居住用財産の3,000万円控除とは|空き家特例との違いも紹介
2026/09/11
マイホームを売却して利益が出た場合、その利益に対して所得税や住民税がかかることがあります。
ただし、一定の要件を満たす場合には、売却によって生じた譲渡所得から最高3,000万円を控除できる「3,000万円控除」を利用できます。
本記事では、居住用不動産の3,000万円控除について、適用要件や控除による税額への影響、利用する際の注意点、申告方法などを分かりやすく解説します。
目次
居住用不動産の3,000万円控除とは
● 制度の概要
居住用不動産の3,000万円控除とは、個人が自分の住んでいたマイホームを売却した場合に、一定の要件を満たすことで、売却によって生じた譲渡所得から最高3,000万円を控除できる制度です。正式には、「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」といいます。
土地や建物を売却して利益が出た場合、その利益は原則として「譲渡所得」として所得税や住民税の課税対象になります。
譲渡所得は、単純に「売却価格-購入価格」で計算するわけではありません。基本的には、次の計算式で算出します。
譲渡所得
=譲渡価額(不動産を売却した金額)
-取得費(その不動産の購入代金や購入時の仲介手数料などから、建物についての減価償却費相当額などを差し引いて計算した金額)
-譲渡費用(売却時に支払った仲介手数料など、売却のために直接かかった費用)
このように計算した譲渡所得から、一定の要件を満たす場合に3,000万円を控除できます。つまり、3,000万円控除は、不動産の売却価格から3,000万円を差し引く制度ではなく、売却によって生じた譲渡所得から最高3,000万円を差し引く制度なのです。
たとえば、マイホームを売却した結果、譲渡所得が2,000万円になったとします。3,000万円の特別控除を適用できれば、2,000万円-3,000万円=0円となります。このように、譲渡所得が3,000万円以下であれば、3,000万円控除によって課税対象となる譲渡所得を0円にできる可能性があります。
一方、譲渡所得が5,000万円だった場合には、5,000万円-3,000万円=2,000万円となり、3,000万円を超える2,000万円の部分については、原則として課税されます。
● 控除を受けられる理由
なぜ、自分が住んでいたマイホームを売却した場合には、このような大きな控除が認められているのでしょうか。
マイホームの売却によって生じる利益について、一般的な投資目的の不動産売却などと同じように課税することが必ずしも適切ではないことから、一定の要件を満たす居住用財産の譲渡について特別な控除が設けられています。
たとえば、長年住んできた住宅を売却して新しい住居へ引っ越す場合、住宅の売却そのものを利益を得る目的で行っているとは限りません。また、長年住んでいた住宅の価格が上昇していた場合には、購入時よりも高い価格で売却できることがあります。そこで、一定の要件を満たすマイホームを売却した場合には、譲渡所得から最高3,000万円を控除できることとされています。
なお、3,000万円控除については、所有期間の長短は要件とされていません。そのため、購入してから数年しか経っていないマイホームであっても、その他の要件を満たしていれば3,000万円控除を利用できる可能性があります。
ただし、所有期間は、3,000万円控除とは別に、譲渡所得に適用される税率に影響します。この点については後ほど詳しく説明します。
● 空き家の3,000万円控除(2,000万円控除)との違い
「空き家を売った場合にも3,000万円控除がある」と聞いたことがある方もいるかもしれません。実際に、相続した空き家を売却した場合にも、一定の要件を満たすことで最高3,000万円を控除できる制度があります。ただし、これは今回説明している「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円控除」とは別の制度です。
居住用財産の3,000万円控除は、基本的に売却する人自身が住んでいたマイホームを売却した場合に利用する制度です。一方、いわゆる「空き家の3,000万円控除(2,000万円控除)」は、相続または遺贈によって取得した、亡くなった方が住んでいた一定の家屋やその敷地等を売却する場合に利用できる制度です。
たとえば、親が亡くなった後、子どもが相続した実家を売却するケースでは、親が住んでいた家であっても、売却する子ども自身がそこに住んでいたとは限りません。このような場合には、通常の「居住用財産の3,000万円控除」ではなく、相続した空き家に関する特例が問題になることがあります。
両者は似た制度ですが、適用要件が異なります。相続した不動産を売却する場合には、どちらの制度が利用できるのかを確認することが大切です。
3,000万円控除の適用要件
● 適用要件まとめ
居住用財産の3,000万円控除を利用するためには、一定の要件を満たす必要があります。代表的な要件をまとめると、次のとおりです。
- 自分が住んでいた家屋を売却すること
- 住まなくなった場合は、一定の期間内に売却すること
- 親子や夫婦などの特別な関係にある人への売却ではないこと
- 前年、前々年など一定期間内に、3,000万円控除やマイホームの買換えなどに関する一定の特例を利用していないこと
ただし、実際の制度には、家屋を取り壊した場合や家屋と敷地の所有者が異なる場合など、さらに細かな要件があります。
以下、それぞれの要件を詳しく説明します。
● 自己が居住していた家屋であること
まず重要なのが、売却する不動産が自分の居住用財産であることです。
現在住んでいるマイホームを売却する場合だけでなく、すでに引っ越して住まなくなったマイホームについても、一定の条件を満たせば特例を利用できます。
以前住んでいた家を売却するケースでは、原則として、自分が住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却する必要があります。たとえば、2026年5月に引っ越して、その家に住まなくなったとします。この場合、一定の条件を満たせば、2029年12月31日までの売却が対象になります。
また、住まなくなった後、その家を空き家にしていた場合だけでなく、貸家や事業用として使用していた場合でも、一定の要件を満たせば3,000万円控除を利用できます。住まなくなった後の使用目的そのものによって直ちに対象外となるわけではありませんが、売却期限などの要件を満たす必要があります。
一方、家を取り壊して土地だけを売却する場合には、家屋を取り壊した日から1年以内に土地の売買契約を締結していることや、取り壊してから売買契約を締結するまでの間にその土地を貸付けなどに使用していないことなどの要件が追加されます。このため、「昔住んでいた家の土地だから、いつ売っても3,000万円控除を利用できる」というわけではありません。
なお、転勤などの事情によって本人が住んでいないものの、配偶者や家族がその家に住み続けているケースなど、一定の例外もあります。自分が現在住んでいないからといって、必ず特例が利用できないわけではありません。
● 住まなくなってから一定期間内に売却すること
先ほど説明したとおり、以前住んでいたマイホームを売却する場合には、売却時期が重要です。基本的には、「住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで」という期限があります。
特に、売却するかどうか迷っている間に賃貸に出したり、建物を取り壊したりすると、別の要件も問題になります。そのため、すでに引っ越しているマイホームを売却する場合には、
- いつまで住んでいたのか
- いつ引っ越したのか
- その後、その家をどのように使用していたのか
- 建物を取り壊しているか
- いつ売買契約を締結するのか
などを整理しておくことが大切です。
● 特別な関係者への売却でないこと
3,000万円控除は、誰に売却しても利用できるという制度ではありません。たとえば、親子や夫婦など、特別な関係にある人に売却した場合には、原則としてこの特例を利用できません。
国税庁では、「特別の関係がある人」として、親子や夫婦だけでなく、生計を一にする親族、家屋を売却した後にその家屋で同居する親族、内縁関係にある人、特殊な関係のある法人なども挙げています。これは、身内の間で不動産を売買することで、意図的に税負担を軽くすることなどを防ぐためです。
● 前年・前々年に同じ特例を受けていないこと
3,000万円控除は、毎年のように繰り返して利用できる制度ではありません。売却した年の前年および前々年に3,000万円控除を利用している場合には、原則として再度3,000万円控除を利用することはできません。
たとえば、2026年にマイホームを売却する場合、2025年または2024年に3,000万円控除を利用していると、原則として2026年の売却ではこの特例を利用できません。
そのため、過去にマイホームを売却したことがある場合には、「以前も3,000万円控除を利用したことがないか」を確認する必要があります。
また、3,000万円控除だけでなく、マイホームの売却に関係する他の特例についても、前年・前々年などの利用状況によって適用できなくなる場合があります。このように、3,000万円控除には「自分が住んでいた家なら必ず使える」という単純な制度ではなく、売却の時期や過去の特例の利用状況などについても確認が必要です。
3,000万円控除の効果
● 譲渡所得からの控除
3,000万円控除を利用すると、マイホームの売却によって生じた譲渡所得から最高3,000万円を差し引くことができます。
たとえば、譲渡所得が2,500万円だった場合には、2,500万円-3,000万円=0円となります。この場合、3,000万円控除を適用した結果、課税対象となる譲渡所得がなくなるため、通常はこの売却について譲渡所得に対する税金は発生しません。
一方、譲渡所得が4,000万円だった場合には、4,000万円-3,000万円=1,000万円となります。この1,000万円について、一定の税率をかけて税額を計算します。
ここで注意したいのは、3,000万円控除は「税金を3,000万円分減らす制度」ではないということです。あくまで、税金を計算する前の譲渡所得から最高3,000万円を控除する制度です。
そのため、実際にどの程度税負担が減るのかは、譲渡所得の金額や不動産の所有期間などによって異なります。
※ なお、ここでいう「税金が0円」とは、3,000万円控除の対象となる譲渡所得についての所得税・住民税が0円になるという意味です。不動産の売却には、譲渡所得に対する税金以外にも、契約書の印紙税などが関係する場合があります。
● 所有期間による税率への影響
3,000万円控除については、所有期間の長短に関係なく利用できます。
しかし、所有期間は、3,000万円控除後に残った譲渡所得に対する税率に影響します。
土地や建物を売却した場合、その不動産を売却した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えているかどうかによって、「長期譲渡所得」と「短期譲渡所得」に区分されます。
一般的には、
- 所有期間が5年を超える → 長期譲渡所得
- 所有期間が5年以下 → 短期譲渡所得
となります。
そして、短期譲渡所得の方が長期譲渡所得よりも税率が高く設定されています。
通常の税率は、復興特別所得税を除いて考えると、長期譲渡所得では所得税15%・住民税5%、短期譲渡所得では所得税30%・住民税9%です。
復興特別所得税を含めた場合、実際の税率は、
- 長期譲渡所得:約20.315%
- 短期譲渡所得:約39.63%
となります。
同じ1,000万円の譲渡所得でも、所有期間によって税負担が変わるのです。
なお、マイホームを売却した場合には、一定の要件を満たすことで、所有期間が10年を超えている場合の「軽減税率の特例」を利用できる場合があります。この軽減税率の特例は、3,000万円控除と併用することができます。そのため、長年住んでいたマイホームを売却する場合には、3,000万円控除だけでなく、軽減税率の特例も確認することが大切です。
適用にあたっての注意点
● 住宅ローン控除との重複適用
マイホームの売却を考えるときに注意したいのが、「3,000万円控除」と「住宅ローン控除」の関係です。
住宅ローン控除とは、住宅ローンを利用してマイホームを取得した場合などに、一定の要件を満たすことで、所得税額などから一定額を控除できる制度です。そして、3,000万円控除を利用した場合には、一定の期間について、新しいマイホームの住宅ローン控除を利用できなくなる場合があります。
ただし、3,000万円控除と住宅ローン控除の関係は、単純に「同じ年には利用できない」というだけではありません。3,000万円控除を利用した時期と、新しいマイホームに入居した時期によって、住宅ローン控除を利用できるかどうかが決まります。
たとえば、新しいマイホームに入居した年、その前年または前々年に、以前のマイホームについて3,000万円控除を利用している場合には、原則として、新しいマイホームについて住宅ローン控除を利用することができません。
また、新しいマイホームに入居した後の一定期間内に、以前のマイホームを売却して3,000万円控除を利用する場合にも、住宅ローン控除が利用できなくなる場合があります。
そのため、マイホームを売却して新しい住宅を購入する場合には、「3,000万円控除を利用できるか」だけで判断するのではなく、新しい住宅について住宅ローン控除を利用できるかどうかも含めて検討することが大切です。3,000万円控除によって減らせる税額と、住宅ローン控除によって受けられる控除額を比較すると、どちらを利用する方が有利なのかが変わる可能性があります。
マイホームの売却と新居の購入を同時に検討している場合には、売却する時期や新居への入居時期によって税制上の取扱いが変わることがあるため、早めに確認しておきましょう。
● 共有名義の場合の控除額
夫婦などでマイホームを共有している場合には、3,000万円控除について特に注意が必要です。
たとえば、夫と妻がそれぞれ2分の1ずつ所有しているマイホームを売却したとします。この場合、「共有だから2人合わせて3,000万円までしか控除できない」というわけではありません。3,000万円控除を利用できるかどうかは、共有者ごとに判断されます。そして、要件を満たす共有者1人につき、最高3,000万円の特別控除を受けることができます。
このケースにおいて、夫婦それぞれが実際にその家に住んでいて、その他の要件も満たしている場合には、夫と妻がそれぞれ3,000万円控除を利用できる可能性があります。
ただし、共有者全員が必ず3,000万円控除を利用できるわけではありません。たとえば、家屋は夫の単独所有で、土地だけを夫婦で共有している場合などには、誰が特例の対象となるのかについて別途検討が必要です。また、共有不動産を売却する場合には、譲渡所得そのものも共有者の持分に応じて計算することになります。
そのため、
- 誰が家屋を所有しているのか
- 誰が土地を所有しているのか
- 誰が実際に居住していたのか
- それぞれの持分はいくらなのか
- それぞれにどれだけの譲渡所得が生じるのか
を確認する必要があります。
● 相続した空き家の3,000万円控除(2,000万円控除)との違い
先ほど説明したように、相続した実家を売却する場合には、「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」が利用できる可能性があります。この制度も最高3,000万円の控除が受けられるため、通常の3,000万円控除と混同しやすいところです。
しかし、対象となる不動産や売却する人、建物の状態、売却時期などについて、それぞれ異なる要件があります。また、空き家の3,000万円控除については、令和6年1月1日以後の譲渡について、一定の場合には控除額が2,000万円となる取扱いもあります。
具体的には、相続または遺贈によって被相続人居住用家屋およびその敷地等を取得した相続人が3人以上いる場合などです。
そのため、相続した実家を売却する場合には、「自分が住んでいたマイホームなのか」「親が住んでいた家を相続したものなのか」をまず区別することが重要です。
● 買換え特例など他の特例との選択
マイホームの売却については、3,000万円控除以外にもさまざまな税制上の特例があります。
たとえば、一定の要件を満たしてマイホームを買い換えた場合に、譲渡所得への課税を将来に繰り延べる「特定のマイホームを買い換えたときの特例」があります。この制度は、3,000万円控除とは仕組みが異なります。
3,000万円控除は、譲渡所得から最高3,000万円を差し引く制度です。一方、買換えの特例は、一定の要件を満たす場合に、譲渡所得への課税を将来に繰り延べる制度です。そのため、「どちらも使えるなら両方使えばいい」というものではありません。
また、マイホームを売却して利益が出るケースだけでなく、売却して損失が出るケースにも、一定の要件のもとで損益通算や繰越控除ができる特例があります。
マイホームを売却するときには、「3,000万円控除が使えるか」だけを見るのではなく、自分のケースではどの特例を利用するのが適切なのかを確認することが重要です。
申告の方法
● 確定申告が必要
3,000万円控除を利用するためには、原則として確定申告が必要です。
「3,000万円控除を利用すると税金が0円になるから、申告もしなくていい」と考えてしまう方もいるかもしれません。しかし、3,000万円控除は自動的に適用される制度ではありません。特例を利用するためには、必要な書類を準備して、確定申告を行う必要があります。
3,000万円控除を適用した結果、課税される譲渡所得が0円になる場合でも、特例を利用するための申告が必要です。そのため、マイホームを売却した場合には、売却益が少ないからといって確定申告が不要だと自己判断しないようにしましょう。
● 必要書類
3,000万円控除を利用するための申告では、売却した不動産や売買の内容を確認できる書類などを準備する必要があります。
具体的には、ケースに応じて、以下のような書類を準備します。
- 譲渡所得の内訳書
- 不動産の売買契約書
- 不動産を購入したときの契約書や領収書
- 売却時の仲介手数料など、譲渡費用が分かる書類
- 登記事項証明書など、不動産の内容を確認できる書類
- その他、特例の適用要件を確認するために必要な書類
必要書類は、売却した不動産の状況によって異なります。たとえば、現在住んでいるマイホームを売却したケースと、数年前に引っ越した後のマイホームを売却したケースでは、確認すべき事項が異なります。また、共有名義の場合や、家屋を取り壊して土地を売却した場合なども、追加の確認が必要になることがあります。そのため、売却した不動産に関する書類は、契約書や領収書を含めてできるだけ保管しておくことが大切です。
● 申告期限
所得税の確定申告は、原則として、不動産を売却した日の属する年の翌年の2月16日から3月15日までに行います。
ただし、具体的な申告期間は年によって変わる場合があるため、実際に申告する際には国税庁の最新情報を確認しましょう。
また、3,000万円控除を利用するためには、単に申告書を提出するだけでなく、特例を利用することを前提とした申告を行う必要があります。
売却後に「税金がかからないと思って何もしなかった」ということにならないよう、早めに準備しておくと安心です。
まとめ
居住用不動産の3,000万円控除は、一定の要件を満たすマイホームを売却した場合に、譲渡所得から最高3,000万円を控除できる制度です。
ただし、住まなくなった家を売却する場合には売却期限があるほか、共有名義の場合や、住宅ローン控除など他の特例を利用している場合には注意が必要です。また、3,000万円控除を利用するためには確定申告も必要となります。
マイホームの売却では、どの特例を利用するかによって税負担が大きく変わる可能性があります。「自分の場合は3,000万円控除を利用できるのか」「他の特例を利用したほうがよいのか」など、判断に迷う場合には、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

