ひろはた司法書士事務所

法定単純承認とは? 相続放棄ができなくなる条件や注意点を解説

お問い合わせはこちら 無料相談ご予約はこちら

法定単純承認とは? 相続放棄ができなくなる条件や注意点を解説

法定単純承認とは? 相続放棄ができなくなる条件や注意点を解説

2026/07/31

相続放棄を検討している際、不動産や預貯金の引き出しなど、ちょっとした行動が法定単純承認とみなされる可能性があることをご存知でしょうか?

相続人には、相続放棄・限定承認・単純承認を選ぶ権利がありますが、民法921条が定める「単純承認」とされる具体的なケースへの理解不足により、思わぬ形で単純承認したものとみなされてしまう事態につながることも少なくありません。

本記事では、法定単純承認の内容と具体的な事例、相続放棄を検討している場合の注意点を解説します。

ひろはた司法書士事務所

ひろはた司法書士事務所

大阪市にある司法書士事務所です。
遺産整理、遺言、生前贈与、家族信託など、相続と生前対策に関するお手続きに幅広く対応しております。
お客様一人ひとりの状況に合わせて柔軟にサポートし、幅広いお悩みに向き合いますので、お気軽にご相談ください。

〒541-0051
大阪府大阪市中央区備後町3丁目1−2 NIPPOアトラスビル5階D

0120-028-272

対応時間 9:00~18:00

目次

    相続の基本

    ● そもそも相続とは

    相続とは、亡くなった方(被相続人)が有していた財産上の権利や義務を、相続人が引き継ぐことをいいます。相続は、被相続人が亡くなった瞬間に自動的に開始し、相続人の意思にかかわらず、法律上当然に権利義務の承継が生じるのが原則です。

    ここでいう「財産上の権利義務」には、不動産や預貯金、株式といったプラスの財産だけでなく、借金や保証債務といったマイナスの財産も含まれます。相続は、良いものだけを選んで引き継ぐ制度ではない、という点をまず押さえておく必要があります。

    また、相続は被相続人が亡くなった時点で当然に開始するものであり、相続人が「相続します」と特別な意思表示をしなくても、法律関係としてはすでに始まっています。相続人がその後どのように対応するか(単純承認・限定承認・相続放棄のいずれを選ぶか)によって、最終的にどのような形で財産を承継するかが決まっていく、という流れを理解しておくことが大切です。

    ● 相続人が引き継ぐもの

    相続人は、被相続人が有していた財産上の権利義務を、原則として包括的に承継します。プラスの財産としては、現金、預貯金、不動産、有価証券、貴金属などが挙げられます。一方、マイナスの財産としては、金融機関からの借入金、保証債務、未払いの税金や医療費などがあります。

    被相続人が生前に多額の借金を抱えていた場合、相続人がそのまま相続すると、借金についても返済の義務を負うことになります。相続財産の内容によっては、相続することが必ずしも相続人にとって有利とは限らない、という点が、これから説明する各種の制度を理解するうえで重要なポイントになります。

    特に、被相続人と長年疎遠であった場合や、被相続人が事業を営んでいた場合などは、相続人が把握していない負債が後から発覚することも珍しくありません。相続財産の全体像を早い段階で調査し、プラスとマイナスのどちらが大きいのかを見極めることが、その後の判断の出発点になります。

    ● 相続を拒否する方法

    相続によってマイナスの財産まで背負うことを避けたい場合や、相続そのものに関わりたくない場合、相続人には、相続を拒否する手段が用意されています。代表的なものが相続放棄で、家庭裁判所に対して所定の手続き(申述)を行うことで、初めから相続人ではなかったものとして扱われるようになります。

    こうした手段が用意されているのは、相続が本人の意思にかかわらず当然に開始するものである以上、相続人が望まない形で借金を背負わされることのないよう、選択の自由を保障する必要があるためです。ただし、この選択の自由は無制限に認められているわけではなく、被相続人が亡くなって自身が相続人となったことを知った日から3か月以内に申述をしなければならないという制約が設けられています。

    このほか、プラスの財産の限度でのみマイナスの財産を引き継ぐ「限定承認」という制度もあります。いずれの制度も、相続放棄と同じ期間内に手続きを行う必要があります。

    なお、相続放棄や限定承認をせずにこの期間を過ぎてしまったり、一定の行為をしてしまったりすると、後から詳しく解説する「法定単純承認」が成立し、相続放棄などの選択肢自体が失われてしまうことがあります。相続を拒否する権利は、いつまでも自由に行使できるわけではない、という点をあらかじめ意識しておく必要があります。

    相続放棄・限定承認・単純承認の違い

    ● 相続放棄とは

    それでは、法定単純承認について詳しく説明する前に、基本的な相続の方法である「相続放棄・限定承認・単純承認」の違いを確認します。

    まず相続放棄とは、相続人が家庭裁判所に対して所定の申述を行うことで、初めから相続人ではなかったものとみなされる制度です。相続放棄が認められると、プラスの財産を一切受け取れなくなる代わりに、借金などのマイナスの財産を引き継ぐ義務からも解放されます。

    相続放棄は、相続人一人ひとりが単独で行うことができ、他の相続人の同意は必要ありません。ただし、相続の開始を知った時から原則として3か月以内(この期間を「熟慮期間」といいます。)に手続きを行う必要があります。

    相続放棄をすると、その相続人は初めから相続人ではなかった扱いになるため、代襲相続も発生しません。たとえば、子が相続放棄をした場合、その子(被相続人の孫)が代わりに相続人になることはなく、次の順位の相続人(被相続人の親や兄弟姉妹など)に相続権が移っていくことになります。相続放棄を検討する際は、自分だけでなく、他の親族にどのような影響が及ぶかもあわせて確認しておくとよいでしょう。

    ● 限定承認とは

    限定承認とは、相続によって得たプラスの財産の限度でのみ、被相続人のマイナスの財産を弁済することを条件に、相続を承認する制度です。この制度を使うことで、被相続人にプラスの財産が多ければ残った財産を受け取ることができる一方、被相続人にマイナスの財産が多かったとしても相続人は自分の財産から支払う義務を負いません。プラスの財産の範囲内でしか債務を負わないため、想定外の借金が後から発覚した場合のリスクを抑えられる点がメリットなのです。

    限定承認も相続放棄と同様の熟慮期間内に手続きを進める必要があります。もっとも、限定承認は相続人全員が共同で家庭裁判所に申述する必要があり、手続きも比較的複雑であるため、相続放棄に比べると利用される件数は多くありません。相続人の一人でも反対すると利用できない点も、実務上のハードルになっています。

    限定承認が向いているのは、相続財産にプラスとマイナスのどちらが多いか判然としない場合です。たとえば、被相続人が事業を営んでいて、資産と負債の両方が複雑に絡み合っているようなケースでは、限定承認によってリスクを抑えながら相続財産を清算していくという選択肢が有効になることがあります。

    ● 単純承認とは

    単純承認とは、被相続人の権利義務をそのまま承継することをいいます。プラスの財産だけでなく、マイナスの財産についても、制限なくすべて引き継ぐことになります。相続放棄や限定承認と異なり、単純承認をするために特別な手続きは必要ありません。

    熟慮期間内に相続放棄や限定承認の手続きを行わなければ、自動的に単純承認をしたものとみなされます。この「自動的にみなされる」という点が、次に説明する法定単純承認の核心部分です。

    なお、相続人が明確に「単純承認します」という意思表示をすることも法律上は可能ですが、実務上、単純承認についてわざわざ手続きを取るケースは多くありません。多くの場合は、特に何もしない、あるいは後述するような一定の行為をしたことによって、結果的に単純承認をしたものとして扱われることになります。

    法定単純承認とは

    ● 法定単純承認とは

    それでは、本題である法定単純承認について詳しく解説します。

    法定単純承認とは、相続人が一定の行為をした場合に、その意思にかかわらず、法律上当然に単純承認をしたものとみなす制度です。これは民法921条に定められた制度であり、相続人自身が「単純承認します」と明確に意思表示をしていなくても、法律で定められた行為に該当してしまえば、単純承認したのと同じ効果が生じます。

    具体的には、被相続人の遺産を自分のために使ったり、被相続人名義の不動産を売却したりといった行為が法定単純承認に該当します。

    単純承認をするかどうかは本来、相続人が自ら選択できる事柄ですが、法定単純承認の場面では、その選択の機会をもたないまま、結果だけが確定してしまう点に特徴があります。この制度は、相続人の意思を離れて法律上の効果が発生する点で、相続人にとって思わぬ落とし穴になりやすい制度です。「そんなつもりはなかったのに、単純承認したことになっていた」という事態が、実際に起こり得るのです。

    特に、相続放棄を検討している段階では、相続人自身が「まだ何も決めていない」と思っていても、法律上はすでに単純承認とみなされるだけの行為をしてしまっている、というケースに気を付けなければなりません。制度の仕組みを正しく理解しておくことが、意図しない結果を避けるための第一歩になります。

    ● 法定単純承認が起こるとどうなる?

    法定単純承認が成立すると、相続人は相続を単純承認したことになるため、被相続人のプラスの財産だけでなく、マイナスの財産についても制限なく承継したことになります。仮に被相続人に多額の借金があった場合、相続人はその返済義務を免れることができなくなります。

    さらに重要なのが、いったん単純承認をした(とみなされた)後は、原則として、その後にあらためて相続放棄や限定承認をすることができなくなるという点です。つまり、法定単純承認が成立してしまうと、後から「やはり相続放棄したい」と思っても、手続きを取ることができなくなってしまいます。

    たとえば、被相続人の預貯金を生活費として使ってしまった後に、想定していなかった多額の借金の存在が判明したとしても、その時点ですでに法定単純承認が成立していれば、原則として相続放棄によって借金の返済義務を免れることはできません。相続財産の全体像を把握する前に、安易に財産へ手をつけることの怖さが、ここに表れています。

    ● 法定単純承認となる3つのケース

    法律上、法定単純承認とみなされる行為は、大きく分けて3つあります。

    1つ目は、相続人が相続財産の全部または一部を処分したときです。ただし、財産の現状を維持するための「保存行為」や、民法で定める短期間の賃貸借(たとえば建物の場合は3年以内)は除かれます。

    2つ目は、相続人が熟慮期間内に限定承認または相続放棄をしなかったときです。「特に何もしなかった」というだけでも、法定単純承認が成立してしまう点に注意が必要です。相続財産の調査に時間がかかり、判断がつかないまま3か月が経過してしまった、というケースは実務上よく見られますが、この場合も、原則として単純承認をしたものとみなされてしまいます。

    3つ目は、相続人が限定承認や相続放棄をした後であっても、相続財産の全部もしくは一部を隠したり、これを勝手に消費したり、悪意で財産目録に記載しなかったりしたときです。いったん相続放棄をしたはずなのに、その後の行為によって単純承認とみなされてしまう、という点も見落とされがちなポイントです。相続放棄をしたからといって、その後の行動が何でも自由になるわけではない、ということを理解しておく必要があります。

    ● 法定単純承認が起こると相続放棄ができなくなる理由

    法定単純承認によって単純承認したものとみなされた場合も同様に、その後で撤回して相続放棄をする、ということは原則としてできません。「知らなかった」「そんなつもりはなかった」という言い分は、原則として通用しないため、相続財産に関わる行動は慎重に行う必要があります。

    この考え方の背景には、相続をめぐる法律関係を早期に安定させたいという要請があります。相続人がいつまでも自由に単純承認と相続放棄を行き来できるとすると、被相続人の債権者や、他の相続人は、いつまで経っても自分の立場が確定せず、不安定な状態に置かれ続けることになります。法定単純承認とその後の撤回禁止のルールは、こうした利害関係人全体の利益を考慮した制度設計になっているのです。

    どのような行為が「相続財産の処分」とみなされる?

    ● 相続財産の処分の要件

    法定単純承認のなかでも、特にトラブルになりやすいのが「相続財産の処分」に該当するかどうかの判断です。

    相続財産の処分とは、被相続人の遺産を売却、贈与、または廃棄などによって現状や性質を変えたり、権利を移転させたりする行為全般を指します。ある行為が相続財産の処分にあたるかどうかという判断の基準は、「相続財産についての事実上・法律上の処分行為であって、それが相続人の単純承認の意思を外部から推測させるような行為であるかどうか」という点にあります。つまり、単に相続財産に触れたというだけでなく、その行為の性質や内容から見て、「もう相続する意思を固めている」と客観的に評価されるような行為かどうかが、判断のポイントになるのです。

    この判断は、相続人の内心の意図だけで決まるものではありません。相続人自身が「相続するつもりはなかった」と主張しても、外部から見てその行為が相続財産を自分のものとして扱っているように見えるのであれば、処分行為と評価されてしまう可能性があります。行動する前に、その行為がどのように見られるかを客観的に考えることが大切です。

    ● 処分行為と保存行為の違い

    とはいえ、相続放棄を検討している方が相続財産について何もできないというわけではありません。法律上、相続財産の「保存行為」は、処分行為から除外されています。

    保存行為とは、財産の現状を維持するための行為をいい、たとえば建物の必要最小限の修繕などが典型例です。財産の性質や価値を変えることなく、現状を保つための行為であれば、法定単純承認の原因にはなりません。これに対して処分行為は、相続財産の現状や性質、権利関係に変更を加える行為を指します。財産を売却する、消費する、取り壊すといった行為が、典型的な処分行為に該当します。

    たとえば、被相続人が居住していた建物について、雨漏りを応急的に補修する程度であれば保存行為として扱われる可能性が高い一方、建物自体を取り壊してしまえば、財産の性質を大きく変える処分行為とみなされる可能性が高くなります。同じ「建物に手を加える行為」でも、その内容や程度によって評価が大きく変わり得る点に注意が必要です。

    保存行為と処分行為の線引きは、実際のケースでは判断が難しいことも多く、迷った場合には行動する前に専門家に確認することが望ましいといえます。

    ● 相続財産の処分とみなされた具体的な事例

    これまでの実務・裁判例では、以下のような行為が相続財産の処分とみなされています。

    • 相続財産である預貯金を引き出して自分の生活費など私的な目的のために消費した場合
    • 被相続人名義の不動産を売却した場合
    • 被相続人が有していた債権を取り立てて自分のものとして受け取った場合
    • 相続財産である建物を取り壊した場合

    また、社会通念上不相当に高額な遺品を形見分けとして持ち帰った場合も、処分行為と評価されることがあります。「形見分けだから大丈夫」と安易に考えず、その財産的な価値にも注意を払う必要があります。骨董品や貴金属、ブランド品など、換価性の高い遺品については、特に慎重な判断が求められます。

    ● 相続財産の処分とみなされなかった具体的な事例

    一方で、社会通念上相当な範囲内での葬儀費用の支出や、経済的価値の乏しい遺品を形見分けとして受け取る程度の行為については、処分行為にはあたらないと判断される傾向があります。

    また、建物の必要最小限の修繕など、財産の現状維持を目的とした行為も、保存行為として処分行為には含まれません。

    もっとも、これらの判断は個別の事情によって結論が変わり得るものであり、「これなら絶対に大丈夫」と一概にいえるものではありません。金額の大小や、行為の目的、被相続人の財産状況全体との関係など、さまざまな要素を踏まえて総合的に判断される点に注意が必要です。同じ「葬儀費用の支出」であっても、その金額が社会通念上の相場からかけ離れて高額であったり、支出の原資が相続財産以外の資金と明確に区別できなかったりする場合には、評価が変わる可能性もあります。

    ● 意図しない単純承認を防ぐために

    相続放棄や限定承認を検討している場合には、熟慮期間中、相続財産に安易に手をつけないことが何より重要です。特に、被相続人名義の預貯金の解約・払戻し、不動産の売却や取り壊し、高額な遺品の持ち帰りなどは、法定単純承認の原因となるおそれがあるため、慎重な対応が求められます。

    また、熟慮期間である3か月という期間内に相続財産の調査や判断が終わらない場合には、家庭裁判所に対して熟慮期間の伸長を申し立てることも可能です。相続財産の内容が複雑で、プラスとマイナスのどちらが多いかすぐには判断できない、というケースは珍しくありません。無理に3か月以内に結論を出そうとするのではなく、必要に応じてこの伸長の制度を活用することも、有効な選択肢の一つです。

    さらに、被相続人の口座に自動引き落としがかかっている公共料金や、生命保険の受取金など、相続財産に該当するのかどうか判断に迷う財産も少なくありません。判断に迷う場合には、無理に急いで行動するのではなく、まずは専門家に相談し、今どのような行為であれば問題がないのかを確認してから動くことをおすすめします。

    まとめ

    相続放棄を検討している場合でも、一定の行動を取ることで「法定単純承認」とみなされてしまうことがあります。これは民法921条に規定されており、例えば相続財産を処分したり、預貯金を引き出すといった行為が該当します。大阪市でも、こうした誤った手続きがトラブルの原因となるケースが少なくありません。

    具体的な例としては、不動産の売却や、被相続人名義の銀行口座から現金を引き出して生活費に充てる行動などが挙げられます。これらは一見、単なる事務手続きや生活のための措置に思えますが、法律上は「相続財産の処分」と判断される恐れがあるため注意が必要です。

    どのような行為が単純承認にあたるのか判断に迷った場合は、自己判断で相続財産に手を付けることは避け、早めに専門家へ相談することが大切です。

    ひろはた司法書士事務所

    ひろはた司法書士事務所

    大阪市にある司法書士事務所です。
    遺産整理、遺言、生前贈与、家族信託など、相続と生前対策に関するお手続きに幅広く対応しております。
    お客様一人ひとりの状況に合わせて柔軟にサポートし、幅広いお悩みに向き合いますので、お気軽にご相談ください。

    〒541-0051
    大阪府大阪市中央区備後町3丁目1−2 NIPPOアトラスビル5階D

    0120-028-272

    対応時間 9:00~18:00

    当店でご利用いただける電子決済のご案内

    下記よりお選びいただけます。