相続手続きの最中に相続人が亡くなるとどうなる? 対処法や数次相続についての詳細を解説
2025/09/02
相続手続きの最中に相続人が突然亡くなった場合、どのような混乱や課題が生じるのでしょうか?
最初に発生した相続(一次相続)の遺産分割協議が終わらないうちに、さらに次の相続(二次相続)が発生する「数次相続」のケースは、相続人の高齢化の影響もあり、増えています。数次相続では相続人確定や協議範囲の見極めなどが困難となるため、事態の解決には、実務上のポイントを押さえながら状況を整理していかなければなりません。
本記事では数次相続の仕組みや手続きの流れ、具体的なステップごとの対処法を体系的に解説します。
目次
数次相続とは
● 数次相続とは
相続手続きの途中で相続人が亡くなると、元の相続(一次相続)に加え、亡くなった相続人の財産についても新たな相続(二次相続)が発生します。このような状態を数次相続と呼びます。大阪市では、財産関係や相続関係が複雑であったり、相続人同士で話し合いができない状況であったりして、相続手続きに時間がかかることも多く、たくさんのご家庭が数次相続に直面しています。
数次相続では、相続人の範囲が広がり、ただでさえ大変な相続手続きの必要書類や手続きの流れがより一層複雑化します。
たとえば、一次相続の遺産分割協議が終わる前に相続人が亡くなった場合は、協議の参加者となる相続人や協議の対象となる財産の範囲を再度確認し、2つの相続全体を見通した遺産分割協議を進める必要があります。その前提となる相続関係説明図の作成や戸籍の収集についても、複数世代にわたるため、手間と時間がかかるのです。
具体例を挙げて考えてみましょう。
母親Aが死亡し、その子どもである長男B、長女Cの2人が相続人であるとします。Aの遺産分割協議をしようとしていたある日、Bが死亡し、その相続人はBの妻Dと子どもEでした。このようなケースでは、Aの遺産分割協議は、C・D・Eで行うことになります。なお、Aの相続についての相続分は、Cが2分の1、D・Eが各4分の1ずつです。さらに、DとEは、B名義の財産についても相続手続きをしなければなりません。
このように複数の相続手続きが発生するため、関係者の数が増え、手続きが複雑になってしまいます。
実際には、相続放棄の可否や遺留分の確認など、個々の権利関係も慎重に整理しなければなりません。手続きを円滑に進めるためには、早めに専門家へ相談し、必要な情報や書類を漏れなく準備することが重要です。
● 数次相続が起こりやすい事例
数次相続が起こりやすいケースとしては、夫婦が連続して亡くなるケースや、兄弟姉妹が相続人となり数次相続が起こるケースが挙げられます。
夫婦のどちらか一方が亡くなると、もう一方も同世代であることが多いため、数次相続が起こりやすくなります。また同様に、被相続人に子どもがおらず、兄弟姉妹が相続人となるようなケースでも、相続人が同世代であるため、数次相続が起こりやすいです。
夫婦間の数次相続であれば相続人に大きな変化はないことが通常ですが、兄弟姉妹間の数次相続であれば、亡くなった相続人の子(一次相続の被相続人の甥・姪)が新たに相続人となるため、相続人が増える傾向にあります。
● 数次相続での戸籍調査
数次相続では、相続人を正確に確定するために、通常の相続で必要となる戸籍(被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本および各相続人の戸籍謄抄本)に加え、新たに亡くなった相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本と、新たに相続人となった人の戸籍謄抄本が必要となります。複数世代分の書類が必要となるため、収集費用や郵便代が追加で必要となり、時間もかかります。
また、相続関係全体を把握するために、一次相続と二次相続を合わせた全体の相続関係説明図を作成することをおすすめします。相続関係説明図には、戸籍の情報をもとに家族関係を正確に整理することが求められます。たとえば、一次相続人のうち誰が亡くなり、どのタイミングで数次相続が発生したのかを明確に図示することで、法務局や金融機関の手続きをスムーズに進めることができます。
戸籍の取り忘れや記載ミスがあると、登記や名義変更が遅れることが多いため、事前に必要書類のリストを作成し、漏れなく収集することが失敗防止のカギとなります。
● 数次相続での遺産分割協議
数次相続における遺産分割協議は、すべての相続人が参加し、全員の同意が必要となります。一次相続の遺産分割協議が未了の状態で相続人が亡くなった場合、その相続分は新たな相続人に承継されます。大阪市のような都市部では、相続人が遠方に居住しているケースも多く、数次相続が発生した場合の連絡や合意形成に時間がかかることもあります。
協議を進める際は、まず新たな戸籍を集めて相続人を確定し、各人の法定相続分や遺産分割の希望を整理します。その上で、全員で合意のうえ遺産分割協議書を作成し、全員の署名・押印を取得する流れとなります。失敗例として、相続人の一部が連絡不能となり協議が長期化したり、権利関係の誤認でトラブルに発展することもあるため、事前準備と早期の情報共有が不可欠です。
相続放棄や遺留分請求の意向がある場合も、早めに意思確認を行い、必要に応じて専門家を交えて協議を進めることで、手続きの停滞を防ぐことができます。
● 数次相続と税金
数次相続が発生した場合、相続税や登録免許税の計算も複雑になります。
相続税は、各相続発生時点の財産評価額や法定相続人の数によって課税額が変動します。大阪市の都市部では不動産評価額が高い傾向にあるため、課税対象となるケースが多い点にも注意が必要です。
登録免許税は、不動産の名義変更時に必要となる税金で、固定資産評価額に基づき一定割合で算出されます。数次相続では、一次相続分と二次相続分それぞれについて登記申請が必要となる場合があり、その都度課税されるため、事前に必要経費を見積もっておくことが大切です。
相続税申告や登録免許税の計算に自信がない場合は、税理士や司法書士に相談することで、ミスや過誤を防ぎ、適正な手続きを進めることができます。税務署や法務局の公式サイトも参考にしながら、最新の税制や申請方法を確認することをおすすめします。
数次相続が起きた場合の手続きの流れとポイント
● 最初にすべきこと
数次相続が発生した場合、まず最優先で取り組むべきは「新たな相続人の確定」です。一次相続の段階で集めていた戸籍や住民票に加えて、亡くなった相続人の戸籍をさかのぼって取得し、新たな相続人を速やかに調査する必要があります。
戸籍調査を怠ると、相続人漏れによる手続きのやり直しや、遺産分割協議書の無効リスクが高まります。戸籍調査の段階でミスなく確実に相続人を把握できるよう、専門家のアドバイスを受けることをおすすめします。
● 新たな相続人を含めた遺産分割協議
新たな相続人が確定した後は、未了の遺産分割協議に新しい相続人を加えて協議を再開します。協議の範囲は、一次相続で未分割の財産全体となり、数次相続人も含めた合意が必要です。
しかし、一次相続ですでに協議を終えている財産であっても、実際に名義変更をするには遺産分割協議書に署名・捺印をし、印鑑証明書の取得まで終えている必要があります。
つまり、たとえ口頭での遺産分割が終わっていたとしても、その後、遺産分割協議書を作成する前に相続人が亡くなれば、新たに相続人となった人を含めた全相続人で遺産分割協議書を作成しなければなりません。
こうした事態を予防するには、遺産分割協議がまとまったら速やかにその内容を遺産分割協議書にまとめるようにしましょう。
● 数次相続での遺産分割協議書のポイント
数次相続が起きた後に遺産分割協議書を作成する場合、新たに作成する遺産分割協議書については、以下の事項を明確に記載するようにしましょう。
- 亡くなった順番
- 対象となる財産
- 各相続人の立場(元の相続における相続人なのか、新たに相続人となった人なのか)
そうすることで、名義変更などの手続きがスムーズに進みますし、後の争いの予防にも繋がります。
また、「元の相続での被相続人名義の財産」と「新たな相続での被相続人名義の財産」については、それぞれ別の遺産分割協議書を作成するようにしてください。一枚にまとめることも法律上不可能ではありませんが、内容が複雑となるうえ、金融機関等での手続時にも混乱を招きかねません。
数次相続での遺産分割協議書は複雑な部分もあるので、記載内容に不安がある場合には、司法書士や弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。
● 相続財産の名義変更を進める
必要な戸籍が集め終わり、遺産分割協議書が完成したら、相続財産の名義変更を進めていきます。
このとき、二次相続が起こる前にすでに名義変更が終わっている財産については特段何もする必要がありません。終わっていない財産についてのみ、二次相続発生後に集めた戸籍や作成した関係図・遺産分割協議書等を用いて、新たな所有者へと名義変更をしていきます。
遺産分割協議が進まない場合の対処法
● 数次相続の難しさ
数次相続が発生すると、遺産分割協議が一度に複数世代・複数家庭にまたがり、合意形成が難航しやすくなります。特に大阪市のような都市部では、相続人が遠方に居住していたり、連絡が取りづらかったりするケースが多く、そのようなケースでは協議の停滞が長期化しやすいです。
相続手続き中に意見が分かれる理由には、遺産分割割合の誤解や特定の財産への希望、相続が起きた背景への認識違いが重なることが挙げられます。特に数次相続では相続人同士の関係性が遠くなりがちで、価値観や希望の食い違いが顕著になりやすいです。
● 疎遠な相続人との遺産分割協議の進め方
疎遠な相続人との遺産分割が滞った場合の対応策としては、相続人間での話し合いを丁寧に重ね、各自の希望や事情を可視化することが第一歩です。そのうえで、専門家による遺産評価や分割案の提示を受けることで、客観的な判断材料を持ち寄ることができます。
相続人の連絡先を知る方法としては、住民票を調べる方法が挙げられます。相続人同士であれば住民票を取得することが可能なので、住所を調べて手紙を送るなどの手段で連絡を取りましょう。
また、専門家(司法書士や弁護士)をファシリテーターとして活用することで、第三者的立場から論点整理や意見調整を図ることができます。直接連絡することに抵抗がある場合、ぜひ専門家を活用してください。
それでも折り合いがつかない場合は、家庭裁判所の調停や審判を利用することが推奨されます。
個人間で直接話し合わずに、専門家を通じた連絡や家庭裁判所での調停を活用したことで、感情的な対立が緩和されスムーズに分割協議がまとまった成功例も少なくありません。無理に合意を急ぐのではなく、冷静なプロセスを踏むことが重要です。
● 実務上のポイント
実務上のポイントとして、まず相続人の範囲を正確に確定し、戸籍や除籍謄本をしっかり収集することが欠かせません。また、協議書には分割内容だけでなく、各相続人の現住所や押印の印鑑証明書を添付する必要があります。大阪市内での手続きでは、広域交付制度を活用して戸籍を効率的に取得することも手間の軽減につながります。
失敗例として、相続人の一部が遺産分割から漏れていて相続手続きがやり直しになったケースや、署名・押印不備で法務局や銀行から補正を求められた事例もあります。確実な手続きのためには、司法書士などの専門家による事前チェックを受けることが安心です。
実際の現場では、戸籍収集の遅れや必要書類の不備が協議の停滞要因になることも多いため、早めの書類準備と関係者への情報共有が打開策となります。
また、協議が行き詰まった場合には、家庭裁判所の調停制度を活用する選択肢もあります。調停は中立的な第三者が間に入り、相続人同士の意見対立を整理してくれるため、合意形成が期待できます。現実には「全員の合意が得られず手続きが長期化した」「遺産分割協議書に不備があって財産の名義変更ができない」といった失敗例も多く、早期相談と段取りの明確化が数次相続の協議停滞を防ぐ鍵となります。
● 数次相続の注意点
数次相続の過程では、相続人同士の関係が希薄になりやすいことから、新たに相続人となった方の中に、相続放棄を検討する方が出ることも少なくありません。
相続放棄は、相続人としての立場を一切放棄する手続きであり、うまく活用することで、関わりたくない相続からの脱退や遺産分割協議の円滑化に寄与します。相続放棄を選択する際は、放棄期限(原則3か月以内)や、放棄した場合の次順位相続人への影響も必ず確認しましょう。
また、相続税申告時には基礎控除や配偶者控除、小規模宅地等の特例など、控除制度の活用で税負担を軽減できる場合があります。特に数次相続では、複数回の相続が重なることで相続税の計算が複雑になりやすいため、専門家と連携して控除適用の有無を事前確認しましょう。
放棄手続きの遅れや控除の適用漏れによるトラブルを防ぐためにも、早めの検討と準備が大切です。
● 失敗しないために
数次相続が発生した際、協議範囲と相続人確定の正確性は極めて重要です。誤った相続人認定や遺産範囲の誤解は、協議の無効や後日のトラブルにつながるため、慎重な確認が求められます。
まず、戸籍や除籍謄本、相続関係説明図を用いて、すべての法定相続人を網羅的に洗い出しましょう。大阪市の場合、広域交付制度やサービスカウンターを利用することで、必要書類の取得が比較的スムーズに進みます。協議範囲は、未分割の財産や新たに発生した相続分を明確に区分し、全員が理解できる形で資料化することが肝要です。
失敗例として、相続人の一部を見落とし、協議のやり直しや法的紛争に発展したケースもあります。確実な相続人確定と協議範囲の整理は、数次相続のスムーズな解決に欠かせないステップなのです。
数次相続におけるその他の注意点
● 相続放棄の期限
数次相続においては、新たに相続人となった人について、相続放棄の意思がないかを確認することも重要です。
相続放棄とは、相続人としての地位を一切放棄する手続きであり、実施するには、相続人となったことを知った日から3か月以内に家庭裁判所で手続きをしなければなりません。
この期限をすぎてしまうと相続放棄ができず、遺産分割協議への参加が求められたり、被相続人に負債がある場合にはこれを負担しなければならない事態に陥ったりもするため、新たに相続人となった人がいる場合には、改めて相続放棄の意思がないかを確認しておくことをおすすめします。
● 遺留分の侵害
数次相続では、「誰が・どの相続について・どれだけの遺留分を主張できるか」という点も複雑になりがちです。
遺留分とは、兄弟姉妹以外の相続人が主張できる最低限の相続分です。
数次相続の場面では、「一次相続については遺留分はないが、二次相続について遺留分を主張したい。とはいえ、一次相続の遺産分割が終わらない限り、二次相続の相続財産の評価額を計算できず、遺留分が請求できない」という事態が起こり得ます。遺留分の請求には時効もあるため、このような事態においては速やかな相続手続きが求められます。
● 数次相続と相続税申告
数次相続が発生すると、相続税の申告や納税にも注意が必要です。特に、一次相続と二次相続が近接して発生した場合、相次相続控除という制度を活用できる可能性があります。これは、最初の相続で取得した財産が次の相続で再び課税対象となる場合、一定額を控除できる仕組みです。
相次相続控除の適用には、最初の相続発生日から10年以内に次の相続が発生していることなど一定の条件があります。控除の適用漏れによって損をすることのないよう、税理士や専門家への相談を早めに行うことをおすすめします。
● 数次相続と相続登記申請
数次相続が発生した場合、登記申請時には一次相続と二次相続の両方の相続関係を正確に証明する必要があります。複数世代にわたる戸籍の収集や相続関係説明図の作成が求められるため、不備が生じやすく、登記官からの指摘が入ることも少なくありません。
注意点として、相続人の一部が相続放棄している場合や、遺産分割協議が未了の場合、登記手続きがさらに複雑になることがあります。さらに、二次相続の発生によって新たに相続人となった方が未成年の場合、特別代理人の選任が必要となるケースもあるため、新たに相続人となる方の年齢の確認も重要です。
また、登録免許税の算定や必要書類の不備による登記申請の差し戻しリスクもあります。数次相続の登記申請では、登記の申請件数が増えることもあるため、登録免許税の計算方法も複雑になりがちなのです。一方で、必要書類については、複数の申請で書類を共用できるため、手続きが効率化されることもあります。
司法書士のアドバイスを受け、極力簡素な手続きをすることが、相続登記をスムーズに進めるポイントです。
まとめ
数次相続は、一次相続の手続き途中で相続人が亡くなった場合に、さらにその相続人が新たに相続人となる現象です。この相続人の範囲は、場合によっては孫や甥姪など、複数世代に広がることもあります。
特に大阪市のような都市部では、家族構成が複雑なケースや転居による戸籍の分散が多いため、相続人の範囲の特定に時間がかかる傾向があります。具体的には、数次相続が発生すると相続関係説明図の作成や遺産分割協議書の見直しが必要となり、手続きの範囲が拡大します。どこまでが相続人に該当するかは、民法の規定や戸籍の記載内容をもとに個別に判断されるため、早めの調査と専門家への相談が不可欠です。
遺産分割協議書の不備は不動産の名義変更や登録免許税の申請に支障をきたすため、数次相続が発生して協議が複雑になったような場合には、専門家によるチェックを受けることをおすすめします。


