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限定承認の「先買権」とは? 活用術や注意点を解説

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限定承認の「先買権」とは? 活用術や注意点を解説

限定承認の「先買権」とは? 活用術や注意点を解説

2026/08/25

「限定承認をしても家を残せる」といった話を聞いたことはありませんか?

厳密には費用がかかったり条件があったりと少し複雑なのですが、これは限定承認における「先買権の行使」という制度のことを指しています。

本記事では、限定承認の先買権がどのような権利なのか、活用術や利用時の注意点、手続きの流れをわかりやすく解説します。

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目次

    そもそも限定承認とは?

    ● 限定承認とは

    相続が起きたとき、相続人には、単純承認・相続放棄・限定承認という3つの選択肢があります。単純承認とは「通常の相続人として被相続人の権利義務の一切を引き継ぐこと」、相続放棄とは「相続人としての立場そのものを放棄すること」です。

    そして限定承認とは、被相続人(亡くなった方)の財産を受け継ぐ際に、プラスの財産の範囲でマイナスの財産を返済し、残りがあれば受け取ることができる制度です。相続財産をすべて把握できない場合や、負債が資産を上回るか不明な場合に活用されます。

    限定承認を選択すると、相続人は相続財産の範囲内でのみ債務を弁済する義務を負い、それを超える借金を自分の財産で返済する必要がなくなります。

    この制度は、相続人としての立場を一切放棄する相続放棄と異なり、プラスの財産が残る場合にはその分を受け取ることができる点が特徴です。たとえば、被相続人が不動産を所有していたが、借金の全容が不明というケースでは、限定承認を活用することで、相続人が余計な負担を負わずに済む可能性があります。具体的には、被相続人が1,000万円の現金と1,200万円の借金を残して他界した場合、限定承認をすれば、現金1,000万円で借金を返済すれば、残った200万円の負債は相続人には引き継がれません。

    ただし、限定承認は相続人全員で行わなければならないので、相続人が多いと選択が難しくなります。

    ● 限定承認を検討する場面

    限定承認を検討する場面は、主に「相続財産の全容が不明」「債務超過の可能性がある」「借金は整理したいが残したい財産がある」といった場面です。

    具体的には、財産調査を進めても借金の有無が曖昧な場合、相続人の中にどうしても相続したい資産(自宅など)がある場合には、限定承認の選択が現実的となります。

    反対に、明らかに債務が多い場合は、相続放棄の方が手続きが簡単でリスクも低減できます。

    ● 限定承認のメリット・注意点

    限定承認は相続放棄とは異なるメリットがあります。相続放棄は、相続人としての責任から完全に解放されるため、負債リスクを一切負わずに済みます。一方、限定承認は、プラスの財産を維持しつつ、負債の支払いもその範囲内に限定できる点が大きな利点です。

    このような限定承認のメリットは、特定の財産を相続したい場合や、負債の全容が不明でリスク回避を重視したい場合に発揮されます。

    そして限定承認を成功させるためには、いくつか重要な注意点を押さえておく必要があります。

    まず、相続が開始し、自分が相続人であることを知った日から3か月以内に家庭裁判所へ申述することが絶対条件です。相続放棄と同じく、この期限を過ぎると限定承認が認められなくなるため、早めの行動が求められます。どうしても遅れそうな場合には、早めに「相続の承認又は放棄の期間の伸長」という手続きをして、熟慮期間を延ばしておきましょう。

    また、限定承認には相続人全員の合意が必要であり、必要書類の収集や債権者への通知・公告など、通常よりも複雑な手続きが伴います。相続人が1人で行うことができる相続放棄と比べて、煩雑で時間を要する手続きなのです。

    限定承認の先買権についてさらに詳しく

    ● 限定承認における先買権とは

    限定承認が成立すると、相続財産は、相続債権者や受遺者への弁済に充てるため、原則として競売にかけてお金に換えることになります。しかし、競売にかけてしまうと、相続人にとって思い入れのある財産であっても、市場価格での落札を目指す第三者に買い取られ、他人の手に渡ってしまう可能性があります。相続人が住み続けたいと考えている実家であっても、例外ではありません。

    そこで法律は、相続人に先買権(さきがいけん)という権利を認めています。これは、家庭裁判所が選任した鑑定人による評価額に相当する金銭を支払うことで、競売を止め、その財産を相続人自身が取得できるようにする権利です。先買権を活用すれば、実家などの大切な財産を、適正な評価額を支払ったうえで、相続人の手元に残すことができます。

    ● 先買権を行使する方法

    先買権を行使するには、まず家庭裁判所に対して鑑定人の選任を申し立てる必要があります。選任された鑑定人が対象財産を評価し、その評価額が示されたら、相続人はその金額に相当する金銭を用意して支払うことで、競売を止め、当該財産を取得することができます。この一連の流れは、通常の不動産売買とは異なり、裁判所の関与のもとで進められる点に特色があります。

    鑑定人による評価を経ずに、相続人が独自に決めた金額で財産を取得することはできません。あくまで、裁判所が選任した第三者である鑑定人の評価額が基準となる点が、この制度の重要なポイントです。

    先買権を行使できるのは、必ずしも相続人全員である必要はなく、対象財産を取得したいと考える相続人が個別に行使することも可能です。もっとも、相続人が複数いる場合には、誰がどの財産について先買権を行使するのか、事前に相続人間で調整しておくことが、後のトラブルを避けるうえで重要になります。

    ● 鑑定は必ず必要?

    先買権を行使するためには、家庭裁判所が選任した鑑定人による評価が必須とされています。「だいたいこれくらいの価値だろう」といった相続人自身の見立てだけで先買権を行使することはできません。鑑定を経ることで、対象財産の適正な価格が客観的に定まり、他の相続債権者や受遺者にとっても公平な弁済が実現される仕組みになっています。

    不動産のように評価額の算定に専門知識を要する財産の場合、鑑定人には不動産鑑定士などの専門家が選任されるのが一般的です。鑑定には一定の時間と費用がかかるため、先買権の行使を検討している場合には、早めに家庭裁判所へ申立ての準備を進めることが望ましいでしょう。

    ● 鑑定結果に納得できなかったら?

    鑑定人が示した評価額に相続人が納得できない場合であっても、その評価額を覆すための不服申立ての制度は用意されていません。鑑定人の評価は、先買権行使にあたっての基準として、基本的に尊重されることになります。

    もっとも、先買権の行使はあくまで相続人の任意であり、評価額での取得を義務付けられているわけではありません。示された評価額に納得できない場合は、無理に先買権を行使する必要はなく、そのまま行使を見送ることも可能です。その場合、対象財産は先買権が行使されなかった財産として、通常どおり競売による換価の対象となります。

    ● 先買権は必ず認められる?

    先買権自体は、相続人に認められた法律上の権利ですが、実際に行使できるかどうかは、鑑定評価額に相当する金銭を用意できるかどうかにかかっています。評価額が高額になる場合、その資金を準備できなければ、結果的に先買権を行使することができません。

    また、すでに対象財産についての競売手続きが進行し、売却が完了してしまった後では、先買権を行使する余地はなくなります。先買権を活用したい場合には、早い段階で資金計画を立て、タイミングを逃さないようにすることが重要です。

    先買権を行使したいという意向があるのであれば、限定承認の申述を検討する段階から、その旨を早めに家庭裁判所や専門家に伝えておくことをおすすめします。手続きの進行状況を把握しながら、資金準備や鑑定の申立てのタイミングを計画的に進めることが、先買権を確実に行使するための鍵になります。

    先買権行使時の注意点

    ● 注意点1:鑑定費用・購入資金は相続人が負担する

    先買権を行使する際の鑑定費用や、財産を取得するための購入資金(評価額相当額)は、相続人自身が負担する必要があります。これらの費用を、限定承認された相続財産そのものから支出することはできません。相続財産はあくまで相続債権者への弁済に充てられるべきものであり、先買権を行使する相続人が、自己の固有財産からその代金を用意する必要がある、という点を正しく理解しておく必要があります。

    特に、対象財産が高額な不動産である場合には、相続人自身がまとまった資金を用意できるかどうかが、先買権を実際に行使できるかどうかの分かれ目になります。これらの費用は、鑑定費用だけで100万円単位になることもあるので、あらかじめ自己資金の状況を確認し、場合によっては金融機関からの借入れも視野に入れて、資金計画を立てておくことが望ましいでしょう。

    ● 注意点2:税務上の注意も必要

    限定承認をすると、税務上は、被相続人が相続開始時に相続財産を時価で譲渡したものとみなされ、含み益のある財産(値上がりした不動産など)については、被相続人に譲渡所得税が課税される場合があります(いわゆる「みなし譲渡課税」)。この税金は、相続人が被相続人に代わって準確定申告を行い、納付する必要があります。単純承認であれば生じないこの課税が、限定承認を選択したことによって新たに生じる可能性がある、という点は、意外と知られていない落とし穴です。

    先買権を行使して取得した財産についても、このみなし譲渡課税の計算対象に含まれます。想定外の税負担が生じることのないよう、限定承認や先買権の行使を検討する段階から、税理士などの専門家に相談し、税務上の影響を確認しておくことを強くおすすめします。

    みなし譲渡課税は、被相続人の準確定申告として、相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内に申告・納付する必要があります。限定承認の手続きと並行してこの申告準備を進める必要があるため、スケジュール管理の面でも注意が必要です。

    ● 注意点3:登記まで終えないと第三者に対抗できない

    先買権を行使して不動産を取得した場合であっても、その権利を第三者に主張するためには、名義変更登記(相続登記)を完了させる必要があります。登記を終えていない状態では、たとえ実質的に先買権を行使して財産を取得していたとしても、第三者に対して自分の権利を主張できないことがあります。先買権の行使が認められた後は、速やかに登記手続きまで完了させることが重要です。

    なお、令和6年4月1日からは、相続によって不動産を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請することが義務化されており、正当な理由なくこれを怠ると過料の対象となる可能性もあります。先買権によって取得した不動産についても、この義務の対象となるため、手続きを先延ばしにしないよう注意しましょう。

    先買権行使の流れ

    ● 先買権行使の流れ

    先買権を行使するまでの流れを大きくまとめると、以下のとおりです。

    1. 限定承認の申述
    2. 相続財産清算人の選任と債権者への公告
    3. 鑑定人選任の申立てと評価
    4. 評価額の支払いによる先買権の行使
    5. 登記手続きの完了

    先買権は限定承認が成立していることを前提とする権利であるため、まずはその前提として、限定承認の手続きを進める必要があります。これから、それぞれの段階を順に確認していきましょう。

    ● 限定承認の申述(先買権行使の前提)

    先買権は、あくまで限定承認が成立していることを前提とした権利です。まずは、相続人全員が共同で、熟慮期間内に家庭裁判所へ限定承認の申述を行う必要があります。この申述が受理されなければ、先買権を行使する場面自体が生じません。

    ここで改めて注意していただきたいのが、限定承認の申述は相続人全員が共同で行わなければならず、相続人の一人だけで申述することはできないという点です。先買権を使いたい相続人が一人だけ強く希望していたとしても、他の相続人が単純承認や相続放棄を望んでいる場合には、そもそも限定承認自体が成立せず、先買権を行使する前提が整いません。先買権の活用を考えている場合は、できるだけ早い段階で、他の相続人にもその意向を伝え、理解を得ておくことが重要です。

    申述にあたっては、相続財産の目録を作成し、被相続人のプラス・マイナス両方の財産をできる限り正確に把握しておく必要があります。この段階での財産調査が不十分だと、後の手続きに支障が出ることもあるため、丁寧に進めることが大切です。

    ● 相続財産清算人の選任と債権者への公告

    相続人が複数いる場合、家庭裁判所は相続人の中から相続財産清算人を選任します。選任された相続財産清算人(または相続人自身)は、限定承認をした旨と、一定期間内に請求の申出をすべき旨を、相続債権者や受遺者に対して公告・催告する手続きを行います。この公告期間を経て、弁済すべき債権者の範囲が明らかになります。

    この公告期間は、法律上一定の期間を下回ることができないとされており、この間に申出のあった債権者や、把握している債権者に対して、後の段階で弁済を行っていくことになります。公告を怠ると、後になって想定していなかった債権者が現れ、弁済に混乱が生じるおそれもあるため、確実に行う必要がある手続きです。この段階での対応が不十分だと、後になって先買権の行使を含む財産の清算全体に影響が及ぶこともあるため、専門家のサポートを受けながら進めることをおすすめします。

    ● 限定承認に必要な書類

    限定承認の申述に必要な主な書類は、申述書、被相続人の戸籍謄本、相続人全員の戸籍謄本、住民票、財産目録などです。大阪市では戸籍の広域交付制度の活用により、戸籍や住民票の取得が比較的容易ですが、漏れがないよう早めの準備が欠かせません。

    財産目録には、資産・負債の詳細を正確に記載する必要があります。不動産登記事項証明書、預貯金の残高証明書、借入金の契約書や請求書など、各種証明書類をもとにして作成しましょう。ただし、申述の期限を過ぎてしまうと申述自体ができなくなってしまうので、期限に間に合いそうにない場合は、わかる範囲で記載して、後から調査するようにしましょう。

    書類の準備は、相続人同士で役割分担をすることで効率的に進められます。専門家に依頼する場合も、事前に必要な情報を整理し、スムーズな手続き進行を目指しましょう。

    ● 鑑定人選任の申立てと評価

    弁済のために相続財産を換価する段階になり、先買権を行使したい財産がある場合には、家庭裁判所に鑑定人の選任を申し立てます。選任された鑑定人が対象財産を評価し、その評価額が先買権行使の基準となります。

    鑑定の申立ては、対象財産ごとに行う必要があり、複数の財産について先買権を行使したい場合には、それぞれについて手続きを進めることになります。鑑定には一定の時間がかかることも多いため、他の相続財産の換価手続きと並行して、計画的に進めていくことが求められます。

    ● 評価額の支払いによる先買権の行使

    鑑定人による評価額が示されたら、相続人はその金額に相当する金銭を用意し、これを支払うことで競売を止め、対象財産を取得します。取得後は、速やかに名義変更登記を行い、対抗要件を備えておく必要があります。

    支払った金銭は、相続財産清算人を通じて、相続債権者や受遺者への弁済に充てられることになります。先買権の行使によって、相続財産全体の清算がスムーズに進む一方、その代金の準備は相続人にとって決して小さくない負担であることも、あらためて認識しておく必要があります。

    なお、限定承認の申述にあたっては、申述書のほか、被相続人の出生から死亡までの戸籍(除籍)謄本、相続人全員の戸籍謄本、被相続人の住民票除票、財産目録など、多くの書類を準備する必要があります。相続放棄に比べて必要書類が多岐にわたる点も、限定承認の手続きが複雑とされる理由の一つです。

    また、費用の面では、収入印紙代や郵便切手代といった申述にかかる実費に加えて、官報公告のための費用(数万円程度)、鑑定を行う場合の鑑定費用などが発生します。先買権を行使する場合には、これらに加えて評価額相当額の資金も必要になるため、全体としてどの程度の費用がかかるのか、早い段階で見積もっておくことが大切です。

    なお、限定承認の手続き全体を通じて、収入印紙代、官報公告費用、鑑定費用など、さまざまな実費が発生します。これらの費用に加えて、先買権を行使する場合には評価額相当額も必要になるため、手続き全体でどの程度の費用がかかりそうか、早い段階で見通しを立てておくことが望ましいでしょう。

    まとめ

    限定承認における先買権は、相続財産を競売にかけることなく、家庭裁判所が選任した鑑定人の評価額を支払うことで、相続人が対象財産を取得できる制度です。実家などの思い入れのある財産を手元に残したい場合に有効な手段となる一方、鑑定費用や購入資金は相続人自身が負担する必要があり、みなし譲渡課税をはじめとする税務上の影響にも注意が求められます。

    限定承認そのものの利用件数が多くないこともあり、先買権について正確な知識を持つ機会は限られています。だからこそ、実際に活用を検討する際には、制度の仕組みと注意点をあらかじめしっかりと理解しておくことが、後悔のない選択につながります。

    万一手続きに不備があると、思わぬ債務を負担したり、財産が適切に分配されなかったりするリスクが生じます。実務では、専門家のサポートを受けながら、段階的に手続きを進めることが成功への近道です。

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