相続手続きが必要な株式はどこにある? ほふりを利用した証券会社の調べ方
2026/10/09
亡くなった方が株式を保有していたようだけれど、どこの証券会社に口座を開設していたのかわからない、とお困りではありませんか?
相続手続きを進めるためには、預貯金や不動産だけでなく、株式などの金融資産についても調査しなければなりません。しかし、証券会社からの郵便物や取引に関する書類が見つからない場合、どこに問い合わせればよいのかわからず、調査が進まないこともあります。
このような場合に利用できるのが、証券保管振替機構(ほふり)の「登録済加入者情報の開示請求」です。この制度を利用すると、亡くなった方の株式等に係る口座が開設されている証券会社や信託銀行などを調べられます。
本記事では、ほふりを利用して証券会社を調べる方法や必要書類、費用、照会後に行う相続手続きについて解説します。
目次
相続する株式がどこにあるかわからないときは「ほふり」で調べられる
● ほふり(証券保管振替機構)とは?
ほふりとは、証券保管振替機構の通称です。上場株式などの有価証券を電子的に管理するための仕組みを支える機関であり、証券会社などの口座管理機関を通じて、株式等の振替や管理に関する業務を行っています。
現在、国内の上場株式は、原則として株券を発行せず、電子的な記録によって管理されています。そのため、株式を保有している場合でも、紙の株券が自宅に保管されているとは限りません。
亡くなった方が株式を保有していたことはわかっていても、証券会社の名前がわからない場合には、ほふりの開示請求を利用することで、口座の開設先を確認できる可能性があります。
● 「登録済加入者情報の開示請求」でわかること
ほふりでは、振替株式等に係る口座が開設されている証券会社や信託銀行などを確認できる「登録済加入者情報の開示請求」という制度を設けています。
この制度を利用すると、開示時点で口座が開設されている証券会社などの一覧を確認できます。亡くなった方が複数の証券会社に口座を開設していた場合でも、開示対象となる口座管理機関をまとめて確認できるため、相続財産の調査に役立ちます。
ただし、開示請求によって確認できるのは、基本的に口座の開設先です。具体的にどの銘柄を何株保有していたのか、株式の残高がいくらあるのか、過去にどのような取引をしていたのかまではわかりません。そのため、ほふりで証券会社などの開設先を確認した後は、それぞれの金融機関に問い合わせて、保有銘柄や残高を調べる必要があります。
● ほふりへの照会だけではわからない財産もある
ほふりの開示請求は、すべての株式や金融商品を網羅的に調査できる制度ではありません。
たとえば、外国株式や国債、社債などについては、この開示請求によって口座の開設先を確認することはできません。また、非上場株式についても、ほふりの取扱対象となる所定の要件を満たすものと、対象外となるものがあります。
さらに、ほふりで確認できるのは、原則として開示時点で口座が開設されている証券会社などです。過去に口座を開設していても、すでに閉鎖されている場合には、開示結果に表示されないことがあります。
したがって、ほふりに照会して口座の開設先が見つからなかったとしても、亡くなった方が株式などの金融資産を保有していなかったとは限りません。証券会社からの郵便物や預金通帳、確定申告書なども確認し、必要に応じてほかの方法で調査を進めることが大切です。
ほふりで調べられる株式と調べられない株式
● ほふりへの照会対象となる株式等
ほふりの開示請求では、金融商品取引所に上場されている国内株式のほか、一定の要件を満たす有価証券について、口座の開設先を確認できます。
具体的には、次のようなものが対象に含まれます。
- 国内の上場株式
- ETF(上場投資信託)
- REIT(不動産投資信託)
- 新株予約権や新株予約権付社債など
- 所定の要件を満たす一部の非上場株式等
ただし、これらの種類に該当するものであっても、すべてが必ず照会対象になるとは限りません。対象となる有価証券の詳細は、ほふりの公式サイトで確認する必要があります。
● ほふりへの照会では確認できないもの
一方、次のような財産については、ほふりの開示請求だけでは口座の開設先を確認できません。
- 外国株式
- 国債や社債
- ほふりの取扱対象とならない非上場株式
- そのほか、開示請求の対象外となる金融商品
たとえば、亡くなった方が外国株式を保有していた場合、国内株式の口座が見つかっても、外国株式を保有していた証券会社がすべて判明するとは限りません。
また、非上場会社の株式を保有していた場合には、証券会社を通じて管理されているとは限らず、株式を発行した会社などに問い合わせる必要が生じることもあります。
● ほふりで見つからなくても、株式がないとは限らない
ほふりへの照会で該当する口座が見つからなかった場合でも、すぐに株式などの金融資産がないと判断するのは避けましょう。
たとえば、次のような手掛かりが残されていないか確認してみてください。
- 証券会社から届いた郵便物
- 配当金の計算書や株主総会招集通知
- 預金通帳に記載された配当金の入金履歴
- 証券会社への入出金履歴
- 確定申告書や特定口座年間取引報告書など
これらの資料から証券会社や保有銘柄が判明する場合があります。ほふりへの照会と並行して、亡くなった方の自宅に残された書類なども確認するとよいでしょう。
ほふりを利用して証券会社を調べる手順
ほふりを利用して証券会社を調べる場合は、必要書類を準備し、開示請求書とともに郵送します。その後、ほふりから送付される開示結果を確認する流れとなります。
● STEP1 必要書類を準備する
まずは、ほふりの公式サイトで必要書類を確認し、開示請求書などを準備します。
亡くなった方の口座を調べる場合、請求者が法定相続人なのか、遺言執行者なのかなどによって必要書類が異なります。
法定相続人が請求する場合には、一般的に次のような書類が必要となります。
- ほふり所定の開示請求書
- 請求者の本人確認書類
- 亡くなった方との相続関係を確認できる戸籍謄本など、または法定相続情報一覧図の写し
- 亡くなった方の住所を確認するための書類
- そのほか、ほふりが指定する確認書類
必要書類の組み合わせは、請求者の立場や提出する書類によって異なります。たとえば、法定相続情報一覧図の写しを提出する場合と、戸籍謄本などで相続関係を証明する場合では、必要となる書類が異なることがあります。
また、亡くなった方の旧住所で調査したい場合には、その住所を確認できる書類が必要になることがあります。
開示請求書以外の確認書類は、コピーで提出することとされています。原本を提出しても返却されないため、書類の種類や提出方法を公式案内で確認したうえで準備しましょう。
必要書類の詳細は、ほふりの公式サイトから確認できます。
● STEP2 開示請求書を記入して郵送する
必要書類がそろったら、開示請求書に必要事項を記入し、指定された宛先に郵送します。
ほふりの開示請求は郵送で受け付けており、窓口での受付や電話による回答は行っていません。
郵送先は、ほふりの公式サイトに記載されています。郵便局留の指定があるため、宛先には「日本橋茅場町郵便局留」と忘れずに記載しましょう。
また、請求書の記入漏れや必要書類の添付漏れがあると、手続きの受付が遅れる可能性があります。郵送する前に、必要事項を記入できているか、書類がすべてそろっているかを確認しておくことが大切です。
なお、ほふりが請求を受け付けた後は、原則としてキャンセルできません。証券会社に心当たりがある場合は、先に手元の資料などを確認しておくとよいでしょう。
● STEP3 開示結果を受け取る
ほふりで書類の確認が行われ、手続きに問題がなければ、「登録済加入者情報通知書」が送付されます。
この通知書には、開示対象となる株式等の口座が開設されている証券会社や信託銀行などが記載されています。
開示結果は、郵便局の代金引換サービス(簡易書留)で送付されます。そのため、通知書を受け取る際に、所定の開示費用を支払う必要があります。
なお、ほふりの公式サイトでは、書類に不備がない場合でも、書類の受付から開示結果の送付までに2か月ほどかかる場合があると案内されています。受付状況によっては、さらに時間がかかる可能性もあります。
相続税の申告や遺産分割などの手続きが必要な場合には、余裕をもって調査を始めましょう。
● ほふりへの開示請求にかかる費用
亡くなった方の口座について、法定相続人が開示請求を行う場合、費用は原則として1件7,700円(税込)です。ただし、法務局が発行する法定相続情報一覧図の写しを提出した場合には、1件6,050円(税込)となります。
費用は、開示結果を受け取る際に、郵便局の代金引換サービスを通じて支払います。
また、開示請求では、同一の方について複数の氏名・住所の組み合わせを同時に調査する場合、2件目以降は1件あたり1,100円(税込)が加算されます。旧姓や旧住所でも調査したい場合には、追加費用が発生する可能性があるため注意しましょう。
● 該当する口座が見つからなくても費用はかかる
ほふりへの開示請求では、調査の結果、該当する口座が見つからなかった場合でも、所定の費用がかかります。
また、開示請求で確認できるのは、原則として開示時点で口座が開設されている証券会社などです。過去に口座を開設していても、すでに閉鎖されている場合には、開示結果に表示されないことがあります。
そのため、証券会社からの郵便物や預金通帳などから口座の開設先を特定できないか、事前に確認しておくとよいでしょう。
費用や必要書類、所要期間は変更される可能性もあるため、請求する際には、ほふりの公式サイトで最新の情報を確認してください。
ほふりで証券会社がわかった後に行う相続手続き
ほふりの開示請求によって口座の開設先となる証券会社などが判明したら、次は各金融機関に連絡し、具体的な保有状況や相続手続きについて確認します。
● STEP1 証券会社などに連絡する
まずは、開示結果に記載された証券会社や信託銀行などに連絡し、亡くなった方が死亡したことと、相続手続きを進めたいことを伝えます。
その際には、亡くなった方の氏名や住所、生年月日などを伝え、相続手続きに必要な書類や手順を確認しましょう。
複数の証券会社などに口座がある場合には、それぞれの金融機関で手続きが必要です。金融機関によって必要書類や手続きの進め方が異なることもあるため、個別に確認する必要があります。
なお、開示結果に証券会社が記載されているのに、問い合わせ先で口座が見つからない場合もあります。その場合は、開示結果に記載された加入者口座コードを伝え、全店の口座を確認できる窓口に問い合わせてみましょう。
● STEP2 必要に応じて残高証明書などで保有状況を確認する
証券会社などに連絡したら、亡くなった方が保有していた株式や投資信託などの金融商品と、その残高を確認します。
必要に応じて、相続開始時点の残高証明書などを取得し、相続財産の内容を把握しましょう。
株式の銘柄や保有株数は、ほふりの開示結果だけではわかりません。証券会社などに問い合わせ、相続財産としてどのような金融商品があるのかを確認することが大切です。
また、証券口座に預り金が残っている場合もあるため、株式だけでなく、口座内の現金やそのほかの金融商品についても確認しておきましょう。
● STEP3 遺産分割などを経て名義変更や移管を行う
保有財産が判明したら、遺言書の有無や相続人の状況を確認し、誰が株式などを取得するのかを整理します。
遺言書がある場合には、その内容に従って手続きを進めます。遺言書がなく、相続人が複数いる場合には、原則として相続人全員で遺産分割協議を行い、株式などの取得者を決めます。
取得者が決まったら、証券会社などの案内に従い、必要書類を提出して名義変更や移管の手続きを進めます。
株式を相続する場合、取得する相続人の証券口座への移管が必要になることがあります。相続した株式を売却する場合にも、相続手続きや移管などを適切に進める必要があるため、金融機関に確認しながら手続きを行いましょう。
ほふり以外で株式の手掛かりを探す方法
● 自宅に残された郵便物や書類を確認する
ほふりへの照会は便利な方法ですが、対象外となる金融商品もあります。また、開示請求には費用と時間がかかるため、ほかの方法でも株式の手掛かりを探してみましょう。
まずは、亡くなった方の自宅に、証券会社や株式を発行した会社からの郵便物が残されていないか確認してみましょう。
たとえば、次のような書類が手掛かりになります。
- 証券会社からの取引残高報告書
- 取引報告書
- 配当金計算書
- 株主総会招集通知
- 証券会社からの口座開設や取引に関する案内
これらの書類には、証券会社の名前や口座番号、銘柄名などが記載されていることがあります。証券会社が判明すれば、ほふりへの照会を行わずに、直接問い合わせられる可能性もあります。
● 預金通帳や入出金履歴を確認する
預金通帳や金融機関の取引履歴も、株式の所在を調べる手掛かりになります。
証券会社への入金や証券口座からの出金が記録されていれば、口座の開設先を推測できる場合があります。また、配当金等が入金されていれば、保有していた株式や投資信託などを調べるきっかけになるでしょう。
ただし、配当金の振込名義だけでは、証券会社や保有銘柄を特定できないこともあります。通帳などの記録だけで判断せず、必要に応じて金融機関などに問い合わせて確認することが大切です。
● 確定申告書などの税務関係書類を確認する
亡くなった方が株式の売買や配当金について確定申告をしていた場合には、確定申告書や関連資料も確認してみましょう。
たとえば、特定口座年間取引報告書や配当所得に関する資料などから、証券会社や保有していた金融商品について手掛かりが得られる場合があります。
ただし、確定申告書に記載がないからといって、株式を保有していなかったとは限りません。特定口座で源泉徴収されている場合など、確定申告をしていないケースもあるためです。
ほふりへの照会と併せて、手元にある資料を確認し、相続財産の調査を進めましょう。
相続する株式の調査で注意したいポイント
● 住所や氏名が変わっている場合は、旧情報も確認する
亡くなった方が過去に引っ越しをしていた場合や、結婚などで氏名が変わっていた場合には、現在の情報だけでは口座を特定できない可能性があります。
そのような場合には、旧住所や旧姓でも調査することを検討しましょう。ただし、氏名や住所の組み合わせごとに請求件数が数えられるため、追加費用が発生する場合があります。
また、旧住所で調査する際には、その住所を確認できる書類の提出が必要になることがあります。戸籍の附票など、利用できる書類を事前に確認しておくとよいでしょう。
● ほふりの照会結果だけで相続財産の調査を終えない
ほふりの開示請求によって証券会社などの口座の開設先が判明しても、それだけで相続財産の全体像がわかるわけではありません。
開示請求の対象外となる金融商品があるほか、銘柄や残高については各金融機関に問い合わせる必要があります。
また、株式以外にも、預貯金、不動産、生命保険など、調査が必要な財産はさまざまです。相続財産の全体像を把握するためには、複数の方法を組み合わせて調査を進めることが大切です。
● 相続税の申告期限にも注意する
相続税の申告が必要な場合、原則として、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内に申告と納税を行わなければなりません。
ほふりへの開示請求には、書類の受付から結果の送付まで2か月ほどかかる場合があります。その後、証券会社などに残高証明書を請求することも考えると、財産調査には一定の時間が必要です。
相続税の申告が必要となる可能性がある場合には、早めに調査を始め、必要に応じて税理士などの専門家に相談しましょう。
まとめ
亡くなった方が株式を保有していたものの、どこの証券会社に口座があるかわからない場合には、ほふりの「登録済加入者情報の開示請求」を利用する方法があります。
開示請求によって、対象となる株式等の口座が開設されている証券会社や信託銀行などを確認できます。ただし、銘柄名や保有残高まではわからないため、開示結果を受け取った後は、それぞれの金融機関に問い合わせて確認する必要があります。
また、ほふりの照会対象外となる金融商品もあるため、郵便物や預金通帳、確定申告書なども併せて確認することが大切です。
相続手続きでは、株式の調査だけでなく、相続人の確定や遺産分割など、さまざまな手続きを進めなければなりません。財産調査や相続手続きの進め方に不安がある場合には、司法書士などの専門家への相談も検討してみてください。

