が成年後見制度についての相談を寄せており、専門家の支援を受けながら活用しています。
● 成年後見人の役割
成年後見制度には、大きく分けて「成年後見」「保佐」「補助」の3類型があり、本人の判断能力の低下が大きい順に、成年後見人→保佐人→補助人が選任されます。そして、この制度の利用者の多くは成年後見類型を利用しています。
そんな成年後見人の主な権限は「財産管理権」と「身上監護権」に大別され、本人の財産管理や生活全般のサポートを行うことができます。具体的には、預貯金や現金の管理、施設入所契約の締結、病院への入院手続、保険金請求の手続き、不動産などの重要な財産の管理や処分等を行います。
このような業務はすべて、家庭裁判所の監視下で行われます。家庭裁判所は、成年後見人の財産管理や身上監護の状況をチェックし、必要に応じて指示や権限の制限・変更を行うことがあります。また、本人と成年後見人の利益が相反する場合や、権限の逸脱が疑われる場合には、後見監督人の選任や後見人の解任などの対応を行います。家庭裁判所と成年後見人が協力して本人の意思を尊重し、本人の利益を守るようなイメージといえるでしょう。
なお、ここにいう「本人の利益」は、たとえば「本人が当事者となる遺産分割協議において、本人の取り分が法律で定められた相続分を下回って本人が不利益を被らないよう配慮しなければならない」といった形式面での話です。たとえ本人が元気なときに「ほかの相続人に全部あげる」と口約束していたとしても、本人が意思表示をできなくなってしまった以上、裁判所や成年後見人は、本人の権利を守るため、最低限法律で定められた取り分は保護しなければならないという判断をします。
このように、本人の利益を守るとはいっても、常に本人の意思どおりになるわけではありません。意思表示ができなくなってしまった以上、手厚い保護をしなければならないというのが成年後見制度の要点です。
● どのようなときに利用するか
成年後見制度の利用を検討するのは、以下のようなタイミングです。
- 財産管理や契約をするのが困難になったとき
- 介護、福祉サービスの利用手続きが必要なとき
- 現預金確保のために不動産や株式を売却する必要があるとき
- 相続手続きや遺産分割協議をしなければならないとき
このように、日常の財産管理や法律行為が難しくなったタイミングで、家族や周囲の介護関係者などが、成年後見制度の利用を検討します。
本人が「契約ごとが不安だから」という理由で利用を検討することもありますが、そのような場合、家族への委任や財産管理契約等で足りることが多いです。仮に申立てをするのであれば、後見類型のなかでも行為能力の制限が小さい保佐や補助が選択されるでしょう。
● 利用開始までの大まかな流れ
成年後見制度を利用するには、まず、家庭裁判所へ「後見(保佐、補助)開始の申立て」を行うことになります。
後見・保佐・補助の違いは、判断能力の低下の程度に合わせて、低下が著しいものから順に後見→保佐→補助が選ばれ、それぞれ、成年後見人・保佐人・補助人が選任されます。このなかで、成年後見人の権限が最も大きく、補助人の権限が最も小さいです。なお、制度利用者の多くが後見類型にて利用しています。
どの類型を利用するかは、医師の診断に基づいて判断されます。任意に決められるわけではないので注意してください。
この申立てをすると、家庭裁判所が、後見人等(成年後見人・保佐人・補助人のいずれか)を選任し、後見制度の利用が始まります。
注意点として、この申立ては一度すると後から任意に撤回することができないので、申立ての前に制度の概要を十分に理解し、本当に申し立てるべきかをしっかりと検討することが重要です。
補助人の特徴
● 補助人とは
補助人とは、精神上の障害により、物事を判断する能力(事理弁識能力)が「不十分」な状態にある方について、家庭裁判所が補助開始の審判をすることで選任される支援者です。日常生活や一般的な契約についてはおおむね自分で判断できるものの、複雑な取引や重要な財産行為になると、判断に不安が残る、という比較的軽度な状態が想定されています。「完全に一人で対応するのは少し心配」という段階の方が、主な対象となるイメージです。
後見・保佐・補助の3類型のうち、補助は本人の判断能力の低下の程度が最も軽いケースに対応する類型です。そのため、他の2類型以上に、本人自身の意思を尊重する仕組みが随所に組み込まれている点が大きな特徴です。
● 補助人ができること
補助人は、後見人や保佐人とは異なり、当然に何らかの権限を持つわけではありません。補助開始の審判がされただけでは、補助人にはまだ具体的な権限が何も生じておらず、家庭裁判所が別途、同意権や代理権を付与する審判をして初めて、補助人はその範囲内で本人を支援できるようになります。
同意権の対象となるのは、保佐人の同意権の対象である民法13条1項所定の行為(借財・保証、不動産などの重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為、訴訟行為、相続の承認・放棄や遺産分割など)のうち、申立ての際に選択された一部の行為に限られます。保佐のように法律上あらかじめ対象行為が一律に定まっているわけではなく、本人の状況に応じて、必要な行為だけをオーダーメイドで選び出す点が、補助の大きな特徴です。
たとえば、「不動産の売却」と「金銭消費貸借契約の締結」についてのみ同意権を付与する、といった形で、本人にとって特に不安の大きい場面だけをピンポイントで支援対象とすることができます。これにより、本人ができることまで一律に制限してしまう「過剰な支援」を避け、本人の生活の自由度をできる限り保ちながら、必要な部分だけを手当てすることが可能になります。
● 補助人ができないこと
補助人は、家庭裁判所の審判で同意権や代理権を付与された範囲を超えて、本人の法律行為に関与することはできません。たとえば、不動産の売却についてのみ同意権が付与されている場合、それ以外の契約行為(たとえば金銭消費貸借契約の締結など)について、補助人が同意したり取り消したりすることはできません。この点は、対象行為が法律上あらかじめ一定範囲に定まっている保佐とは異なり、補助人の権限の範囲は家庭裁判所の審判によって個別に決まるため、関係者(本人・親族・取引の相手方など)が、その補助人にどのような権限があるのかを正確に把握しておく必要があります。
また、婚姻や離婚、養子縁組、遺言の作成といった、本人の意思そのものが重視される一身専属的な行為や、医療行為への同意については、補助人が関与できない点は、後見人・保佐人と共通しています。こうした行為に支援者が関与できないのは、本人以外の判断で決めてよい性質のものではない、という考え方に基づくものです。
● 補助人の代理権
補助人が本人を代理して法律行為を行うためには、家庭裁判所に対して代理権付与の審判の申立てを行い、審判を受ける必要があります。この点は保佐人と共通していますが、補助の場合は、補助開始の審判そのものについても、本人以外の者が申し立てるときは本人の同意が必要とされている点が特徴的です。さらに、同意権付与の審判、代理権付与の審判についても、それぞれ本人の同意が要件とされています。
このように、補助制度全体を通じて「本人が望まない支援は原則として押し付けられない」という自己決定権の尊重が徹底されています。本人の意思に反して、家庭裁判所が一方的に補助人の権限を広げていくことは想定されていません。
これは、補助が想定する対象者、すなわち多くの場面で自分の判断ができる方にとって、周囲が本人の意向を無視して過度に行動を制限してしまうことのないよう配慮した制度設計であるといえます。本人の自立した生活と、必要な保護とのバランスを、本人自身の意思をできる限り軸にしながら図っていく、というのが補助制度の基本的な考え方です。
● 補助人を選任すべき状況
補助人の選任が適切と考えられるのは、本人の判断能力の低下が軽度で、日常生活や多くの契約行為は問題なく行えるものの、特定の重要な場面についてのみ支援があった方が安心、という状態の場合です。具体的には、軽度の認知症や知的障害があり、不動産の売却や大きな金額の贈与など、限られた場面でのみ判断に不安が残る、といったケースが該当します。
本人自身が「補助を受けたい」という意向を持っているケースも多く、本人の申立てにより、本人が希望する範囲でのみ補助人の権限を設定する、という利用の仕方がしやすいのも補助制度の特徴です。たとえば、悪質な勧誘によるトラブルを繰り返してしまう不安がある方が、ご自身で「訪問販売などによる契約についてだけ、家族に同意権を持ってもらいたい」という形で申立てをする、といった利用のされ方も想定されます。
成年後見人・保佐人・補助人の違い
● 本人の判断能力の程度の違い
法定後見の3類型は、本人の判断能力の程度によって使い分けられます。
「後見」は判断能力を欠く常況にある方、「保佐」は判断能力が著しく不十分な方、「補助」は判断能力が不十分な方が、それぞれ対象です。この判断は、医師の診断書や、必要に応じて行われる鑑定の結果を踏まえ、最終的には家庭裁判所が総合的に判断します。
なお、いったんいずれかの類型で審判が確定した後でも、本人の判断能力の状態が変化すれば、類型の変更を家庭裁判所に申し立てることができます。たとえば保佐開始の審判を受けた後に認知症が進行し、判断能力がさらに低下した場合には、後見への移行を申し立てることも可能です。
● 基本的な権限の違い
後見人は、日常生活に関する行為を除くほぼすべての法律行為について、当然に本人を代理する権限と、本人が行った行為を取り消す権限を持ちます。
これに対して保佐人は、民法第13条第1項所定の重要な法律行為について同意権・取消権を持つにとどまり、代理権については別途の審判が必要です。
補助人はさらに限定的で、家庭裁判所が個別に定めた特定の法律行為についてのみ、同意権または代理権(あるいはその両方)を持つにすぎません。
こうした権限の広狭は、本人の判断能力の程度に対応したものであり、判断能力が低いほど支援者に広い権限が認められ、判断能力が残っている部分が多いほど、支援者の関与は限定的になり本人の自己決定に委ねられる範囲が広くなる、という構造で理解しておくと整理しやすいでしょう。
● 同意権・取消権の違い
後見類型では、本人はそもそも単独で確定的に有効な法律行為をする能力がないという前提に立つため、「同意権」という概念自体が用いられません。本人が行った行為(日用品の購入等を除く)は、後から取り消すことができるという形で保護が図られます。
保佐類型では、民法第13条第1項に定められた重要な行為について、保佐人の同意が必要とされ、同意のない行為は取り消すことができます。
補助類型では、家庭裁判所が定めた特定の行為についてのみ同意権が生じ、その付与にも本人の同意が必要とされる点で、保佐よりもさらに本人の意思が尊重される制度設計になっています。
同意権・取消権の違いを整理すると、後見類型は「本人の行為は原則として取消しの対象になる」という強い保護、保佐類型は「重要な行為に限り同意が必要」という中間的な保護、補助類型は「あらかじめ定めた特定の行為のみ同意が必要」という限定的な保護、というように、段階的に本人の自由な意思決定の範囲が広がっていく構造になっていると理解すると分かりやすいでしょう。
● 代理権の違い
後見人は、財産管理に関する法律行為について、当然に包括的な代理権を持ちます。
これに対して保佐人・補助人は、当然には代理権を持たず、家庭裁判所への申立てにより、代理権を付与する旨の審判を受けた場合に限り、その範囲内で代理権を持ちます。保佐・補助のいずれについても、この代理権付与の審判には本人の同意が必要とされており、本人の意思を尊重しながら支援の範囲を個別に設計できる仕組みになっています。
この代理権の違いは、実務上とても重要な意味を持ちます。たとえば保佐人が選任されていても、代理権付与の審判を受けていなければ、保佐人は本人に代わって不動産の売買契約を締結することはできず、あくまで本人が契約当事者となり、保佐人はそれに同意を与える立場にとどまります。将来的にどのような場面で代理が必要になりそうかをあらかじめ想定し、申立ての段階で代理権付与の範囲を検討しておくことが望ましいでしょう。
補助人が選ばれるまでの流れ
● ステップ1:家庭裁判所への申立て
補助開始の申立ては、本人の住所地を管轄する家庭裁判所に対して行います。申立てができるのは、本人、配偶者、四親等内の親族、検察官、市区町村長などです。申立ての際には、申立書に加えて、本人の判断能力に関する医師の診断書、戸籍謄本、住民票、本人の生活状況や財産状況が分かる資料(いわゆる本人情報シートなど)を提出する必要があります。
ここで特に注意したいのが、本人以外の方が申立人となる場合、補助開始の審判をするには本人の同意が必要とされている点です。後見・保佐にはないこの要件は、補助が判断能力の低下が軽度な方を対象とする制度であることから、本人の意思に反してまで支援を開始することは適切でない、という考え方に基づいています。そのため、本人が補助の利用に納得していない場合、親族などがいくら申立てを行っても、補助開始の審判を受けることはできません。
その他の重要なポイントとして、補助開始の申立ての際には、あわせて同意権付与・代理権付与のいずれか(または両方)の申立てを行い、対象となる具体的な行為の範囲も指定する必要があります。単に「補助人をつけたい」というだけでなく、「どの行為について、どのような支援を受けたいのか」を具体的に検討したうえで申立てに臨む必要があるのです。
この対象行為の選定は、本人の生活状況や不安に感じている場面を丁寧に洗い出す作業でもあります。たとえば「自宅の売却だけが不安」なのか、「金融商品の契約全般に不安がある」のかによって、申立てるべき範囲は大きく変わってきます。申立て前の段階で、専門家に相談しながら本人の状況を整理しておくことが、その後の手続きをスムーズに進めるうえで重要です。
● ステップ2:家庭裁判所による調査
申立てが受理されると、家庭裁判所の調査官が、本人や申立人、場合によっては親族に対して聞き取りを行い、本人の生活状況や判断能力、補助人候補者の適格性などについて事実関係を調査します。特に補助の場合は、本人が申立ての内容(補助を受けること自体や、同意権・代理権の対象範囲)について、実際にどう考えているかが重要な確認ポイントになります。本人以外の親族が申立人となっている場合は、家庭裁判所が本人に直接意向を確認する手続きが行われることもあります。
この意向確認は、補助制度が本人の自己決定を重視する制度であることの表れです。仮に親族が「これも同意権の対象にしてほしい」と考えていても、本人がそれを望んでいなければ、その範囲について補助人の権限が認められないこともあります。申立ての前段階で、できる限り本人と話し合い、納得を得ておくことが望ましいでしょう。
● ステップ3:鑑定の実施
補助開始の審判にあたっては、後見・保佐の場合とは異なり、原則として医師による鑑定は行われません。多くのケースでは、提出された診断書の内容をもとに、家庭裁判所が判断能力の程度を判断します。もっとも、診断書の内容だけでは判断が難しい場合には、補助についても鑑定が実施されることがあります。
鑑定が行われる場合には、数週間から1か月程度の期間と、別途の鑑定費用がかかるのが一般的です。申立て全体のスケジュールに影響する部分ですので、あらかじめどの程度の期間・費用がかかりそうか、申立て前の相談段階で確認しておくと安心です。
● ステップ4:審判と登記
調査や鑑定の結果を踏まえて、家庭裁判所が補助開始の審判をし、あわせて補助人を選任するとともに、申立てのあった同意権・代理権付与の審判を行います。審判が確定すると、法務局において後見登記がされ、これにより補助人の存在や権限の範囲が公的に証明できるようになります。以降、補助人は、この登記事項証明書を提示することで、金融機関や取引先との間で、審判により定められた範囲内で本人を代理し、あるいは同意を与える立場にあることを示すことができます。
補助人には、親族が選ばれる場合と、司法書士や弁護士などの専門職が選ばれる場合とがあります。対象となる財産や行為の内容によっては、専門職が補助人に選任されることもあり、親族が補助人になる場合でも、専門職が併せて選任され、役割を分担する形が取られることもあります。
まとめ
補助人の本質的な役割は「本人の自立を支えること」にあります。本人の判断能力を最大限に活かしつつ、不足部分だけを補い、本人の希望や意思を尊重した支援が行われます。
たとえば、金融機関での手続きや重要な契約に限って補助人の同意を必要とすることで、本人の生活の自由度を保ちながらリスクを最小限に抑えることが可能です。補助人制度の活用により、本人と家族の安心感が高まることが多いです。
補助開始の申立てでは、権限の範囲をどのように設定するかが重要になります。司法書士などの専門家に相談しながら、本人の状況に応じた制度設計を検討すると安心です。

