家族は後見人になれる? 成年後見人選任の手続きと流れ
2025/09/18
成年後見手続きで家族が後見人に選ばれるには、どのような流れや基準があるのでしょうか?
高齢化に伴って高齢の親の財産管理に悩むケースが増えるなか、成年後見人の選任までのプロセスや注意点といった、成年後見制度の具体的内容への関心が高まっています。制度の基礎や後見人の役割、家庭裁判所が選任にあたって家族と専門職どちらを選択するかといった疑問もあるでしょう。
本記事では、成年後見人がどのように選ばれるのか、選任までの大まかな流れをわかりやすく解説します。
目次
そもそも成年後見制度とは
● 成年後見制度の基本
成年後見制度は、認知症や知的障がい、精神障がい等により判断能力が十分でない方の権利や財産を守るための制度です。判断能力が低下してしまうと、財産の管理ができなくなったり、遺産分割や売買契約、施設への入居契約といった様々な契約行為ができなくなったりと、日常生活に支障が出ることがあります。そんな方の財産管理や契約行為を代行し、本人が円滑な日常生活を送れるようサポートするのが成年後見制度です。
後見には「後見」「保佐」「補助」という3つの類型があり、本人の判断能力の程度に応じて選択されます。それぞれの類型で本人を支える役割に就くのが「成年後見人」「保佐人」「補助人」であり、成年後見人が最も強い権限をもちます。
医師の診断をもとにどの類型で申し立てるかを決め、本人の状況や支援の必要性等を総合的に考慮したうえで、家庭裁判所が類型を決定します。たとえば、判断能力がほとんどない場合は「後見」、一部判断ができる場合は「保佐」や「補助」が選択されます。
※ 以下では、特段説明のない限り後見類型が選択された前提で解説します。
● 後見制度の特徴
この制度の大きな特徴は、家庭裁判所が本人の状況に応じて成年後見人や保佐人、補助人を選任し、公的な監督のもとで支援が行われる点です。
成年後見人は本人の財産管理と身上監護を行い、その業務を定期的に家庭裁判所へ報告します。また、本人名義の不動産の売却といった重要な財産の処分を検討するときには、家庭裁判所へ事前に報告し、許可を得ます。成年後見人は、家庭裁判所の監視を受けながら、本人のための業務を行うのです。
成年後見人としては、家族が選ばれることもありますが、本人の利益保護という観点から、家庭裁判所の判断によって司法書士や弁護士などの専門職が選任されることも多いです。誰が後見人となるかは、本人の状況や家族の事情によって総合的に判断されるのです。
● 成年後見人の役割
成年後見人は、本人の財産管理や契約手続き、生活上の重要な判断を、代理・支援する役割を担います。成年後見人には家族が選ばれる場合と、弁護士や司法書士などの専門職が選ばれる場合があります。いずれの場合も、成年後見人には本人の利益を最優先に考え、不正や怠慢がないよう家庭裁判所による監督が行われます。
そんな成年後見人の主な業務は、財産管理と身上監護の2つに大別されます。
財産管理とは、預貯金や株式、不動産といった各種財産を管理し、本人の家計を管理することです。判断能力が低下している本人には、適切な財産管理を期待することができません。そこで、法定代理人である成年後見人が、本人に代わって財産管理を行います。成年後見人は財産管理行為を通して、本人の財産を安全に保全し、維持・管理しなければならないのです。
そして身上監護とは、本人が適切な介護・医療を受けられるよう気を配り、手配することです。具体的には介護や医療、施設入所等に関する契約の締結、介護保険等の行政サービスを受けるための手続き、居住場所の選定や居住に関する契約の締結等を行います。このように、成年後見人は、場合によっては本人の人権を制限しかねない強大な権限ももっているのです。
● 成年後見人になれる人の資格
誰が成年後見人となるかは家庭裁判所が決定しますが、前提条件として、以下のような欠格事由に該当する場合には、成年後見人になれません。
- 未成年者
- 過去に成年後見人等を解任された者
- 破産者で復権していない人
- 本人に対して訴訟をした人
- 行方不明者
この条件に当てはまらないことを前提として、申立て時に候補者として指定された人や、家庭裁判所が管理している専門家(司法書士、弁護士等)のリストのなかから、家庭裁判所が成年後見人を選任します。選任時には、本人の生活状況や今後必要となる後見人の業務等が総合的に判断されます。
成年後見人の選任までの流れ
● 誰が成年後見人になる?
成年後見人には、本人の親族のほか、司法書士や弁護士といった専門家が選ばれます。
何も希望しなければ専門家が選ばれることがほとんどですが、どのような場合に親族が選ばれるかというと、成年後見制度の開始申立時に「候補者」を指定した場合です。
成年後見制度を利用するために家庭裁判所に提出する申立書には、「この人を成年後見人にしてください」と候補者を指定する欄があり、この部分に親族の名前を書くことができます。ただし、誰を成年後見人にするのかを判断するのは家庭裁判所であり、親族を候補者としても、希望が叶うとは限りません。特に、財産が多額な場合や親族間に争いがある場合など、本人を保護するために必要があるケースでは、専門家が後見人となることが多いです。
● 候補者として審査されるポイント
家庭裁判所が成年後見人を選任する際は、本人の利益保護を最優先に考え、親族・家族が必ずしも優先されるわけではありません。
家庭裁判所は、候補者の適格性、過去のトラブルの有無、本人との関係性、財産管理能力等を総合的に審査します。また、親族間で意見が対立している場合や、候補者に不適切な行為歴がある場合には、たとえ家族であっても選任されないことがあります。
親族や本人への意見調査もされるため、事前に家族内で合意形成を図ることが重要です。特に、本人の財産が多額の場合や複雑な資産管理が必要な場合は、専門職後見人が選ばれるケースも多く見られます。
● 家族が成年後見人になるための基本
家族が成年後見人に選ばれるかどうか、明確に定められた基準はありませんが、家庭裁判所が考慮する一定の目安や判断要素はあります。
家庭裁判所は、本人の利益を最優先に考え、家族間でのトラブルや不正の恐れがないかを重視します。たとえば、親族間で意見の対立がないことや、候補者自身に破産歴や犯罪歴がないことも審査対象となります。審査時には、本人や候補者、その他の親族、本人の医療や介護の関係者との面談や事情の聴き取りが行われます。
家族が後見人に選ばれやすくするには、本人との信頼関係や生活支援の実績、後見人としての責任感を面談時にアピールすることがポイントです。どのような場合に家族が後見人となれるか、ご自身のケースでは後見人に選ばれるかどうか、不安な場合には事前に家庭裁判所の後見センターや司法書士等の専門家への事前相談をおすすめします。
● 選任されるための下準備
成年後見制度の利用を検討する際、家族が後見人として選ばれるためには、事前準備が非常に重要です。家庭裁判所への申立時の書類を通じて、本人の判断能力や生活状況、親族間の意見調整の有無、本人と候補者の関係等を丁寧かつ具体的に説明しましょう。このような説明により、家庭裁判所から「家族後見人が適切」と評価される確率が高まります。
特に、本人の財産状況や医療・介護のニーズを整理し、家族内で後見人候補者の役割分担や他の親族の同意書の取得を進めておくことが肝要です。家庭裁判所では、申立書類の不備や親族間の意見対立が選任を遅らせる要因となるため、事前に成年後見センターや専門家への相談を活用して、疑問点を解消しておくことも有効です。
家族が後見人になるには
● 家族が後見人になるには
家族が成年後見人の適任性を示すには、本人との信頼関係や日常的なサポート実績を具体的にアピールすることが大切です。たとえば、本人の生活費管理や通院介助、福祉施設との連携実績などを事情説明書や面談時に明確に伝えましょう。
また、他の親族からの同意書を添付し、親族間で後見人選任について合意している点を強調することも有効です。家庭裁判所は、家族の誠実性や今後の支援体制も重視するため、継続的なサポートが可能であること、本人の意思を尊重した行動ができることを具体例とともに示すことが求められます。
● 後見人選任までの一般的な流れ
成年後見人が選任されるまでの一般的な流れは、まず申立ての準備から始まります。家族や関係者が必要書類を集め、本人の医師による診断書や財産目録、親族関係図などを整えます。次に、家庭裁判所への申立てを行い、書類の提出と申立て費用の納付が必要です。
申立て後は、家庭裁判所による調査・審理が行われます。家庭裁判所の調査官が本人や申立人、後見人候補者への面談を実施し、本人の意思や家族の希望、申立ての動機などを丁寧に確認します。最終的には、裁判所が本人の利益や家族関係、後見人候補者の適格性を総合的に判断し、後見開始の審判を下します。審判後、後見人としての業務が正式に始まります。
大阪家庭裁判所の公式サイトや後見センターでは、必要書類のダウンロードや相談窓口の案内も行われているため、事前に情報収集をすることが円滑な手続きのポイントです。
● 家族が後見人となるための重要書類
家庭裁判所へ成年後見申立てを行う際、家族が後見人となることを希望する場合は「後見人等候補者事情説明書」の提出が必要となります。
この書類は、候補者の氏名や住所、職業といった基本情報のほか、本人や親族との関係性、なぜ後見人にふさわしいのかの説明、これまでの支援の経緯などを具体的に記載する重要な役割を担います。
事情説明書が充実していると、裁判所側も家族の適任性を判断しやすくなり、選任の後押しとなります。記載漏れや曖昧な表現があると、調査が長引いたり専門職後見人が選ばれる可能性もあるため、正確で具体的な内容作成が重要です。
● 事情説明書を提出しても後見人になれないことも
実際には、家族が後見人になりたい場合でも、家庭裁判所が本人の福祉や財産管理の観点から適格性を総合的に判断します。
たとえば、家族に本人の財産管理能力や法的知識が十分でない場合や、親族間で意見の対立がある場合には、家族以外の専門職後見人が選ばれることも少なくありません。このように、家族が優先されるとは言い切れない現実があるため、事前に制度の仕組みを理解しておくことが大切です。
また、面談時には、本人の生活状況や家族の支援体制をわかりやすく説明し、信頼性や誠実な支援意欲を伝えることが選任のポイントとなります。家庭裁判所への申立て前に、成年後見センターの相談窓口や専門家への相談を活用し、裁判所がチェックするポイントを把握しておくと安心です。
親族が後見人になれないケースとは
● 家庭裁判所が重視するポイント
家庭裁判所が後見人を選任する際には、本人の意思や福祉を最優先に考慮します。候補者がいる場合に特に重視されるのは、候補者の適格性、本人との関係性、過去の財産管理経験、そして親族間の同意状況です。家庭裁判所では、事前に提出する書類や面談内容からこれらの要素を総合的にチェックします。
たとえば、候補者が本人の生活支援や財産管理を適切に行えるかどうか、過去に不正行為やトラブルがなかったか、また親族間の協力体制が整っているかが重要な判断材料となります。家庭裁判所は、公平性を保つために第三者の専門職を後見人とする場合もあるため、家族で後見人を希望する際は、信頼性や協調性をアピールすることが選任につながります。
● 親族間の合意の重要性
成年後見人の選任手続きでは、親族内で意見が一致していることが非常に重要です。家庭裁判所は、親族間の合意が取れていない場合、将来的なトラブルや後見人による不適切な運用を懸念し、選任を見送ることもあります。特に大阪市のように都市部では親族が複数いるケースも多く、事前の話し合いが欠かせません。
親族間で後見人候補者に対する反対意見がある場合や、財産分与に関する意見の食い違いが見られる場合、家庭裁判所は公平性を保つため第三者の専門職後見人を選ぶ傾向があります。そのため、申立て前に親族全員が納得できる話し合いを行い、同意書を用意するなどの準備が重要となります。
● 成年後見人になることの責任
家族として成年後見人になると、様々な重い責任が生じます。
まず、家族が後見人になった場合でも、家庭裁判所への定期的な報告義務が発生し、財産管理や生活支援に関する責任が重くなることを理解しておく必要があります。
また、家族が後見人となる場合でも、本人や他の親族から不信感を持たれないよう、透明性を持って後見事務を行うことが求められます。たとえば、財産の使途や生活費の管理について明細を残し、必要に応じて家庭裁判所へ報告できる体制を整えておくと安心です。
これらのポイントを押さえることで、家族ならではの信頼関係を活かしつつ、適切な後見活動を行うことができます。
● 候補者が後見人になることが難しい場合
家族が後見人として選任されることが難しい場合、司法書士や弁護士などの専門職後見人が選ばれることがあります。大阪市では、本人の財産が多額で複雑な場合や、親族間に意見の対立がある場合、または家族の適格性に疑問がある場合に専門職が選任されるケースが多くなっています。
また、専門職後見人は、法律や財産管理に関する知識・経験が豊富であり、第三者として中立的に後見事務を遂行できる点が評価されています。特に、家庭裁判所が本人の利益保護を優先したい場合や、親族以外の客観的な判断が求められる場合に専門職後見人の選任が行われます。
成年後見人が選ばれるまでの流れ
● 申立ての準備
成年後見制度を利用するにはまず、「後見・保佐・補助開始の審判の申立て」という手続きを、本人の住所地を管轄する家庭裁判所に対して行います。
この申立てを行う際には、本人の戸籍謄本や住民票、診断書、親族関係図、財産目録、収支予定表等、必要な書類を正確に揃えることが重要です。これらは本人の判断能力や財産状況、親族構成を示すために不可欠であり、不備があると手続きが遅れる原因になります。
これらの必要書類のリストや各種書類の書式・記載例については、家庭裁判所の公式サイトで確認できます。公式サイトを利用することで、最新の書式や注意事項を反映した正確な申立書類を準備でき、書類不備による手続き遅延を防ぐことが可能です。
● 必要書類の集め方
後見開始の申立てにはさまざまな必要書類がありますが、特に重要な書類が医師の診断書です。診断書は、基本的に、本人の主治医に書いてもらいます。この診断書は専用の書式である必要がありますが、取得までに時間を要することが多いので、最優先で準備するようにしましょう。
その他、必要な書類としては、戸籍や住民票、本人の生活状況・財産や収支状況がわかる客観的な資料、親族の同意書、本人が所有する不動産の登記事項証明書などが挙げられます。必要な書類のチェックリストは家庭裁判所の公式サイトや後見センターで入手できるため、最新情報を確認することがミス防止につながります。
実際の現場では、書類の不備や記載漏れで再提出を求められるケースも多くあります。特に財産目録や収支予定表の内容は裁判所が後見人選任の判断材料とするため、事実に基づき正確に記載することが大切です。書類準備に不安がある場合は、司法書士や成年後見センターに早めに相談するのが安心です。
● 申立書の提出
書類が完成したら、準備した資料や印紙、郵便切手等とあわせて家庭裁判所へ提出します。提出方法は書類一式を窓口に持っていくほか、郵便でも構いません。
ここで注意点として、一度申立てが受理されると、自由に取り下げることはできなくなります。また、申立てにかかる費用は申立人の負担になります。本人の財産から支出することはできませんので、注意が必要です。
● 家庭裁判所による調査・審理
家庭裁判所が申立書類のチェックを終えると、家庭裁判所から、本人や親族との面談の日時を調整する連絡がきます。この面談では本人の生活の状況や判断能力が調査されるほか、本人や親族の成年後見制度の利用に対する意見等も確認されます。候補者が指定されている場合には、候補者の面談等の調査も行われます。
その後、申立書類や面談結果をもとに、「成年後見制度を開始させるか否か」「開始させるとしたら誰を成年後見人にするか」「成年後見監督人をつけるか否か」等の判断が行われます。
家庭裁判所での審査が終わると「後見開始の審判」がなされ、そのなかで誰が後見人となるか、監督人はいるか等の事項が決定されます。その後は後見人が財産の調査や管理といった業務を開始します。
成年後見人は、このような流れで選任されます。この手続きは、スムーズに進めばおおむね1~2か月程度、親族間で対立があるなど、論点が多い場合には半年程度の時間がかかることもあります。
● 申立ての失敗事例
成年後見申立ての現場では、書類の記載漏れや必要書類の不足、親族間の同意不足から、後見人の選任までに時間がかかることも少なくありません。
よくある失敗例としては、診断書の有効期限切れ(発行から3か月以内)や、本人の財産状況を正確に把握していないまま申立てを進めてしまうことが挙げられます。また、親族間で意見がまとまっていない場合、家庭裁判所が専門職後見人を選任することもあるため、申立て前の話し合いと同意書の準備が重要です。
これらの対策としては、家庭裁判所の公式サイトで最新の書式を確認することや、わからない点は早めに成年後見センターや司法書士に相談することが挙げられます。トラブル防止のためにも、準備段階からプロのアドバイスを受けることが成功のポイントです。
まとめ
成年後見人の選任において、家族と専門職のいずれが選ばれるかは、本人や家族の事情、後見事務の内容によって異なります。家族が後見人となる場合、本人の生活状況や価値観を理解しやすい点がメリットですが、親族間の対立や財産管理の複雑性が問題となることもあります。
一方、司法書士や弁護士等の専門職が選ばれる場合は、法律や財産管理の専門知識を活かした公正で適切な事務遂行が期待できます。
家庭裁判所では、本人の利益を最優先に、家族の希望や専門職の必要性を総合的に判断し、最適な後見人を選びます。家族が後見人を希望する際には、親族全員の同意や申立時の誠実な対応が重要な判断材料となります。


