相続人の廃除とは? 要件や手続き、遺留分との関係を徹底解説!
2026/02/03
「特定の親族に相続させたくない」と感じることはありませんか?
家族間の深い葛藤や、虐待・重大な侮辱などのトラブルが相続の場面で顕在化することは珍しくありません。このような際に検討できる方法が「相続人の廃除」です。相続人の廃除をすることで、遺留分を有する相続人の相続権をはく奪することができます。
本記事では、相続人の廃除とは何か、廃除されるとどうなるのか、また実際に認められ得る事例や具体的な手続きの流れまで、詳しく解説します。
目次
相続人の廃除とは
● 相続人の廃除とは
相続人の廃除とは、被相続人(亡くなった方)が特定の法定相続人を相続から廃除するため、家庭裁判所に申し立ててその資格を失わせる制度です。廃除には一定の要件がありますが、「子どもに長年暴力を振るわれており、財産を遺したくない」「世間体もあるし離婚はしないが、不倫を繰り返していた配偶者に1円も渡したくない」といった希望がある場合に活用できる制度です。大阪市でも、この制度は全国共通の民法に基づいて利用できます。
廃除が認められることで、廃除された相続人は法律上の権利を完全に失い、遺留分を請求することもできなくなります。被相続人の意思を最大限尊重しつつ、家庭内の平穏や他の相続人の利益を守るための重要な法的手段といえるでしょう。
● 相続人の廃除の要件
相続人の廃除ができるのはどのようなときかというと、民法第892条では以下のように規定されています。
- 対象者は「遺留分を有する推定相続人」
→ 遺留分とは、兄弟姉妹以外の相続人に認められた最低限の相続分です。 - 廃除ができるのは「被相続人に対して虐待をし、または重大な侮辱を加えた者」「その他の著しい非行をした者」
要するに、相続人の廃除ができるのは、被相続人に対して虐待・重大な侮辱をし、または著しい非行をした兄弟姉妹以外の相続人です。
相続人の廃除が現実的な選択肢となる背景には、親族間の深刻な対立や、被相続人への虐待、重大な侮辱行為といった事由が存在します。たとえば、大阪市内でも親子間の長期的な絶縁や、金銭トラブル、暴力行為が問題となった場合など、家族の信頼関係が著しく損なわれるケースに廃除を検討する方がいます。
● 相続人の廃除の対象
ここで、「兄弟姉妹は廃除ができない」ということに疑問を感じた方もいるでしょう。
まず、遺留分とは、兄弟姉妹以外の相続人に認められた最低限の相続分です。たとえば遺言で「(相続人ではない)Aさんに全財産を遺贈する」と指定されていたとしても、相続人が遺留分を請求すれば、一定額を取り戻すことができます。
そして兄弟姉妹が相続人となるのは、被相続人に子どもがおらず、親が先に他界している場合です。子どもや配偶者、親には遺留分がありますが、兄弟姉妹には遺留分がないのが現行の民法上のルールです。
これらの点を踏まえると、兄弟姉妹が相続人となるときは、廃除をせずとも遺言書で兄弟姉妹に財産を与えない旨(=他の人にすべての財産を与える旨)を記載すれば、財産を与えないことができます。よって、兄弟姉妹は廃除ができない(する必要がない)のです。
● 相続人の廃除がもたらす影響
相続人の廃除は、廃除される相続人からすると「一方的に権利を奪われる制度」ですが、そのほかの関係者の視点で見ると、家庭内の安全や他の相続人の利益をしっかりと保護し、相続における不公平感を軽減できる制度といえます。
廃除が認められることで、問題ある相続人を法的に廃除し、円滑な相続手続きが進むよう期待できます。メリットとデメリットを比較検討し、選択肢のひとつとして活用しましょう。
● 相続人の廃除の手続き
相続人の廃除の手続きは大きく2種類あります。
ひとつは「被相続人本人が生前に家庭裁判所へ申し立てる方法(生前廃除)」で、もうひとつは「遺言書に相続人を廃除したい旨を記載し、被相続人他界後に遺言執行者から家庭裁判所へ申し立てる方法(遺言廃除)」です。
生前廃除では被相続人本人が申し立てる必要があり、遺言廃除では被相続人が書いた有効な遺言が必要です。つまり、申立てのタイミングが違うとはいえ、どちらも被相続人の意思を明確に反映した方法なのです。
ただし、廃除が認められるには、家庭裁判所の審査を通過しなければなりません。この審査では、客観的に見て廃除の要件を満たすような行為があったかどうかを判断されます。その際には、判断の根拠となる客観的な証拠が重視されます。感情に基づいた意見や本人の証言のみでは認められないので、日頃から証拠を残しておくようにしたいところです。
相続人の廃除が認められる具体的な要件
● 被相続人に対する虐待
次に、相続人の廃除ができる具体的な要件をみていきます。
まずは「被相続人に対して虐待をした場合」です。虐待には、殴る蹴るなどの身体的な暴力のほか、暴言を吐くなどの精神的なものも含みます。具体的な事例として、配偶者に暴力を振るったり十分な生活費を与えなかったりといった家庭内暴力(DV)や、高齢で介護が必要な親に悪意をもって適正な介護を受けさせずに暴力・暴言を浴びせるといったことが考えられます。双方向の喧嘩や一般的な不仲、口論では認められるのは難しいでしょう。
そして相続人の廃除において重要となる証拠についてですが、このような事実があったことの証拠としては、暴行によって怪我を負ったことがわかる医師の診断書や警察の調書、周囲の人々の証言などが考えられます。また、いつ何があったかが明確にわかるよう、日記をつけておくのも有効です。
● 被相続人に対する重大な侮辱
「被相続人に対して重大な侮辱をした場合」とは、被相続人の感情や名誉、社会的地位を著しく害するような行為をしたときを指します。
一方的かつ日常的に暴言を吐くといった一般的に侮辱と呼べるものから、何もしていないのに告訴する、公のメディアで名誉を貶めるなど、一口に侮辱とはいってもその種類は多岐にわたるのです。
ここに「重大な」とあるところがポイントであり、様々な種類の「侮辱」において、どの程度のものが「重大」であるとみなされるかは、各事案の内容によって決まります。こちらについても虐待があった場合と同様、客観的な証拠を残すよう努めましょう。
● 著しい非行
最後に「相続人がその他の著しい非行をした場合」ですが、これは「上記2つには当てはまらないが、相続させるべきではない」ような事案に適用されます。
具体例としては、以下のような事例が考えられるでしょう。
- 被相続人の財産を無断で使い込んだ
- 多額の借金をして家庭を崩壊させた
- 重大な犯罪を犯した
こちらについても「著しい」とあるように、どの程度の「非行」が対象となるのかは個別事情にて決せられます。
● 相続人の廃除は認められないことも多い
このように、相続人の廃除が認められるのは「被相続人に対する虐待」「重大な侮辱」「著しい非行」という一定の事情が客観的に認められた場合に限定されます。感情的な対立や個人的な不満、一般的な不仲といった程度では認められず、また、たとえ虐待などがあったとしても証拠が不十分で認められないような事例も数多くあるのが現状です。
実際のところ、相続人の廃除が認められる割合は20%に満たないとされています。
廃除が認められないとなると、「一度は廃除しようとした」という事実のみが残り、関係者間に禍根が残る可能性もあるでしょう。感情的な対立や一時的なトラブルだけで廃除を目指すのはリスクが高く、認められるためには客観的な証拠の準備と、本当に要件を満たしているかの慎重な確認が不可欠です。
また、廃除が認められない場合でも、他の相続人との相談や遺言の作成など、他の手段で調整できる可能性もあります。トラブルを未然に防ぐためにも、事前に司法書士や弁護士などの専門家に相談し、適切な方法を選択することが重要です。
相続人の廃除をするとどうなるか
● 相続権を失う
相続人の廃除による最も大きな効果は、廃除された相続人が相続権を失うことです。
相続人の廃除が認められた場合、廃除された相続人は、法律上の相続権を完全に失うため、その人を除いた他の相続人だけで遺産分割協議を行うことになります。これにより、他の相続人にとっては遺産の取り分が本来よりも増えることが多く、遺産分割協議の進行や合意形成にも影響を及ぼします。
また、相続手続きにおいても、廃除されたことがわかる戸籍等の資料の提出が求められるなど、廃除があったことを前提とした動きが求められます。廃除の影響がもたらすスケジュールの変化をよく確認し、わからないところは専門家に相談しましょう。
● 遺留分請求権を失う
廃除された相続人は、一般的な相続権を失うのみならず、遺留分を請求する権利も失います。
遺留分とは、兄弟姉妹以外の相続人に保証された最低限の相続分です。そもそも廃除の制度が「この人には遺留分すらも与えたくない」という被相続人の意思を実現するためのものなので、廃除された相続人は遺留分を請求する権利すらも失うことになるのです。
● 代襲相続が発生する
相続人の廃除が確定すると、廃除された人は最初から相続人でなかったものとみなされます。
ただし、廃除された相続人には代襲相続が発生し、その子や孫が新たに相続人となります。理由としては、廃除はあくまで本人の責任であり、その子の相続権まで奪うのは妥当ではないからです。
「あんなことをされたのだから、末代まで遺産を渡したくない」と考えるケースもあるでしょうが、相続人の廃除ではそのような希望は実現できません。現行の民法では、被相続人本人の意思によって子どもまで相続権を失わせるような制度はない点に注意が必要です。
● 相続人の廃除は取消しも可能
相続手続きにおいては、相続放棄など、一度してしまうと撤回できないものもありますが、相続人の廃除は被相続人の生前であればいつでも撤回可能です。「一度は廃除したが、あとで謝罪されたこともあり、廃除を撤回したい」といった希望も叶えられるのです。
さらに廃除の取消しには理由も不要であり、生前廃除であれば家庭裁判所にもう一度申し立てることによって、遺言廃除であれば遺言を撤回することによって撤回することができます。また、生前廃除をしていた場合に、遺言で廃除を撤回することも可能です。
また、遺言では、相続人以外の第三者に財産を渡す(遺贈する)ことも可能です。この遺贈を利用して廃除した相続人に財産を渡すことも可能であり、このような行為も事実上廃除の取消しといえるでしょう。
● 相続欠格との違い
相続人の廃除と似た制度に相続欠格があります。
相続欠格とは、被相続人に対して一定の重大な背信行為をした相続人が、法律上自動的に相続人から除外される制度です。主な要件は、被相続人や他の相続人に対する故意の犯罪行為や、遺言書の偽造・破棄などの不正行為です。これらの要件を満たした場合、相続人全員の合意や裁判所の判断を待たずに自動的に権利を失う点が相続欠格の特徴です。
このように、相続人の廃除と相続欠格の最大の違いは、相続人の廃除では「被相続人の意思で」相続権を奪うのに対し、相続欠格では「自動的に」相続権を失うところです。どちらも「一定の行為をした相続人から遺留分を含む相続人としての権利を奪う」制度ではありますが、適用されるタイミングに違いがあるのです。
相続人の廃除の手続きの流れ
● 方法その1:生前に家庭裁判所へ申し立てる
相続人の廃除の手続きは、被相続人が生前に行う場合(生前廃除)と、遺言により死後に行われる場合(遺言廃除)の2通りがあります。いずれも被相続人の意思によって始まり、家庭裁判所での審理のなかで廃除が認められるかどうかが判断される点で共通しています。
生前廃除の大まかな流れは以下のとおりです。
- 廃除をする理由の整理と証拠の収集
- 家庭裁判所への申立て
- 家庭裁判所での審理
- 家庭裁判所の審判(もしくは却下)
- 審判確定から10日以内に市区町村役場への届出
相続人廃除を申し立てる場合、まずは理由や証拠を整えてから、家庭裁判所に提出する申立書を準備します。申立書には、廃除を求める理由や具体的な事実関係を詳細に記載しなければなりません。相続人の廃除は相続放棄などと比べてかなり成功率が低い手続きなので、「この証拠でいいの?」「書き方がわからない」といった疑問のある方は迷わず専門家にご相談ください。
申立ての際には所定の申立書(家庭裁判所のホームページからダウンロード可)のほか、被相続人と廃除したい相続人の戸籍、800円分の収入印紙、郵便切手(管轄の裁判所によって異なる)などが必要となります。管轄となるのは「被相続人の住所地を管轄する家庭裁判所」なので、正しい裁判所の情報を参照しながら書類の準備を進めましょう。
● 生前廃除の注意点
生前廃除の注意点は、廃除が認められた後、10日以内に、届出人または廃除された相続人の本籍地のある市区町村役場へ廃除の届出をしなければならない点です。
この届出をすることで、相続人の戸籍に「この人は廃除されています」という記載がなされ、相続手続き時に廃除の事実があった証明となります。ただし、この届出をしなくとも廃除の効力自体が失われることはありません。
● 方法その2:遺言に記載する
一方、遺言廃除の大まかな流れは以下のとおりです。
- 遺言書に廃除の意思を記し、遺言執行者を指定する
- 相続発生後、遺言執行者が家庭裁判所に廃除を申し立てる
-
家庭裁判所での審理
-
家庭裁判所の審判(もしくは却下)
-
審判確定から10日以内に市区町村役場への届出
このように、遺言による廃除をする場合は、遺言で廃除の意思を明確にする必要があります。記載方法としては、廃除の対象者や理由がわかるよう、「Aは、○年前から継続的に遺言者に対して○○するなどの虐待をしていたため、相続から廃除する」などと書きます。単に「Aには相続させない」という記載ではどのような意図なのかがわからず廃除が認められませんので、注意してください。また、廃除の申立ては遺言執行者が行わなければならないため、遺言書のなかで遺言執行者を指定しておきましょう。
そして、生前廃除の場合と違い、廃除の申立ての際に、(検認済みの)遺言や、遺言執行者であることがわかる書類の提出も求められます。
● 遺言廃除の注意点
遺言廃除でも、生前廃除同様、廃除が認められてから10日以内に市区町村役場へ廃除の届出をしなければなりません。
また、遺言廃除特有の注意点として、虐待などの当事者である被相続人が亡くなっているため、後から証拠を探すことが困難であるところが挙げられるでしょう。遺言廃除を検討する際には、具体的になぜ廃除したいかの詳細やできごとの時系列、証拠の内容などを遺言執行者となる予定の人に説明しておくなど、遺言者亡き後に審理が進められるよう準備が必要です。
まとめ
相続人の廃除とは、被相続人(財産を残す人)が兄弟姉妹を除く特定の法定相続人に遺産を相続させたくない場合に、家庭裁判所の審判を経てその権利をはく奪する法的手続きです。この制度は、家族間の深刻なトラブルや、相続人による重大な非行・虐待があった場合に活用されます。
典型的なケースとしては、親に対する暴力や金銭の詐取、繰り返しの侮辱、生活費の不当な要求、扶養義務の著しい不履行などが挙げられます。大阪市のような都市部では、様々な家族構成や財産状況が絡み合い、廃除の申立て事例も多様化しています。
ただし、廃除は単なる不仲や感情的な理由のみでは認められず、家庭裁判所での審査の際には、客観的な証拠や事情が重視される点に注意が必要です。

