贈与税が非課税になる代表的な5つの制度を活用する実践ガイド
2025/11/06
贈与税の非課税制度について、疑問や不安を抱えていませんか?
贈与税は資産移転を検討する際に大きな壁となりがちな一方、住宅購入や結婚・育児・介護といったライフイベントには非課税で資金を贈与できる制度が複数用意されています。しかし、それぞれの制度の内容や利用条件は複雑で、正確な理解と実践が求められます。
本記事では、ファイナンシャル・プランニングの専門的知見をもとに、大阪市で活用できる5つの贈与税非課税制度について詳しく解説。役立つ制度のポイントやメリットをわかりやすくお伝えします。
目次
家族間でもかかる? 贈与税の基本
ファイナンシャル・プランニングで安心の家族資産設計を実現
● そもそも贈与税とは
贈与税とは、個人(贈与者)から財産を受け取った人(受贈者)が負担する税金です。対象となる財産には現預金の他に株式や不動産も含まれます。なお、法人から財産を受け取った場合には、所得税がかかります。
贈与税は、1年単位(1月1日~12月31日)で考え、その年に受け取った贈与の合計額から基礎控除額110万円を引いた金額に対して課税されます。たとえば、1年間に500万円の贈与を受けた場合、500万円−110万円=390万円が課税対象となり、その金額に応じた税率(10〜55%)が適用されるのです。
なお、この110万円は贈与を受けた人(受贈者)ごとに計算されるため、例えば父と母から100万円ずつ贈与を受けた子どもは、100×2-110=90万円分の贈与について贈与税を納めることになります。
贈与税非課税制度を活かす資産形成のファーストステップ
● 贈与税が課されない贈与
ただし、以下のような贈与には、贈与税は課されません。
・夫婦・親子・兄弟姉妹などの扶養義務者から、生活や教育のために与えられた金銭や物品(ただし、生活費の名目であっても、それを使わずに貯金したり、株式や不動産の購入資金にしたりすると、贈与税の対象となることも)
・香典や花輪代、お歳暮、お見舞い等、社会通念上相当と認められるもの
・国や地方自治体に認定された公益性の強い給付金等
つまり、「日常的な扶養義務の範囲内での財産のやり取り」や「社会通念上、贈与とはいいがたい物品のやり取り」は非課税とされています。一方で、住宅購入や将来のための蓄えとして一括で資金を渡す場合は課税対象となるため、これから紹介するような特例制度の活用が重要です。
家族の未来を守る贈与税非課税の使い方入門
● 贈与税対策の基本となる暦年課税
贈与税を回避する方法として最も有名なものが「暦年課税」です。
暦年課税とは、上記110万円の非課税枠を活用した贈与方法です。1年間の贈与の額の合計が110万円を超えない限り、贈与税はかかりませんし、贈与税の申告も不要です。
暦年課税の大きな特徴は、「誰でも、何でも、何回でも贈与できる」という点です。贈与者や受贈者の年齢や関係性に制限がなく、贈与する財産の制限も、適用回数の制限もありません。また、贈与した財産の利用目的についても特に制限はなく、これが暦年贈与が他の制度と比べて使いやすいとされる大きな理由となっています。
資産移転に強いファイナンシャル・プランニングの重要性
● 暦年課税以外にもある贈与税非課税制度
このようにシンプルな暦年課税以外にも、贈与税が非課税になる制度が存在します。
今回は、夫婦間の贈与や住宅資金といった身近なものを中心に5つの制度を紹介します。
贈与税非課税制度を上手に利用すれば、家族間の資産移転がよりスムーズに行えます。制度利用時には、非課税枠の上限や申告の要否、利用目的の証明書類の準備など、実務的な注意点を押さえることが大切です。
万が一手続きに不備があった場合、後から課税対象となるリスクもあるため、専門家の指導のもと正確な手続きを心がけましょう。こうした準備を徹底することで、家族資産のスムーズな承継と安心の家計運営が実現できます。
住宅資金を贈与する際に使える贈与税非課税制度
ファイナンシャル・プランニングで安心の家族資産設計を実現
● 住宅資金と贈与税
住宅資金とは、自分が住むための家や土地の取得、建物の新築・増改築等に充てるための資金です。
家を買うときの出費は一生のうちでも高額なもので、その資金を両親や祖父母から援助されるケースも多いでしょう。また、夫婦間で「夫名義の自宅を妻名義にしたい」「夫婦共有の家を、どちらか一方の資金で建てたい」といった希望のある方もいるでしょう。このように、住宅資金を家族間で柔軟に移転したいという需要は一般的なものです。
しかし原則として、家族間の贈与であっても贈与税はかかりますし、住宅用の資金とはいえその前提は変わりません。
このような状況で、少しでも住宅資金の贈与を促し、老後の生活の安定や相続時のトラブル防止に繋げようという意図のもと、2つの制度が誕生しました。
贈与税非課税制度を活かす資産形成のファーストステップ
● 夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除(おしどり贈与)
夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除(通称:おしどり贈与)とは、夫婦間で配偶者が居住するための不動産やその購入資金を贈与した場合に、最大で2,000万円+基礎控除110万円まで贈与税が非課税となる制度です。
詳しい要件は以下のとおりです。
・婚姻期間が20年以上であること
・配偶者から受けた贈与が、居住用不動産の贈与または居住用不動産を購入するための金銭の贈与であること
・贈与を受けた年の翌年の3月15日までに、その居住用不動産またはその金銭で購入した居住用不動産に、受贈者が実際に居住し、その後も引き続き住む見込みであること
・これまでにこの制度を利用していないこと
一生に一度しか使えない制度ではありますが、長年連れ添った夫婦間で自宅を配偶者名義にしたい場合などにとても有効です。
家族の未来を守る贈与税非課税の使い方入門
● おしどり贈与に必要な手続き
おしどり贈与の適用を受けるには、以下の書類を添付して、贈与税を申告する必要があります。
・贈与の日から10日を経過した日以後に作成された戸籍の謄抄本
・贈与の日から10日を経過した日以後に作成された戸籍の附票の写し
・居住用不動産の登記事項証明書や居住用不動産の売買契約書など
・居住用不動産の固定資産税評価証明書
この申告をしなければ2,000万円の控除を受けられず、贈与税の対象となりますので、必ず申告してください。
なお、おしどり贈与の注意点として、金銭ではなく不動産自体を贈与する場合は、不動産取得税(固定資産税評価額の約3%)や登録免許税(固定資産税評価額の約2%)がかかります。さらに贈与の登記を司法書士に依頼する場合、司法書士報酬も必要です。免除されるのは贈与税のみである点に注意してください。
資産移転に強いファイナンシャル・プランニングの重要性
● 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税(住宅取得等資金の贈与)
直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税(通称:住宅取得等資金の贈与)とは、父母や祖父母などの直系尊属から、居住用家屋の新築や購入、増改築等のために充てる金銭(住宅取得等資金)の贈与を受けた場合に、最大で500万円(省エネ等住宅の場合は1,000万円)+基礎控除110万円まで贈与税が非課税となる制度です。
詳しい要件は以下のとおりです。
・直系尊属(父母、祖父母、養父・養母)から贈与を受けたこと
・贈与を受けた時点で受贈者が日本在住の18歳以上であること
・贈与を受けた年の受贈者の合計所得金額が、2,000万円以下(新築等をする家屋の床面積が40㎡以上50㎡未満の場合は、1,000万円以下)であること
・家屋を新築等する際に金銭を支払う相手方が、配偶者や親族などの一定の特別の関係がある人ではないこと
・贈与を受けた年の翌年の3月15日までに、贈与された資金の全額を充てて家屋の新築等をし、受贈者が家屋の所有者(または共有者の1人)となること
・贈与を受けた年の翌年の3月15日までにその家屋に居住すること、または遅滞なく居住することが確実であると見込まれること
・これまでにこの制度を利用していないこと(一定の場合を除く)
さらに、新築等する家屋にも床面積などいくつか条件が決められています。また、あくまで家屋を対象とした制度なので、土地や借地権のみの取得は適用外です。
家を買うときに、「親に頭金を払ってもらう」「祖父母がお金をくれる」といったご家庭も多いでしょうが、この制度を使うことで、贈与税を軽減できます。
非課税制度利用でスムーズな家族間資産移転を目指す
● 住宅取得等資金の贈与の手続き
住宅取得等資金の贈与の適用を受けるには、以下の書類を添付して、贈与税を申告する必要があります。
・受贈者の戸籍の謄抄本で、贈与者との関係を示すもの
・受贈者の源泉徴収票や確定申告書の控え
・贈与の翌年の3月15日までに登記が完了している場合は、家屋(と土地)の登記事項証明書
・新築に係る工事の請負契約書の写しや売買契約書の写し等、契約の内容や取得の相手方がわかる書類(登記事項証明書から判明する場合は添付不要)
・その他、中古住宅である場合や省エネ等住宅である場合は、本制度の適用を受けるために必要な要件を満たしていることを示す書類
この申告をしなければ500万円または1,000万円の控除を受けられず、贈与税の対象となりますので、必ず申告してください。
結婚・子育て資金の移転の方法
ファイナンシャル・プランニングが資産移転で果たす役割
● 結婚や育児に関する資金と贈与税
生活において、住居費にならんで大きな支出となるのが結婚や育児に関する費用でしょう。
このような費用に関する贈与税の非課税制度としては、「結婚・子育てに関する資金の贈与」が挙げられます(以前は教育資金の一括贈与もありましたが、2026年(令和8年)3月31日で新規の受付を終了しました)。
ただし、住宅資金の贈与と比べて制度が複雑なため、利用者が少なく、制度の廃止も議論されています。利用の際には、最新の情報に注意してください。
贈与税非課税で実現する安心の資産引き継ぎ術
● 直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の非課税(結婚・子育て資金の一括贈与)
直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の非課税(通称:結婚・子育て資金の一括贈与)とは、父母や祖父母などの直系尊属から、結婚・出産・育児のための資金を一括で贈与された場合に、最大で1,000万円(そのうち、結婚に関する資金については300万円まで)+基礎控除110万円まで贈与税が非課税となる制度です。「一括贈与」という制度名ですが、枠内であれば複数回に分けて贈与しても問題ありません。
詳しい要件は以下のとおりです。
・直系尊属(父母、祖父母、養父・養母)から贈与を受けたこと
・贈与を受けた時点で受贈者が18歳以上50歳未満であること
・手続きをした年の受贈者の合計所得金額が、1,000万円以下であること
・2027年(令和9年)3月31日までに手続きをすること
「結婚・出産・育児のための資金」とは、結婚に際して支払う金銭(300万円まで非課税)(例:挙式費用や衣装代等(ただし、婚姻の日の1年前以後に支払われるものに限る)、転居費用や家賃・敷金等(ただし、婚姻の日の1年前後に締結した賃貸借契約に係るものに限る))および出産や育児に際して支払う金銭(1,000万円まで非課税)(例:不妊治療や妊婦健診の費用、分娩費用、子どもの医療費や保育料、ベビーシッター代等)です。
専門家による資産移転サポートのメリットと流れ
● 結婚・子育て資金の一括贈与の手続き
結婚・子育て資金の一括贈与に必要な手続きは以下のとおりです。
1:贈与者と受贈者の間で贈与契約を締結し、贈与契約書を作成する。受贈者が未成年である場合は、法定代理人(親)が代わりに契約する。
2:金融機関で、受贈者名義の「結婚・子育て資金口座」を開設する。
3:口座開設した金融機関に、「結婚・子育て資金非課税申告書」を提出する。
4:結婚・子育て資金口座に、結婚・子育て資金を預け入れる。
5:受贈者は、結婚・子育て資金を支払ったときに受け取った領収書を金融機関に提出し、結婚・子育て口座から資金を引き出すことができる。
ただし、口座内に資金が残ったまま受贈者が50歳になった場合には残った資金は贈与税の課税対象となり、また、口座内に資金が残ったまま贈与者が死亡した場合には残った資金は相続税の課税対象となります。
贈与を受ける人の属性に応じた非課税制度も
ファイナンシャル・プランニング視点で非課税制度の基本理解
● 受贈者の属性に応じた非課税制度
贈与税の減税制度には、贈与を受ける人の属性に応じた減税制度もあります。これまで紹介した制度も「夫婦間」や「親子間」といった一定の関係を前提としていますが、受贈者の属性のみに応じた減税制度も用意されています。
相続税については未成年者控除、障害者控除などが有名ですが、以下では、贈与税における受贈者の属性のみに応じた減税制度の代表的な例として、「特定障害者に対する贈与税の非課税(通称:特定贈与信託)」を紹介します。
贈与税非課税枠の最新情報と基本条件を押さえる
● 特定障害者に対する贈与税の非課税(特定贈与信託)
特定贈与信託とは、特定障害者(特別障害者及び一定の精神障害者)のために信託契約を締結し、信託銀行等の受託者を通じて最大で6,000万円(特別障害者以外の特定障害者の場合、3,000万円まで)+基礎控除110万円まで贈与税が非課税となる制度です。
この制度は、これまで紹介した他の制度とは異なり、特定贈与信託という信託契約を活用した制度になっている点が特徴です。信託契約では、委託者(財産を預ける人)・受益者(財産から生じる利益を受ける人)・受託者(財産を預かる人)が登場しますが、特定贈与信託では、障害がある方を受益者として、その親族が信託銀行等に財産を預け、信託銀行等がその財産を運用し、受益者に給付します。この仕組みのおかげで、委託者に万が一のことがあっても、障害のある受益者のために、受託者が資金を提供し続けることができるのです。
この信託は、受益者が亡くなるまで続きます。節税よりも受益者の生活のための制度である点が、他の制度との大きな違いです。
生前贈与に便利な相続時精算課税
ファイナンシャル・プランニングが導く住宅取得の非課税贈与
● 暦年課税に並ぶ相続税対策
最後は贈与税と相続税をセットで対策する「相続時精算課税制度」を紹介します。
相続時精算課税制度とは、60歳以上の人が18歳以上の子どもや孫へ生前贈与する際に利用できる制度であり、通常、年間110万円を超える贈与には贈与税が課されますが、この制度を使うと、累計で2,500万円までは贈与税がかからないという大きな特徴があります。
ただし、この制度を利用した場合は、贈与された財産の価値を、相続発生時に相続財産として再度合算(精算)して相続税を計算しなければなりません。
つまり、贈与時点では贈与税を軽減し、最終的には相続時に精算する仕組みといえるでしょう。最終的に通常の相続税と同様の税額を納付することとなるのが本制度の特徴なのです。
その他の特徴として、贈与を受ける人(受贈者)は、贈与をする人(贈与者)ごとに相続時精算課税を利用するか否かが選択できます。例えば、「父からの贈与については相続時精算課税を利用するが、祖父からの贈与については通常の暦年課税で受け取る」といったことも可能です。
教育資金贈与の非課税制度とその活用のコツ
● 相続時精算課税の利用条件
相続時精算課税制度を利用するための条件は、以下のとおりです。
・贈与者は、贈与をした年の1月1日において60歳以上の父母または祖父母である
・受贈者は、贈与を受けた年の1月1日において18歳以上の子または孫である
贈与する財産の種類についての制限はなく、どのような種類の財産にも適用できます。ただし、事業を引き継ぐために非上場株式や事業用資産を贈与する場合には、条件に付いて一定の例外があります。
住宅・教育のための贈与税非課税枠を徹底解説
● 相続時精算課税制度の利用の手続き
相続時精算課税制度を利用する場合、最初の贈与があった年のみ、通常の贈与税の申告に追加して書類の提出が必要です。具体的には、最初の贈与を受けた受贈者(子や孫)がその翌年2月1日から3月15日までの間に、贈与税の申告書とともに「相続時精算課税選択届出書」を管轄の税務署へ提出します(なお、提出には「受贈者と贈与者が親子または祖父母と孫であることを示す戸籍謄本」が必要です)。
この届出により相続時精算課税制度を利用することが税務署に登録され、翌年以降再び贈与をしたとしても、必要な手続きは通常の贈与税の申告のみとなります。
なお、年間110万円の基礎控除が利用できるので、贈与の額が年間110万円を超えない年については贈与税の申告は不要です。
まとめ
贈与税非課税制度の活用は、資産形成における重要な第一歩です。大阪市でも多くの方が住宅取得や結婚・子育て支援などを目的にこれらの制度を検討しています。
代表的な非課税制度として、配偶者控除(おしどり贈与)、住宅取得資金の贈与、結婚・子育て資金の一括贈与、特定障害者に対する特定贈与信託、相続時精算課税制度の5つが挙げられます。
それぞれの制度には非課税枠や利用条件が設けられており、誤った手続きや条件未達による課税リスクもあるため注意が必要です。具体的な適用例や失敗例を参考に、慎重に制度選択を行いましょう。まずは専門家に相談し、ご自身やご家族のライフプランに最適な制度を見極めることが大切です。

