相続放棄と固定資産税の関係を徹底解説! 納税通知書が届いた時の正しい対処法
2025/08/14
不動産を含む財産の相続放棄を検討するとき、固定資産税の支払いをどうすればよいかを迷われていませんか?
相続放棄をすれば原則として固定資産税の支払義務もなくなりますが、役所の課税台帳に名前が残っており、納付書が届いてしまうような事例も多くみられます。
本記事では、相続放棄後に固定資産税の納税通知書が届いた場合の具体的な対処法や、公的機関への連絡・名義変更の方法をわかりやすく解説します。
目次
相続放棄と固定資産税の関係を知るための前提知識
● そもそも相続放棄とは?
相続放棄とは、被相続人(亡くなった方)の財産や債務を一切引き継がないために家庭裁判所に申し立てる手続きです。
これが認められるとはじめから相続人ではなかったものとみなされ、相続人としての地位を完全に失います。
相続放棄をするには、原則として被相続人が亡くなり、自分が相続人であることを知ってから3か月以内に家庭裁判所で手続きをしなければなりません。この期限を過ぎてしまうと相続放棄ができなくなります。
また、相続放棄をする前に相続財産に手をつけてしまうと、相続放棄が認められないおそれがあります。相続放棄を検討する際は、「被相続人の財産を使わない」「被相続人宛の請求書などを支払わない」ことが重要です。
● 固定資産税とはどのような税金か
固定資産税とは、土地や建物といった固定資産に対して課せられる地方税であり、毎年1月1日時点の所有者が納税しなければなりません。
納税のための申告などの手続きは不要で、毎年4月ごろに役所から届く納税通知書をもとに、銀行やコンビニエンスストア、クレジットカードなどの方法で支払えば納税は完了します。税額は土地や建物の固定資産税評価額の1.4%ですが、築年数や場所、用途によって調整されているので、実際の税額は納税通知書を確認する必要があります。
● 相続と固定資産税の関係
では、不動産に相続が起こると固定資産税はどうなるのでしょうか。
所有者が亡くなった後に発生する固定資産税は、原則として、不動産の新たな所有者が負担することになります(ただし、相続人間で別途取り決めがあればそれに従います)。
しかし、不動産の相続手続き(相続登記や役所への届出)がされずに放置されている場合には、役所が新たな所有者を把握することができないため、被相続人または相続人の代表者に宛てて固定資産税の納税通知書が届くことになります。
相続登記または役所への所有者変更の届出をしない限り、役所が次の所有者を正確に把握することはできないのです。
● 相続放棄と固定資産税
相続放棄を行うと、その不動産に関する固定資産税の支払い義務は免除されます。
しかし、家庭裁判所で相続放棄が受理されたとしても、その情報は役所に共有されないため、課税台帳の名義変更手続きがすぐには反映されず、相続放棄後も納税通知書が届くケースが見受けられます。
相続放棄をした後に固定資産税の納税通知書が届いた場合、「自分が支払う必要があるのか」と不安になる方が多いでしょう。このような場合には、基本的には支払う必要はありませんが、全員が相続放棄をした場合や、他の相続人がいる場合で対応が異なるため、個別の事情に応じた判断が重要です。
相続放棄後に固定資産税の納税通知が届いたら
● どのような場合に納税通知書が届くか
相続放棄が認められると、その人は最初から相続人でなかったものとみなされます。そのため、相続放棄後は原則として固定資産税を支払う義務はありません。
しかし、相続放棄をしたにもかかわらず、固定資産税の納税通知が届くことがあります。これは、相続放棄が家庭裁判所で受理されても、市役所の課税台帳にはすぐに反映されないためです。そのため、法的には相続人でなくなっていても、課税事務上は一時的に相続人として扱われることが多いのです。
この仕組みの背景には、地方税法や自治体の実務運用が関係しています。通常、相続放棄の情報は役所へは通知されず、結果として納税通知が誤って発送されるケースがしばしば見受けられます。
このような場合でも、相続放棄が有効であれば基本的に固定資産税の支払い義務はありません。納税通知が届いた際には、慌てて支払うのではなく、まずは相続放棄の状況を市役所に伝えて確認することが重要です。
● 相続放棄後に納税通知が届いたらどうすればいい?
相続放棄後に固定資産税の納税通知書が届いた場合、まずすべきことは「支払いを急がず、状況を整理する」ことです。相続放棄の申述が家庭裁判所で受理されていれば、放棄者には原則として納税義務はありません。納税通知書に記載された問い合わせ先(大阪市であれば市税事務所)に、相続放棄が成立している旨を伝えましょう。
問い合わせを行う際には、相続放棄申述受理証明書などの、相続放棄をした証拠となる書類を用意しておくとスムーズです。市役所では証明書の提示を求められることがあり、これにより課税台帳の修正や納税義務者の変更手続きが進みます。相続放棄の手続きが完了していることを正しく伝えることで、不要な税負担を回避できます。
なお、万一通知を受け取ったまま放置した場合、督促状が届くケースもあるため、早めの対応が肝心です。何か不明点がある場合は、司法書士など専門家への相談も選択肢となります。
● 役所に問い合わせをする際のポイント
市役所で固定資産税に関する問い合わせをする際のポイントは、まず「相続放棄が成立している事実」を明確に伝えることです。具体的には、家庭裁判所発行の相続放棄申述受理証明書を用意し、納税通知が誤送付である旨を説明します。
大阪市では、相続放棄後の課税台帳修正手続きが必要となるため、証明書の写しや関係書類の提出を求められることが一般的です。市役所の窓口や電話相談で、書類の提出方法や今後の流れを確認しましょう。
万が一、市役所側で手続きが進まない場合は、専門家へのサポート依頼も検討しましょう。正確な情報と証拠書類をもとに、冷静に対応することがトラブル回避の鍵となります。
● 相続財産の管理責任がある場合
相続放棄をしたとしても、相続財産を現に占有している場合には、相続財産を次順位の相続人に引き渡す、または国庫に預けるまでの間、相続人は財産を管理し続けなければなりません。
不動産でいうと、現にその不動産に住んでいる場合には管理義務があるといえるでしょう。
このような場合、自治体から、相続放棄をした相続人宛てに、不動産の管理に関するお知らせが届く可能性があります。しかし、相続放棄後に管理義務が残っている場合でも、原則として固定資産税の納税義務はありません。すぐに支払うのではなく、管理義務がない場合と同じように、まずは役所に相談してみましょう。
相続放棄をした後に固定資産税を支払ってしまったら?
● 納付してしまった場合の対処法
相続放棄が家庭裁判所で正式に受理されていれば、相続人としての権利義務は消滅するため、相続財産である不動産の固定資産税を支払う義務もなくなります。
しかし、名義変更が終わっていないなどの理由で、相続放棄をしたはずの相続人宛てに固定資産税の納税通知書が届く場合があります。
このような場合に、相続放棄をしたはずなのにうっかり固定資産税を支払ってしまったら、まず落ち着いて現状を整理することが大切です。役所への還付請求が検討できるほか、本来の所有者である次の相続人や、相続財産を管理する相続財産清算人に請求するという方法もあるので、どの方法がとり得るかを検討しましょう。
なお、支払った際の領収書や納税通知書は、解決するまで必ず保管してください。
● 還付請求の具体的な流れ
相続放棄後に固定資産税を誤って支払った場合、納期限の翌日から5年以内であれば、役所に対して返還請求(還付請求)をすることができます。
返還請求の際は、まず相続放棄が認められていることを証明する「相続放棄申述受理証明書」と、実際に支払ったことを示す領収書を準備します。
市役所の資産税課などにこれらの書類を提出し、誤納分の返還を申請します。手続きの流れや必要書類は自治体ごとに若干異なることがありますが、大阪市の場合も基本的な流れは同じです。不明点があれば事前に市役所窓口へ電話などで確認すると安心です。
● 還付請求は可能だが……
このように、相続放棄をした後に誤って固定資産税を支払ってしまったとしても、還付請求をすることは可能です。
しかし、原則として1月1日時点に課税台帳に名前が載っている人には納税の義務があるため、相続放棄をしていたとしても還付が認められないこともあります。固定資産税は1月1日時点の課税台帳の情報に基づいて課される税金なので、役所からすると「課税義務がなかった」とは認定しづらいのです。
最終的な判断は役所が行いますが、できる限り認めてもらえるよう、誤って納付したことが分かったら速やかに役所へ問い合わせ、相続放棄をしたことが分かる資料を提出するようにしましょう。
● 他の相続人に請求するという手も
支払ってしまった固定資産税は、役所に請求する以外にも、相続放棄をしていない他の相続人に請求するという手段もあります。
このような手段をとると「納税義務がきちんと果たせるため差押えなどのリスクがない」というメリットはありますが、他の相続人と話し合わなければならないため、その相続人が払ってくれないことも。その不動産を引き継ぐ方がはっきりと決まっている場合に使える手段といえるでしょう。
なお、他に相続人がいない場合や、相続人全員が相続放棄をした場合には、家庭裁判所が選任した相続財産清算人に請求することになります。
● 他の相続人に名義を移すよう依頼する
将来的に納税通知書が届かないようにするには、新しく所有者となる相続人に名義変更(相続登記)の手続きをしてもらう必要があります。
何年経っても納税通知書が届き続けるときには、一度連絡して、手続きをするよう伝えてみましょう。ただし、相続手続きに手間取っている可能性もありますし、相続が開始したことを知ってその相続人も相続放棄を検討することもあるので、伝え方には注意してください。
相続放棄をする前に固定資産税を払うとどうなる?
● 固定資産税を支払ってしまっても相続放棄できる?
では反対に、相続放棄をする「前」に固定資産税を支払ってしまった場合にはどうなるのでしょうか。
相続放棄を検討している段階で、うっかり固定資産税を支払ってしまうケースは少なくありません。しかし、相続放棄をする前に納税を行うと「相続財産の処分」と見なされ、家庭裁判所で相続放棄が認められなくなるリスクが発生します。
相続財産の処分とは、相続財産を自由に処分したと評価される行為であり、たとえば不動産の売却や預金の引き出しがこれに当たります。このような行為をしてしまうと、相続を認めたものとみなされ、相続放棄ができなくなります(法定単純承認)。
とはいえ、固定資産税を支払ってしまったからといって必ずしも相続放棄ができなくなるわけではなく、最終的には家庭裁判所が総合的な事情を考慮して判断します。
相続放棄の前に固定資産税の納税通知書が届いた場合には、慌てて支払わず、まずは相続放棄の手続きを優先してください。
● 大切なのは「相続財産を使わないこと」
このように、相続放棄をする前に相続財産を任意に処分すると、相続放棄が認められなくなるリスクがあります。
特に相続財産である「被相続人の預貯金」から固定資産税を支払ってしまうと、相続放棄が認められなくなる危険性が高まります。
万が一先に支払わなければならない事情があれば、相続財産には手をつけず、自分のお金で支払うようにしましょう。
● 年をまたぐ相続放棄
固定資産税は通常、毎年1月1日時点の所有者に課税されます。そのため、相続発生が年末年始にかかる場合や、相続放棄の手続きが年をまたぐ場合、納税通知書が従来の相続人に届く可能性があります。たとえば、前年度分は被相続人名義、翌年度分は相続人名義で通知が来ることもあり、手続きのタイミングによっては誤って支払いをしてしまうケースもあるのです。
年をまたいで納税通知が届いた場合でも、相続放棄が認められれば支払い義務は原則として消滅しますが、誤って納付した分については先述の回収手続きが必要となります。特に大阪市では、納税通知の発送時期や手続きの進捗によって個別対応が求められるため、年をまたぐ相続放棄事案では、早めに司法書士などの専門家に相談し、事前に市役所と連絡を取っておくと安心です。
● 相続放棄をせずに不動産を手放すには?
参考として、相続放棄をせずに不動産を手放す方法をご紹介します。相続放棄をせずに不動産を手放す方法としては、次のような方法が考えられます。
- 一度相続してから売却する
→ よく選択される方法ではありますが、売却できないリスクがあるので、売却先を見つけてから相続登記を進めることをおすすめします。
- 相続土地国庫帰属制度を利用する
→ これは、2023年4月に始まった国の制度であり、相続した不要な土地が一定の要件を満たしていれば、国が引き取ってくれるというものです。土地の要件として「更地であること」「境界が明確なこと」「土壌が綺麗なこと」「斜面や崖っぷちではないこと」などが細かく規定されていますが、近年は引き取りが認められているケースも増えています。
相続放棄の流れを確認
● 相続放棄の流れを確認
最後に相続放棄の流れを確認していきます。
相続放棄の申述は、亡くなった人(被相続人)の最後の住所地を管轄する家庭裁判所が管轄となります。大阪市内で亡くなった方については、大阪家庭裁判所が管轄します。
大まかな手続きの流れは、まず相続財産の内容を調査し、必要書類を集めたうえで、管轄の家庭裁判所に相続放棄申述書を提出します。申述が受理されると、借金などの負債も含めて一切の相続権を失うことになります。なお、相続放棄は原則として被相続人が亡くなり自分が相続人となったことを知った日から3か月以内に手続きを行う必要があるため、早めの対応が重要です。
● 提出後の大まかな流れ
申述書提出後、裁判所から内容確認のための照会書が届く場合があります。この照会書には、放棄の意思や理由、相続財産の調査状況などの質問が記載されているため、丁寧かつ正確に記入して返送してください。照会書が届かない場合もありますが、届いた場合は必ず期限内に対応しましょう。
相続放棄は最終的に、相続放棄申述受理通知書が家庭裁判所から送付されることで手続きが完了します。もし手続きに不備があると受理されないこともあるため、書類の記入漏れや添付書類の不足がないか、慎重に確認することが重要です。
● 申述書の作り方
それでは、家庭裁判所に提出する相続放棄の申述書は、どのように作成すればよいのでしょうか。
申述書のひな形は家庭裁判所の公式ホームページからダウンロードでき、書き方についても詳細に説明されています。この申述書は最新の様式を利用する必要があり、古いフォーマットを使うと受付不可となる場合もあるため注意が必要です。
ダウンロード時は、相続放棄申述書のほか、必要に応じて添付書類一覧や記載例も併せて入手すると、記入時のミスを防ぎやすくなります。記入例を参考にしながら、被相続人や相続人の情報、放棄理由などを正確に記載しましょう。
また、家庭裁判所のホームページでは、申述書だけでなく、郵送先や問い合わせ先も掲載されています。ダウンロードした書類は、手続き前に一度専門家に確認してもらうことで、書類不備による再提出のリスクを減らすことができます。
● 提出時の注意点
大阪家庭裁判所を含むほとんどの家庭裁判所では、相続放棄の申述書類を郵送で提出することが可能です。郵送手続きは、窓口に行く時間が取れない方や遠方に住んでいる方にとって便利ですが、いくつかの注意点があります。
まず、必要書類がすべて揃っているか必ず確認し、コピーではなく原本が求められる書類には特に注意しましょう。書類を送付する際は、簡易書留や特定記録など追跡可能な方法を利用すると、到着が確認できて安心です。また、申述人の連絡先を明記し、不備があった場合に速やかに連絡が取れるようにしておくことも重要です。
郵送後、家庭裁判所から照会書が届く場合もあるため、申述後は郵便物の受取りに注意しましょう。期限内に手続きが完了しないと放棄が認められないリスクがあるため、余裕を持って準備し、手続きの進捗をこまめに確認することが大切です。
● 相続放棄の完了
相続放棄の申述書を家庭裁判所に郵送後、通常は2週間から1か月ほどで「相続放棄申述受理通知書」が届きます。通知書は、相続放棄が正式に認められた証明となり、今後の債権者対応や他の相続人への説明時にも必要となる重要な書類です。
万が一受理されなかった場合や不備があった場合は、その旨の通知が届きますので、指示に従い再申述または専門家への相談を検討してください。
受理通知書は再発行できませんが、同様に相続放棄をしたことの証明となる「相続放棄申述受理証明書」は何度でも発行可能です。通知書については、紛失防止のために大切に保管し、必要に応じてコピーを取っておくことをおすすめします。万が一通知書が手元に届かない場合は、速やかに裁判所へ問い合わせて状況を確認しましょう。
まとめ
相続放棄をした場合、法律上は最初から相続人でなかったものとみなされるため、固定資産税の支払い義務は消滅します。
しかし、課税台帳の名義変更が間に合わない場合や、市役所側で相続放棄の情報が反映されていない場合には、納税通知が届くことがあります。
この時、慌てて支払う前に本当に義務があるのかを確認してください。相続放棄後であれば、支払い義務は基本的にありません。疑問があれば、相続放棄申述受理証明書を持参して市役所に相談し、支払い義務の有無を確認することが大切です。


