相続登記の過料が免除される相続人申告登記|具体的な手続きとメリット・デメリット
2025/11/13
相続登記の義務化が始まる中、「相続人申告登記」という新しい手続き制度をご存知でしょうか?
相続登記の義務化にあわせて導入された相続人申告登記は、過料の回避や手続きの簡略化、費用面での負担軽減などが期待できる一方で、いくつか注意点も存在します。
本記事では、制度の仕組みや法務局での手続きの具体的な流れ、そして知っておきたい注意点まで、相続人申告登記を大阪市で進める際に役立つ情報を詳しく解説します。新制度を適切に活用し、相続手続きをスムーズに進められる知識が身につきます。
目次
相続人申告登記が選ばれる理由とは
相続人申告登記が注目される背景と大阪の特徴
● 相続人申告登記の概要
2024年4月から、相続した不動産の名義変更が義務化されました。これを「相続登記の義務化」といいます。この義務化はすべての不動産が対象であり、相続登記を放置すると、10万円以下の過料が科されるおそれがあるため、多くの人にとって他人事ではありません。
とはいえ、「何代も前の祖先の名義になっていて相続人が何十人もいる」「遺産分割協議がまとまらない」などの理由で、相続登記ができない場合もあるでしょう。
そのような場合に相続人が過料を免れるためにつくられた制度が「相続人申告登記」です。相続人申告登記を申請すれば、事情があって相続手続きが進まない場合であっても、相続登記の義務を果たしたものとみなされるのです。
特に大阪市のような都市部では、相続人が多岐にわたるケースや、遠方に相続人がいることが多いため、従来の相続登記手続きに比べて、手続きの簡略化や負担軽減が求められてきました。相続人申告登記は、こうした地域特性に対応し、相続人が自ら法務局に申告することで過料を回避できる制度として導入され、今後の活用が期待されています。
相続登記義務化で大阪の相続が変わる理由
● そもそも「相続登記の義務化」とは?
相続人申告登記の説明の前に、相続登記の義務化について詳述します。
まず、相続登記とは、亡くなった方(被相続人)の名義になっている不動産を、新しい所有者の名義に変更する手続きです。
土地や建物といった不動産の権利状態は、法務局で、登記記録として管理されています。不動産の所有者が亡くなると、その不動産は相続人や受遺者といった新たな所有者のものになりますが、登記記録を変更するには新しい所有者が法務局で手続きをしなければなりません。このような手続きを相続登記といい、新たな所有者は、相続登記をすることで、その不動産が自分のものであることを第三者に証明できるようになるのです。
しかし、相続手続きを経なければ動かせない銀行預金や有価証券と違い、不動産は、相続登記をしなくても使い続けることができるため、相続登記をしない人がたくさんいました。そして、そのまま何十年も放置された土地や建物について、何代にもわたって相続が発生し、今の相続人が誰かわからなくなる事態が全国各地で発生したのです。
このような問題を「所有者不明土地問題・所有者不明建物問題」といいます。不動産の所有者がわからなければ、古くなった建物が解体できずに放置されたり、所有者不明土地が公共事業の妨げになったりといった、様々な問題が生じます。この問題を解決するために、2024年4月、相続登記が義務化されたのです。
大阪で相続人申告登記を選ぶメリットと比較
● 義務化による過料のリスク
相続登記の義務化により、相続または遺贈によって不動産を取得した人は、その不動産を相続したことを知った日から3年以内に相続登記をしなければ、10万円以下の過料の対象となることとなりました。
ただし、「遺産分割協議がととのわない」「相続人の数が多すぎて手続きができない」といった正当な理由があれば、期限を過ぎても過料は科されません。
とはいえ、このような理由と認められるまではいかずとも、「相続人同士で話し合う機会がなかなかなく、3年以内に遺産分割が終わらないかもしれない」「相続手続きをする時間がどうしても取れない」「高齢の相続人がいて、相続登記を保留している」などといった理由で、相続登記ができない場合もあるでしょう。
このような方のために創設された制度が、今回ご紹介する相続人申告登記です。
相続人申告登記が大阪の相続に適する理由を解説
● 相続人申告登記とは
相続人申告登記とは、相続人が法務局に対して「不動産の所有者が亡くなったこと」と「自分が相続人であること」を申告するものであり、この申告によって、相続登記の義務を果たしたものとみなされ、過料が免除されます。
相続人全員で行う必要がある相続登記と違って、相続人申告登記は相続人が1人で利用することができますし、相続人の調査を行う必要もなく、比較的簡単な手続きとなっている点も特徴です。
ただし、この申告の目的はあくまで「相続登記の義務を果たすこと」であり、この申告をしたからといって新たな所有者は確定しません。つまり、不動産を売却したり担保に入れたりする際には、正式に相続登記をする必要があります。
要するに、相続人申告登記は、相続登記を放置するリスクのうち「過料が科されるおそれがある」というリスクのみを回避するためのものです。相続登記をしないことによるリスクは他にもたくさんありますが、相続人申告登記では、その他のリスクには対応することができません。あくまで過料を受けないための制度であることを理解して、相続人申告登記の利用を検討するようにしてください。
相続人申告登記のメリットと注意点まとめ
相続人申告登記で得られる主なメリットとは
● 相続人申告登記は簡単な手続きだが……
相続人申告登記は、相続登記と比べて簡単な手続きです。
相続登記には「相続人全員の協力が必要」「遺産分割協議書などの重要書類が必要」といった特徴がある一方、相続人申告登記は「相続人1人からでも可能」「前提となる複雑な手続きは不要」といった特徴があり、手続きがかなり簡略化されています。
しかし、だからといって「相続登記の代わりに相続人申告登記をすればOK」というわけではありません。相続人申告登記の特徴を正しく理解し、メリット・デメリットを踏まえたうえで、ご自身に必要かどうかを判断してください。判断に迷う場合は、お近くの司法書士に気軽にご相談ください。
相続登記義務化に対応する相続人申告登記の利点
● 相続人申告登記のメリット
相続人申告登記の最大のメリットは、相続登記義務違反による過料を回避できる点です。相続登記には相続人全員の署名・押印、必要書類の収集などの煩雑な手続きが必要ですが、相続人申告登記では、最低限の情報を法務局に届け出るだけで一定の義務を果たせます。遺産分割ができない事情がある場合等にうってつけの方法といえるでしょう。
大阪市内で所有する不動産の名義変更を急ぐ必要がない場合や、遺産分割協議がまとまらないケースでも、まずは相続人申告登記を行うことで過料のリスクを避けつつ、後の正式な相続登記に備えることができます。これにより、相続人同士で時間をかけて協議を進める余裕が生まれ、より納得のいく相続手続きを目指せます。
また、相続登記と比べて簡単であり、費用が抑えられるというメリットもあります。相続人申告登記は、不動産の所有者を決める手続きではなく、あくまで過料を免れるために用いられる「仮の手続き」です。そのため、通常の相続登記と比べて必要な書類が少なく、時間も費用も比較的節約可能です。直接法務局に行かずとも、郵送やオンラインでも手続きができる点も魅力といえるでしょう。
大阪で相続人申告登記を選ぶ際の注意点
● 相続人申告登記のデメリットと注意点
一方で、相続人申告登記にはデメリットや注意点も存在します。
まず、最終的には正式な相続登記を行う必要があるため、申告登記だけで相続手続きが完結するわけではありません。具体的には、相続人申告登記をしたところで不動産の新たな所有者は確定しませんし、売却等の処分をすることもできません。要するに、不動産の所有者を決めて、権利関係を安定させるには、結局のところ相続登記をしなければならないのです。そうなると手続きが二度手間になりますし、時間やお金も余分にかかってしまいます。また、相続人申告登記をしたからといって安心して、相続登記を再び放置してしまうと、さらに相続人が増えてしまって相続登記がより困難になるという事態にも繋がりかねません。相続登記が可能な場合は、できるだけ相続登記を優先しましょう。
また、相続人申告登記をしたまま放置していると、不動産屋のチラシや固定資産税の納付書が相続人宛てに届いたり、行政手続き上の負担が増える可能性もあります。登記記録には、相続人申告登記をした相続人の住所と氏名が掲載されます。この登記記録は手数料を払えば誰でも見ることができるので、この点を踏まえて相続人申告登記をするかどうか検討しましょう。
法務局で相続人申告登記を進める方法
法務局で相続人申告登記を進める具体的な流れ
● ステップ1:必要書類を準備する
それでは、相続人申告登記を進める方法を具体的にみていきましょう。
手続きの流れとしては、①必要書類の収集、②申出書の作成、③法務局への提出、④申出完了の通知受領という4段階が一般的です。
まず、必要書類を準備します。相続人申告登記の必要書類は以下のとおりです。
・申出書
・所有者が死亡していることがわかる戸籍謄本
・申出人が所有者の相続人であることがわかる戸籍謄本
(通常の相続登記であれば、相続人全員の戸籍が必要となりますが、相続人申告登記は申出人と被相続人の関係がわかる範囲の戸籍で足ります)
・申出人の住民票または戸籍の附票
大阪市であれば、戸籍や住民票は、市役所や区役所のほか、サービスカウンターでも取得可能です。必要な分を事前に確認して、効率的に集めましょう。
大阪法務局での相続登記手続きのポイント解説
● ステップ2:申出書を作成する
次に、申出書を作成していきます。
申出書は、法務局に対して「このような相続人申告登記を申請します」と申し出るための書面です。記載ミスがあれば修正を求められるため、法務局のホームページで公開されている書式例を参考に、正確に記載するようにしましょう。
記載する際に特に悩む点は「提出先となる法務局」と「不動産の表示」だと思います。
「提出先となる法務局」は、対象となる不動産を管轄する法務局です。大阪市内の不動産であれば、大阪法務局の本局・北出張所・天王寺出張所のいずれかの法務局が管轄となります。
そして「不動産の表示」は、登記記録上の正確な不動産の情報を指します。不動産の表示における「所在」は住所とは異なりますので、注意してください。登記事項証明書やオンラインで取得可能な登記情報、固定資産税評価証明書等を見ながら、正確に記載しましょう。
相続人申告登記後の対応と次のステップ
相続人申告登記後に必要となる手続きとは
● 相続人申告登記が終わったら
相続人申告登記を行った後でも、最終的には「相続登記」を正式に進める必要があります。相続人申告登記は、相続登記の義務化に伴い過料を回避するための暫定的な措置ですが、不動産の名義が相続人に変更されるわけではありません。そのため、不動産の売却や担保設定などの具体的な手続きを行う場合には、必ず正式な相続登記が必要です。
相続登記を進めるときは、相続人全員の合意をもとに遺産分割協議書を作成し、必要書類を準備したうえで法務局に相続登記申請を行う流れとなります。相続登記をせずに相続人申告登記を選ぶことになった事情がなくなったら、速やかに準備を進めることをおすすめします。
相続人申告登記のその後に相続登記が必要な理由
● 相続登記と相続人申告登記の違い
今後の相続登記手続きでは、相続人申告登記と異なり、相続人全員の戸籍が必要となります。また、遺言がなければ遺産分割協議書を作成しなければならず、この遺産分割協議書には相続人全員の署名・捺印が必要です。
大阪市では広域交付制度を活用することで、遠方の本籍地からでも戸籍謄本や除籍謄本などを短期間で取得でき、手続きの負担を軽減できます。一方で、作成する書類が増え、書類不備や記載ミスがあると再提出や追加資料の提出が求められるため、事前にチェックリストを作成し、必要書類を一つずつ確認することが推奨されます。
特に遺産分割協議書は、相続人全員の署名・押印が必須となるため、十分な話し合いと確認が必要です。司法書士や弁護士といった専門家のサポートを受け、正確でトラブルのない遺産分割を進めましょう。
まとめ
相続登記義務化に伴い注目されているのが「相続人申告登記」です。この制度は、不動産の相続人が直ちに遺産分割や正式な名義変更を行わなくても、法務局に相続人であることを届け出ることで、登記義務違反を免れることができる新しい手続きです。
相続人申告登記は、遺産分割協議がまとまらない場合や、相続人同士で話し合いが長引く場合にも利用できるため、柔軟な対応が可能となります。大阪法務局でもこの申告登記の受付が始まっており、市内の不動産所有者にとっては現実的な選択肢となっています。
一方で、相続人申告登記はあくまで「登記義務違反の回避手段」であり、最終的な相続登記は別途必要になる点には注意が必要です。相続人が複数いる場合や不動産の評価が高い場合は、専門家へ相談しながら進めることが推奨されます。

