未登記建物を相続したらどうすればいい? 正しい手続きと注意点を詳しく解説
2026/02/17
未登記建物を相続した際、どこから手を付ければ良いのか不安に感じたことはありませんか?
相続された未登記建物(未登記家屋)は、相続手続きを誤ると過料や将来的なトラブルにつながるおそれがあります。本記事では、未登記建物とはどのようなものか、相続時の注意点、そして所有者変更の申出や表題登記の基本的な流れを解説します。
また、複雑な手続きは土地家屋調査士への依頼も視野に入るため、実務に役立つポイントや手続きの流れまで具体的に紹介。正確な相続手続きを完了し、法的リスクや課税上の問題を回避して安心を得るための実践知識を手に入れられます。
目次
未登記建物とは?
● そもそも登記とは
日本では、土地や建物といった不動産は、法務局で管理されています。この制度を「不動産登記制度」といいます。
不動産登記制度では、1つずつの土地や建物に地番と家屋番号が割り振られており、登記記録が作成されています。登記記録には、その土地や建物の情報(場所、利用目的、広さや構造、所有者や担保権者の情報など)が記録されており、手数料を払えば誰でも閲覧可能です。
登記制度によって、不動産の物理的な現況や権利関係が誰から見ても明らかになるよう整備されています。不動産の所有権を守り、安全に取引するためにも、登記制度は重要なのです。
● 未登記建物とは
登記は「表題部」と「権利部」という2つの部分に分かれています。表題部には土地や建物の構造が、権利部には所有権や抵当権といった権利状態が記録されています。
そして未登記建物とは、上記のような法務局の登記記録に登録されていない建物を指します。つまり、建物の所有や構造などが法的に記録されていない状態であり、表題登記がされていない状態ともいえます。
基本的には、建物を建てたら登記記録が作成され、その表題部に、構造や建築時期、最初の所有者といった情報が登記されます。しかし、築年数の古い建物や倉庫といった附属建物ではこの登記がされていないことがままあり、大阪市でも、過去の増改築や建築時の手続き漏れなどにより、未登記建物が生じるケースがあるのです。
● 未登記建物は違法状態
こういった未登記建物は特段珍しい事象ではありませんが、法律上は違法です。
というのも、建物を新築した場合や、表題部がない建物を取得した場合には、1か月以内に表題部の登記をしなければならないという法律があるからです(不動産登記法第47条第1項)。この義務に違反すると、10万円以下の過料の対象となります。
このように、「未登記建物をそのまま所有し続ける」ということは法律に違反している状態なのですが、事実上、この過料が適用されるケースは少なく、未登記のまま放置されている建物がたくさんあるのが現状です。
● 未登記建物が存在する理由
現在、日本全国にある建物のうち約2割が未登記であるとの調査結果もあります。
なぜこのような未登記建物があるのかというと、建物の表題登記をするには、建物の図面を作成し、そのほかの添付書類と合わせて法務局に申請する必要があり、多くの場合で土地家屋調査士に依頼しなければなりません。
そのため、住宅ローンを利用しない場合など、登記をしなくても困らないような建物については、「そもそも未登記であることを知らない」「単に面倒だから」「費用を節約したいから」という理由で未登記のまま放置されてしまうのです。
過料が確実に科されるのであれば登記をする方は増えるでしょうが、現在の制度では登記されていなくとも固定資産税は正しく徴収できていることがほとんどであるため、国としてもなかなか着手できずにいます。
● 建物が登記されているかを確認する方法
では、自分がもっている建物が登記されているか否かはどのように確認するのでしょうか。
もっとも手軽な方法は、固定資産税の納税通知書を確認する方法です。納税通知書は、不動産の所有者に毎年4月頃に届きます。そして納税通知書には、所有している土地と建物が一覧化されており、土地には「地番」、建物には「家屋番号」が記載されていますが、この「家屋番号」の部分が空欄になっている建物は、未登記である可能性が高いです。
そのほかの方法として、法務局で建物の登記記録を確認する方法もあります。具体的には、建物の住所を法務局の担当者に伝えて地番と家屋番号を調べてもらいますが、このときに「地番はあるが家屋番号がない」という状態であれば、未登記である可能性が高いでしょう。
また、登記されていたとしても、「床面積が狭く記録されている」「5年前に増築されたはずなのに反映されていない」という状態も起こり得ます。このような増築分の未登記も、放置しておくと様々なデメリットが生じます。
未登記のまま放置するリスク
● リスク1:建物の所有権を証明できない
建物を未登記のまま放置しておくと、様々なリスクがあります。
まず、登記がなければ、その建物の所有者であることを証明できません。
通常、不動産の登記記録の権利部には「この不動産の所有者は誰か」「いつ、どのような理由(購入、相続等)で所有するに至ったか」が記録されています。不動産の取引をする際には、この登記記録を見て、売主が本当にその不動産を所有しているという事実を確認するのです。
しかし、建物が未登記であれば、その建物が誰のものかが分からず、安全な取引をすることができません。さらに法律上も、登記がなければ、その所有権を第三者に主張することができないルールになっています。
このような状態で放置していると、その建物を売ることができないほか、建物が誰のものかで揉めたり、悪意のある第三者に建物を乗っ取られたりといった可能性もあります。権利状態を不明瞭にしておくことは、様々なリスクの温床となるのです。
● リスク2:売却や担保設定ができない
これはリスク1にも通ずるものですが、建物を未登記のままにしておくと、その建物を売却したり、担保に入れたりすることができません。
建物を売却するとき、お金の受け渡しと同時に「所有権移転登記」を行い、登記名義を変更します(決済)。そもそも登記が存在しなければ、この名義変更ができず、安全に取引をすることができません。
また、建物を担保に入れて金融機関からお金を借りるとき、通常、「抵当権設定登記」をして、差押えができるように準備をしておきます。この登記ができない建物は、担保設定を断られ、融資を受けることができません。
未登記の建物は、経済的に活用することができなくなってしまうのです。
● リスク3:土地の固定資産税が高くなる可能性
日本では、更地よりも宅地として利用されている土地の方が固定資産税が安くなっており、土地の上に住宅が建っていると、固定資産税が最大で6分の1にまで減額されます(6分の1特例)。しかし、住宅が未登記であると、この固定資産税の軽減措置は受けられません。
また、「登記しなければ建物の固定資産税から逃れられるのでは?」という誤解もありますが、実際には未登記の建物も空撮などの方法で捕捉されており、きちんと固定資産税が課されます。
固定資産税という毎年かかる税金が高くなるリスクがあるのであれば、費用をかけてでも登記をしておきたいと感じる方も多いのではないでしょうか。
● リスク4:過料を科されるおそれも
先述のとおり、不動産登記法において「建物は建築または取得したときから1か月以内に表題登記をしなければならない」と規定されており、この義務に違反すると、10万円以下の過料が科されるおそれがあります。
相続登記については近年義務化されて話題になりましたが、表題登記については、以前からさらに厳しい規定があるということです。
実際に過料を請求されるケースはあまりありませんが、違法状態であることは認識しておく必要があるでしょう。
● リスク5:時間が経てば経つほど手続きが困難に
未登記建物は、相続手続きをされずに放置される傾向にあるため、役所ではもうすでに亡くなっている人の名義のまま登録されている場合があります。そのため、たとえば長年自分が固定資産税を支払っていた建物であっても、役所では祖父の名義で登録されていることもあります。このような場合において、建物の登記をしようとすると、自分がその建物の所有者であることを証明するために、祖父の相続人にあたる全員の協力が必要となる場合があります。
手続きを放置すればするほど相続人が増えてしまい、登記手続きが複雑になっていくのです。
未登記建物の相続手続き
● 未登記建物も相続財産の一部
人が亡くなると、その人が遺した財産についての相続手続きが必要となります。財産には預貯金や株式、不動産等がありますが、この不動産には未登記建物も含まれる点に注意が必要です。
不動産の相続は、その不動産の登記記録を確認し、誰が相続するかを決めたうえで、相続による所有権移転登記(相続登記)を終えることで完了します。しかし建物が未登記であると、最初の財産調査の段階で見落とされることも多く、相続手続きに漏れが生じやすいです。未登記建物を相続した場合には、現状の家屋が「未登記」であることを正確に把握し、適切な手続きを進めることが重要といえるでしょう。
● まずは未登記建物がないかを調べる
それでは具体的に、未登記建物の相続手続きはどのように進めればよいのでしょうか。
方法としては、① 固定資産税の納税通知書を確認する、② 固定資産税の評価証明書を取得する、③ 名寄帳を取得する、という3つが考えられます。
固定資産税の納税通知書は、先述のとおり、不動産の所有者に毎年4月頃に届くものであり、所有している土地と建物が一覧で掲載されています。そして土地には「地番」、建物には「家屋番号」が記載されていますが、この「家屋番号」の部分が空欄になっている建物は、未登記である可能性が高いです。
この情報を裏付けるのが固定資産税の評価証明書です。固定資産税の評価証明書とは、不動産の固定資産税評価額が記載された証明書です。不動産の所在地である市区町村役場で発行することができ、所有者やその相続人であれば、手数料(自治体によって異なる/1件300円程度が相場)を納めることで取得することができます。こちらも納税通知書と同様、その人が所有している不動産が一覧化されていますが、評価証明書ではより詳しい情報(共有者の氏名、築年数等)を知ることができます。
しかし、上記2つはあくまで固定資産税の課税のために発行される書類であり、固定資産税が非課税となるような土地や建物については、記載されていないこともあります。土地であれば私道、建物であれば倉庫等の附属建物の記載が省略されることが多く、未登記建物の調査としては、これら2つを取得するだけでは不十分なことがあります。
そのような調査不足を補うのが名寄帳です。名寄帳とは、各市区町村において、その人が所有している不動産がすべて一覧化されている証明書です。この証明書には固定資産税が課されていない不動産も載っているため、未登記建物の調査にはうってつけです。
このような書類から、家屋番号が付されていない建物を発見しましょう。
● 未登記建物を誰が相続するか決める
未登記建物を発見したら、他の相続財産と同様、誰がその建物を相続するかを決めていきます。
遺言があればその内容に従いますが、多くの場合、相続人全員での遺産分割協議のなかで決めることになるでしょう。他の不動産や預貯金等の相続財産とあわせて、誰が相続するかを話し合ってください。
このとき、話合いの資料とするためにも、建物の詳細(場所やこれまでの経緯、写真など)を準備しておくことをおすすめします。また、その建物を解体するかそのままにしておくかといった今後の処理についても話し合っておくと、相続する人のその後の手続きや負担が明確になります。
● 遺産分割協議書に記載するときの注意点
遺産分割協議がまとまったらその内容を遺産分割協議書にまとめることになりますが、遺産分割協議書に未登記建物を記載する際には注意が必要です。
通常の建物であれば、登記事項証明書に記載されている以下の情報をそのまま遺産分割協議書に転記することで、建物を特定することができます。
- 所在
- 家屋番号
- 種類(居宅、事務所等の建物の利用目的)
- 構造(木造、鉄筋コンクリート造、階数といった建物の物理的構造)
- 床面積
しかし、未登記建物には登記事項証明書がありません。
その代わりに、固定資産税評価証明書や名寄帳から上記のような情報を集めて、それを転記することになります。記載の際には、建物が未登記である旨や、どこからその情報を読みとったのか(「令和〇年度固定資産税評価証明書の記載に基づく」といった記載)を付記するとよいでしょう。
未登記建物を相続した後にやるべきこと
● 登記手続きを進める
未登記建物を相続し、解体せずにそのまま残しておくのであれば、登記手続きを進めていきます。必要となる登記は「建物表題登記」と「所有権保存登記」の2種類です。
同じ登記手続きではありますが、表題部の登記である「建物表題登記」は土地家屋調査士が、権利部の登記である「所有権保存登記」は司法書士がそれぞれ専門となりますので、相談の際の参考にしてください。
建物表題登記→所有権保存登記の順で両方の登記を終えると、手続きは完了です。
● 建物表題登記
まずは、建物表題登記を行います。
表題登記とは、建物の場所や構造、広さなどを記録する、建物の基本となる登記です。表題登記は、建物の所在地を管轄する法務局に申請して行います。
必要となる書類は、個別の事情によっても異なりますが、主に以下のとおりです。
- 登記申請書
- 建物図面
- 各階平面図
- 所有権証明書
→ 新築建物であれば建築確認書や施工業者の証明書が該当しますが、相続で取得した場合にはこのような書類は手に入らないことがほとんどです。その代わりに、固定資産税を納付していることが分かる証明書や、相続に関する戸籍と遺産分割協議書を添付します。
手続きを代行してもらいたい場合や不明点がある場合には、土地家屋調査士に相談しましょう。
● 所有権保存登記
表題登記が完了したら、所有権保存登記を行います。
所有権保存登記とは、その建物が登記されてからの最初の所有者が誰かを記録するための登記であり、表題登記と同じように、建物の所在地を管轄する法務局に申請して行います。
必要となる書類は主に以下のとおりです。
- 登記申請書
- 所有者の住民票
- (登録免許税の減税措置を利用する場合)住宅用家屋証明書
こちらの登記については、不明点は司法書士に相談してください。
● 登記を保留する場合は役所への届出を
未登記建物を相続したら登記を申請しなければなりませんが、相続手続きが進まなかったり、費用負担が大きかったりといった理由で登記を保留することもあるでしょう。
そのような場合には、役所に「現所有者に関する申告書」を提出することで、固定資産税の負担者を届け出ることをおすすめします。
大阪市では、申告書のフォーマットがホームページ上で公開されています。添付書類を確認し、早めに提出しておきましょう。
● 解体するなら登記は不要
ここまで未登記建物の登記手続きについて紹介しましたが、建物を解体するなら登記手続きは原則不要です。
ただし、解体したことを届け出るため、建物所在地の役所に「家屋滅失届出書」を提出します。書類の形式は提出先の自治体によって異なります。解体工事をした業者の署名等が必要となりますので、事前に自治体所定の書類を手に入れておきましょう。
まとめ
未登記建物の相続は、手続きや必要書類が複雑で、専門的な知識を要する場面が多くあります。大阪市では、まず市役所の資産税課や法務局で基本的な相談ができますが、具体的な登記申請や現地調査が必要な場合は、土地家屋調査士への依頼が最適です。
土地家屋調査士は、未登記家屋の現況調査や表題登記の申請代理、書類作成まで一括してサポートしてくれます。手続きの流れや必要書類、費用についても丁寧に説明してもらえるため、時間や労力の節約にもつながります。
また、相続人間の調整や、相続登記義務化に伴うリスク回避の観点からも、専門家のアドバイスを受けて正確な手続きを進めることが重要です。困ったときや不安がある場合は、早めに土地家屋調査士や司法書士への相談を検討しましょう。

