法定相続情報とは? 制度を上手に活用して相続手続きの手間を軽減
2025/10/30
相続手続きの際、「大量の戸籍謄本を何度も提出しなければならず大変だ」という話を聞いたことはありませんか?
相続が起こったとき、年金事務所や保険会社、銀行、不動産の名義変更など、複数の手続き先で繰り返し同じ書類を求められる煩雑さは、多くの方が直面する現実です。
本記事では、そんな煩わしさを解消するために、法定相続情報証明制度を活用し、自分で法定相続情報一覧図を作成し取得するまでの全ステップを詳しく解説します。必要書類の集め方から、一覧図作成、そして効率的な法務局の利用方法や注意点まで、実務に役立つポイントを網羅的に紹介。法定相続情報を賢く使い、今後の相続手続きをスムーズに進める大きなヒントが得られる内容です。
目次
相続手続きを変える法定相続情報の使い方
相続で活用できる法定相続情報証明制度の基本
● 相続手続きでは大量の戸籍が必要になることも
相続手続きを行う際に、「大量の戸籍謄本や住民票を何度も提出するのが手間だ」という話を聞いたことはありませんか?
実際に、相続手続きでは、亡くなった方(被相続人)が生まれたから亡くなるまですべての戸籍や相続人全員の戸籍・住民票、その他、相続関係を特定するために必要な戸籍等を集める必要があります。そして、集めた戸籍の束を、各金融機関や法務局、役所等に提出しなければなりません。
相続手続きを早く進めるには、こういった必要書類の提出を同時進行で進める必要がありますが、戸籍の束は通常1セットしかないので、提出して返却されるまで毎回待たなければなりません。
さらに、複雑な相続(子どもが多い場合や兄弟相続、数代に渡る相続)では数十通もの戸籍が必要となる場合も少なくなく、提出先での確認に時間がかかり、返却まで何週間もかかってしまう場合もあります。
このように、相続手続きの対象となる金融機関等が多くなればなるほど、「戸籍の束を提出する」という段階で時間がかかってしまうのです。
相続時に便利な法定相続情報一覧図の実務的メリット
● 法定相続情報証明制度とは
法定相続情報証明制度は、こうした手間や時間のロスを大きく軽減するために生まれた制度です。この制度では、被相続人(亡くなった方)の戸籍や住民票などをもとに「法定相続情報一覧図」を作成し、法務局で証明を受けることができます。この一覧図を法務局で証明してもらうことで、戸籍の束と同等の効力を持つ公的な証明書として扱われます。
証明書として発行される一覧図は、銀行口座の名義変更や不動産の登記、年金の請求など、さまざまな相続関連手続きで戸籍の代わりに利用することができます。大阪市内の多くの金融機関等でも対応しており、相続手続きを大幅にスピードアップできるだけではなく、書類の提出漏れや紛失リスクも低減し、手続き全体の正確性と効率性が大きく向上します。
(この一覧図は正式には「法定相続情報一覧図の写し」と呼びますが、本記事では「法定相続情報」または単に「一覧図」と記載します。)
相続の手続きを簡素化する一覧図の役割を解説
● 法定相続情報は誰がどうやって取得するのか
このように便利な法定相続情報ですが、誰がどのように取得するのでしょうか。
まず「誰が」という点ですが、法定相続情報は誰でも取得できるわけではなく、申請者は「相続人」または「一定の要件を満たした代理人」に限られています。代理人となるための一定の要件は、「相続人の親族(6親等内の血族または4親等内の姻族)」または「弁護士、司法書士、税理士、行政書士等の一定の資格者」です。つまり、基本的には相続人しか申請できず、代理人となれるのは親族または専門家に限られるということです。
次に「どうやって」という点ですが、大まかには「必要な戸籍や住民票を集める」→「一覧図を作成する」→「戸籍の束と一覧図、その他の必要書類を法務局に提出して証明書を取得する」という流れになります。
ここで注意したいポイントは、一覧図は法務局が作ってくれるわけではなく、自分で作らなければならないということです。「戸籍を集めれば勝手に作ってくれる」と誤解する方も少なくないので、自分で作る必要があるという点は押さえておきましょう。
相続効率化のために知っておきたい法定相続情報の特徴
● 法定相続情報一覧図をつくるメリット
法定相続情報一覧図の最大のメリットは、相続手続きを効率化できる点です。
従来は金融機関や不動産会社ごとに戸籍の束を何度も提出する必要がありましたが、一覧図を利用して複数の証明書を取得しておけば、複数の手続きを同時進行できます。特に大阪市のような都市部では、複数の銀行を使っている方も多く、法定相続情報の活用により提出の手間が大幅に減少します。
実際の相続現場では、法定相続情報一覧図を銀行口座の解約、不動産の名義変更、年金や保険金の請求など、幅広い手続きで活用できます。法務局で発行された一覧図は、複数の機関で使い回せるため、手続きの重複や提出漏れを防ぐことができます。
大阪市で活用できる法定相続情報証明制度
相続の現場で実感する法定相続情報証明制度の流れ
● 従来の戸籍の出し方
これまで、相続手続きの現場では、同じ戸籍を何度も提出する煩雑さが大きな負担となっていました。
原本が1セットしかないため、提出先が多くなればなるほど時間がかかりますし、提出時も、銀行担当者等が戸籍のコピーを取って内容を確認するために、窓口で1時間近く待たされることもあります。ただでさえ平日でなければ銀行窓口は開いていないのに、そこで長時間待たされるのはかなりの負担でしょう。
このような課題を解消するために生まれたのが、法定相続情報証明制度です。この制度を利用することで、戸籍謄本などの膨大な書類を何度も提出せず、法定相続情報一覧図を数枚用意しておき、各機関に1枚ずつ提出するだけで、金融機関や不動産登記、年金などの各相続手続きがスムーズに進みますし、窓口で待つ時間も大幅に短縮できます。
実際に大阪市で相続手続きを進める際、法定相続情報証明制度を活用することで、手続き先ごとに戸籍の束を揃える手間や、書類紛失のリスクが大幅に軽減されます。
相続手続きに役立つ法定相続情報証明制度の申請方法
● 相続手続きが遅れるデメリット
戸籍の提出に手間取って相続手続きが遅れると、様々なデメリットがあります。
まず前提として、銀行や証券会社に被相続人名義の口座や残高の照会を行うには、先に戸籍を提出して相続関係を示す必要があります。そのため、たくさんの銀行や証券会社に資産を保有している場合、その財産をすべて調査するには、すべての金融機関に戸籍を提出する必要があるのです。
つまり、相続財産をすべて把握するには、戸籍の提出をすべて終わらせなければならないのです。
これを前提に、戸籍の提出に時間がかかるリスクを考えてみましょう。
まず、相続放棄や限定承認、相続税申告など、期限がある手続きができないリスクです。相続放棄や限定承認は主に負債を相続したくない場合に行う手続きですが、「被相続人が亡くなり自分が相続人となったことを知ってから3か月」という短い期間内に行わなければなりません。明らかに負債が多い場合は問題ありませんが、負債と財産どちらが多いかわからず調査が必要な場合、財産調査が遅れると期限に間に合わない恐れがあります(ただし、事前に家庭裁判所に事情を申述することで期限を延長できることもあります)。その他、相続税申告は10か月、準確定申告は4か月など、期限がある手続きは少なくありません。
さらに、相続財産の調査が遅れると、他の相続人から「なかなか財産の詳細を教えてくれないが、財産を隠しているのではないか?」「自分を無視して手続きを進めているのではないか?」といったあらぬ疑いをかけられるリスクもあります。
このように、財産調査が遅れると、様々なリスクが生じ得るのです。
一覧図を自分で作成するための最初のステップ
相続で必要な法定相続情報一覧図の作成ポイント
● 法定相続情報は自分でつくれる?
法定相続情報の申請は、相続人であれば誰でも可能です。しかし、相続関係によって難易度の差が大きく、シンプルな相続関係(例:親が亡くなり子が相続人となる)だと比較的簡単に作成できますが、複雑な相続関係(例:兄弟姉妹やおいめいが相続人になっている)では難しくなります。
「速く、ミスなく作りたい」「平日の時間が取れない」という方は、司法書士などの専門家にご依頼ください。資格者へ依頼することで、戸籍の収集から一覧図の取得まで、すべての手続きを代行することができます。
それでは、以下に自分で一覧図を作る場合の流れをみていきましょう。
相続手続きを進めるための一覧図作成の基本手順
● まずは戸籍集めから
法定相続情報の作成は、戸籍を集めて相続人を確定させるところから始まります。
最初に、被相続人(亡くなった方)の本籍地を調べ、出生から死亡までの全ての戸籍謄本を集めます。被相続人の本籍地がわからないときは、死亡届を確認するほか、被相続人の住民票に記載されています。請求するときは、「本籍地を記載する」よう希望してください(希望がなければ省略されてしまいます)。
出生から死亡までのすべての戸籍を取ることができたら、相続人全員の現在の戸籍謄本または抄本を集めていきます。謄本はその戸籍に載っている人が全員載っているもの、抄本は対象者のみが載っているものです。被相続人については謄本が必要ですが、相続人は抄本でも構いません。
相続人調査においては、相続人の見落としがないよう注意してください。特に亡くなってから数十年経つような相続においては、子どもの数や、養子縁組・認知が多い傾向にあるので注意が必要です。
相続人が知っておきたい一覧図自作時の注意点
● 戸籍集めのポイント
戸籍の収集は、思いのほか時間がかかるものです。
効率的に集めるコツとしては、最初に家族関係を図にまとめておき、全員の住所氏名をまとめておくことです。
戸籍を集めるには、まず被相続人(亡くなった方)の出生から死亡までの連続した戸籍を漏れなく準備することが重要です。相続人全員の現在戸籍も必要になるため、家族構成や過去の住所移動も事前に確認しておきましょう。相続人全員の住所が先にわかっていれば、被相続人の戸籍集めに並行して相続人の住民票と現在戸籍を集めることができ、時間の短縮になります。
なお、本籍地は転籍や婚姻・離婚によって変わり(転籍し)、市区町村をまたいで転籍すると、それぞれの市区町村へ戸籍を請求しなければなりません。この請求は郵送でも可能ですが、時間がかかり、郵送手続きの手間も生じます。
そこで便利なのが、近年始まった戸籍の広域交付制度です。広域交付制度を活用することで、直系親族の戸籍を一括して請求することができます。ただし、相続人本人が直接窓口に行く必要がある等の制限もあるため、事前によく調べてから役所に行くようにしましょう。
他にも、自分の戸籍や住民票はマイナンバーカードを使ってコンビニでも取得することができます。さらに大阪市では、サービスカウンターを利用することで、役所に行かずとも、通勤通学に便利な場所で大阪市内の戸籍や住民票を取得できます。便利な制度を使って、効率的に戸籍を集めていきましょう。
一覧図を自分でつくる方法
相続手続きのための戸籍収集の効率的な進め方
● 一覧図の作り方
法定相続情報証明制度において、証明書の基となる一覧図は申請人自ら作らなければなりません。一見単なる家系図のようですが、その書式は厳密に決められているので、作成前に必ず法務局のホームページに掲載されている作成例を確認しましょう。
注意点としては、一覧図には被相続人の氏名・住所・本籍、相続人全員の氏名・住所が必要ですが、これらの情報は戸籍や住民票の記載をそのまま転記しなければならず、誤字脱字は許されません。なぜなら、提出した一覧図がそのまま証明書に使われるからです。誤字脱字があった場合、再提出をしなければならないので、提出前によく確認するようにしましょう。
また、一覧図はA4の紙で作成しますが、相続人が複数いる場合や、前妻・前夫との間の子どもがいて家族構成が複雑な場合には、図が大きくなりがちです。ここでの注意点として、図の下に5cm程度の余白を空けなければなりません。図が大きすぎると修正しなければなりません。
もし自作に不安がある場合は、専門家に相談すると安心です。法定相続情報一覧図を正しく作成し、煩雑な手続きを効率的に乗り切りましょう。
相続に必要な戸籍と住民票の集め方を徹底解説
● 一覧図をつくる際のポイント
一覧図を作成する際のポイントをまとめると、以下のとおりです。
・戸籍や住民票の内容を正確に反映する
・手書きで作成する場合には、文字は一文字ずつ明瞭に
・下に5cm程度の余白を空ける
・相続放棄した人や亡くなった相続人も記載する
→ 相続放棄をすると、法律上は「初めから相続人ではなかった」とみなされます。しかし、法定相続情報一覧図はあくまで被相続人が亡くなった時点での相続人を示すものなので、相続放棄をした人であっても、相続人として記載しなければなりません。同じ理由で、被相続人より後に亡くなった相続人についても記載する必要があります。
法務局への申出から法定相続情報一覧図の完成まで
相続手続きで混同しやすい説明図と一覧図の違い
● 提出する書類を整理する
書類の作成が終わったら、提出する書類を整理します。一般的な必要書類は、以下のとおりです。
・申出書
・作成した一覧図
・収集した戸籍や住民票(原本は返却されます)
・申出人の本人確認書類
・郵送で発行してもらう場合、返信用封筒(レターパックが望ましいです)
各書類の詳細は、法務局のホームページで説明されています。
これらの書類は、一覧図の作成と申請に必要不可欠です。リストアップして順番に取得し、不足や誤りがないかその都度チェックすることが大切です。
この流れで進めることで、書類の取りこぼしや記載ミスを防ぎ、スムーズな相続手続きが可能になります。特に初めての方は、一覧図の作成前に再度チェックリストで確認し、不安があれば専門家のサポートを受けることも検討しましょう。
法定相続情報証明制度の注意点まとめ
相続のために揃える法定相続情報一覧図の必要書類
● 一覧図には相続放棄は反映されない
相続放棄をすると、法律上は「初めから相続人ではなかった」とみなされます。つまり、相続手続きには無関係の人となるのです。
しかし、法定相続情報一覧図はあくまで被相続人が亡くなった時点の相続人を示すものなので、相続放棄をした人であっても、相続人として記載しなければなりません。相続手続きを行う際には、法定相続情報とあわせて、相続放棄していることがわかる証明書(相続放棄申述受理証明書または相続放棄申述受理通知書)を準備しましょう。
相続時の一覧図申請に欠かせない書類と準備方法
● 内容が変わっている可能性がある
法定相続情報一覧図はあくまで被相続人が亡くなった時点の相続人の状況を示すものなので、相続発生後に亡くなった相続人も記載されています。亡くなった相続人については、別途その相続人がわかる戸籍一式が必要となります。
また、一覧図に載っている相続人の住所が変わる可能性もあります。内容が変わっても自動的には反映されない点に注意しましょう。
相続手続きを円滑にする必要書類のポイント
● 一覧図に有効期限はないが……
発行された法定相続情報一覧図には有効期限はなく、例えば相続登記のために法務局に提出する場合であれば、数年前のものを使っても問題ありません。
しかし、銀行等の金融機関では公的証明書の有効期限を設けていることが多く、発行後3か月以内や6か月以内のものでないと使えないことがあります。提出先の機関に都度確認するようにしましょう。
まとめ
法定相続情報一覧図は、主に相続手続きの序盤で大きな効力を発揮します。たとえば銀行口座の名義変更や不動産の相続登記、保険金の請求など、複数の窓口で同じ戸籍を何度も提出する手間が省けます。一覧図1枚で相続関係を証明できるため、書類の紛失リスクや手続きの遅延も軽減されるのが特徴です。
実際に利用した方からは「手続きが格段に早くなった」「家族全員の戸籍を何度も並べ替える必要がなくなった」といった声が寄せられています。
一覧図の有効期間に制限はありませんが、金融機関が独自に有効期限を定めている場合や、被相続人や相続人の情報に変更があった場合は再取得が必要です。また、一覧図は複数枚発行できるため、金融機関や不動産会社への同時提出にも対応可能です。

