遺留分対策としてできることは? 生前贈与や遺言を活用した予防術
2026/05/19
遺留分の請求による相続トラブルを未然に防ぎたいと感じたことはありませんか?
相続では、遺言の内容や生前贈与の方法次第で家族間の関係が大きく左右されることがあります。そのようなすれ違いや相続財産の偏りによって、遺留分を主張する・主張されるといった事態も起こり得るでしょう。
本記事では遺留分に配慮した遺言の書き方から、生前贈与、家庭裁判所への遺留分放棄まで、様々な遺留分対策を紹介し、円滑な財産承継を実現するための方法を紹介します。
目次
そもそも遺留分とは?
● 遺留分とは
相続における遺留分とは、兄弟姉妹を除く法定相続人に最低限保障される財産取得分を指します。たとえば、遺言書によって全財産が特定の相続人に遺贈された場合でも、他の法定相続人には遺留分として一定割合の財産を請求する権利が残されます。
この遺留分は、相続人間の公平性や生活保障を目的に民法で定められており、特に相続人が知らない遺言書が残されていた場合や一部の相続人に多額の生前贈与がされていた場合などに、遺留分が問題となる場面も多く見受けられます。
遺留分があることで、遺言内容による極端な不公平や相続人の生活困窮を防ぐことができる一方、遺留分を考慮せずに遺言書を作成したことで後に争いとなるといったトラブルも多いです。相続の場面では、遺留分の基本的な意味とその重要性を押さえておく必要があるといえるでしょう。
● 遺留分がある理由
遺留分が認められる最大の理由は、家族の生活保障と相続人間の公平性確保にあります。民法は、被相続人の遺志を尊重しつつも、被相続人自身がすべての遺産の分け方を自由に指示できてしまうと相続人の生活に著しい不利益が生じるおそれがあるため、一定の制約として遺留分制度を設けているのです。
相続手続きでは、まず法定相続人を確定し、法定相続分や相続人全員での話し合いに基づいて財産を分配するのが原則です。しかし、遺言書がある場合はその内容が優先されます。ただし、遺留分を侵害する内容であれば、遺留分権利者は侵害された分の請求(遺留分侵害額請求)が可能です。
たとえば、配偶者と子がいる場合、配偶者と子それぞれが法定相続人となり、各自に遺留分が認められます。この制度により、「遺言書のせいでまったく相続できない」といった極端な事態を防ぐことができるのです。
● 遺留分を請求できる人
遺留分を請求できるのは、兄弟姉妹を除く法定相続人です。つまり、配偶者や直系卑属(子や孫)、直系尊属(父母など)が相続人であるとき、その相続人は遺留分を請求する権利をもちます。なお、兄弟姉妹が先に亡くなっていて甥姪が代襲相続人となったとき、甥姪には遺留分はありませんので注意してください。
家族構成によって遺留分権利者が異なるため、まず誰が遺留分を請求できる立場か確認が必要です。たとえば、被相続人に配偶者と子がいる場合、両者とも遺留分権利者となります。一方、子や配偶者がいない場合は直系尊属が対象となります。兄弟姉妹だけが相続人となる場合は、遺留分の請求権は誰にもありません。
このように、遺留分の有無は相続人の種類によって大きく異なるため、相続開始前に家族構成や相続関係図を整理しておくことがトラブル防止の第一歩となります。
● 遺留分が問題となりやすいケース
遺留分請求が必要となる典型的な状況は、遺言書や生前贈与によって本来の法定相続分より著しく少ない財産しか受け取れない場合です。
具体的には、被相続人が遺言書で全財産を1人に遺贈したり、多額の生前贈与を行ったりした場合、他の法定相続人が著しく不利な立場になることがあります。そのため、遺留分による対立を防ぐには、遺言書の作成や生前贈与を行う際に、「遺留分の問題が生じないか」ということに配慮しておく必要があるのです。
● 遺留分が侵害されたときにできること
遺言書の内容によって遺留分が侵害された相続人は、遺留分侵害額請求を行うことで、最低限の取り分を取り戻すことができます。
遺留分侵害額請求とは、遺留分が侵害された場合に、侵害された遺留分に相当する額のお金を支払うよう要求する権利です。具体的な請求方法としては、相続人間の話し合いによるほか、弁護士を通じた請求、家庭裁判所での調停・訴訟といった手続きを通して請求していきます。そしてこの請求は、相続開始および遺留分侵害を知った日から1年以内、または相続開始から10年以内に行う必要があります。
請求が認められると、現金やその代替となるその他の財産によって遺留分相当額が支払われることが一般的です。実際に遺留分請求が行われる際は、相続財産の評価や計算方法が問題になることも少なくありません。
このように、遺留分は「お金の問題」であるため、遺留分の請求が相続人同士の対立につながることが多いのです。
遺留分問題は生前の対策が重要
● 遺留分問題は生前の対策が重要
遺留分問題は、被相続人の死後に顕在化します。というのも、遺留分が問題となるのは、「被相続人の生前に生じた不平等が被相続人の死後に明らかとなり、取り返しがつかなくなったとき」だからです。
遺言書や生前贈与は、被相続人の生前にしかできません。このような行為によって、相続人が「なぜ私は財産をもらえないのか」と感じたとき、遺留分の請求が問題となります。
一方、遺言書がない相続では、相続人全員による遺産分割協議によって財産の分け方を決めていきます。このときは、遺産の分け方で揉めることはあっても、遺留分の問題にはなりません。なぜなら、遺留分を請求する権利がある相続人も、遺産分割協議の参加者であり、合意できないのであれば遺産分割協議のなかで解決していくことになるからです。
このように、遺留分の問題は、被相続人の死後に生じるものではありますが、そのきっかけは「被相続人の生前の行為」にあります。よって、遺留分対策は、財産を残す人が元気なうちに、早い段階から準備することが理想的といえるのです。
● どのような遺言書や生前贈与が遺留分問題のきっかけとなるか
遺留分問題のきっかけとなる行為は、特定の人に遺産を偏らせた遺言書や、特定の人への多額の生前贈与です。
具体的には、以下の割合(遺留分割合)を侵害するような遺言書や贈与が問題となります。
- 配偶者や子が相続人となるとき:遺産全体の2分の1×各相続人の法定相続分
- 親のみが相続人となるとき:遺産全体の3分の1×各相続人の法定相続分
遺留分割合は、その相続人が主張できる遺留分の割合です。つまり、「この割合を下回る遺産しかもらえない」ときに、この割合に至るまで、遺留分侵害額請求をすることができるのです。
よって、遺留分トラブルを予防するには、各相続人の遺留分割合を意識することが重要です。
● 遺留分トラブルが起きる家庭と起きない家庭
一般的な傾向として、遺留分トラブルは以下のような家庭に起こりやすいといわれています。
- 子ども同士の仲があまり良くない/疎遠である
- 遺産の多くが不動産である/不動産が多い
- 介護負担に偏りがある
- どのように自分の財産を相続させたいかという親の意向を聞かされていない
- 遺産額が5,000万円以下である
相続人同士の関係性がよくないのはもちろんのこと、遺産に不動産が含まれる場合にも、その不動産の帰属先や評価方法がトラブルのきっかけとなります。また、意外と思われるかもしれませんが、遺留分トラブルは遺産総額が一定以下のいわゆる「普通の家庭」に起こりやすいことも特徴です。
もちろん、このような要件に当てはまるすべての家庭で遺留分トラブルが起きるわけではありません。しかし、ひとつの目安として、注意すべき家庭の特徴といえるでしょう。
● 遺留分トラブルは裁判沙汰に発展することも
実際に遺留分侵害額請求がなされると、まずは相続人同士の話し合いとなります。
そして話し合いがまとまらない場合や、そもそも話し合いができないような場合、家庭裁判所での調停や訴訟に発展します。
裁判所での手続きは、弁護士費用などの費用的負担のほか、時間的・精神的な負担も募らせます。
相続人にこのような負担をさせないためにも、生前にできる限り「遺留分を意識した」対策を始めたいところです。
遺留分に配慮した生前対策の方法
● 遺留分に配慮した生前対策の基本
遺留分に配慮した生前対策として、まずは自分の状況を知ることからはじめましょう。
具体的には、以下のような事項を整理し、把握していきます。
- 財産の内容(現預金、株式、不動産などすべての財産/ローンなどすべての負債)
- 収入と支出の状況(今後、財産がどのように変化していくか)
- 推定相続人の内訳(自分の死後、誰が相続人となるか)
- 相続人同士の関係性(相続で揉めそうなのは誰と誰か)
このような事項を早めに整理しておくことで、遺留分請求のリスクを具体的に把握できます。
遺留分対策を始める適切な時期は、財産の名義変更や贈与を検討するタイミング、または家族構成に大きな変化があったときです。たとえば、子どもの結婚や孫の誕生、不動産の購入・売却など、ライフイベントごとに相続対策の見直しを行うとよいでしょう。
「自分にはまだ早い」と思われる方も多いでしょうが、相続対策は「早く始めて大きな変化があるたびに考え直す」ことが基本です。早めの準備が、家族の想いを尊重した円滑な相続につながります。
● 遺留分に配慮した遺言書の作り方
遺言書をつくるとき、遺留分に配慮するにはどうすればよいのでしょうか。
最も有効な手段は「相続人全員の遺留分を侵害しない内容とすること」です。たとえば、相続人が3人の子どもである場合、各相続人の遺留分は1/2×1/3=1/6なので、全員が6分の1以上もらえる遺言をつくると、遺留分侵害額請求をする余地がなくなるので、遺留分トラブルの予防になります。たとえば「長男に実家を相続させたいが、他の子どもから遺留分を請求されそうだ」というとき、他の子どもに(実家を含む)遺産全体の6分の1にあたるお金を相続させることで、長男が遺留分侵害額請求を受けるリスクを抑えられます。
とはいえ、遺産の何分の1がどの程度の金額になるかは人それぞれですし、どうしてもすべての遺産を特定の人に渡したいという希望もあるでしょう。「どうしても遺留分を侵害する遺言書になってしまう」という場合において次にとれる対策としては、「事前に遺言書の内容や自分の希望を相続人に伝えておくこと」が有効です。遺留分相当額の遺産をもらえなかった相続人としては、遺言者の生前にその意向を知らされていたか、はたまた死後にはじめてその事実を知ったかでは、心境に大きな差があるでしょう。遺言書の作成は法律上ひとりでできる行為ではありますが、円満な相続のためには、できる限り家族間での話し合いの場を持ち、納得を得ておくことが大切です。
遺言書の作成形式にも注意が必要です。せっかく遺留分に配慮した遺言書をつくったとしても、遺言書の形式に不備があれば、遺言書が無効となったり、遺言書が本物かどうかで相続人間に不信感が募ったりといった事態につながりかねません。遺言書は正しい方式でつくるよう心掛けてください。
心配であれば、公正証書遺言を利用することで、形式不備による無効や紛失のリスクを抑えられます。司法書士などの専門家のアドバイスを受けて、計画的な遺言書の作成を進めていきましょう。
● 遺留分に配慮した生前贈与の方法
それでは、生前贈与の際に遺留分に配慮するにはどうすればよいのでしょうか。
まず基本的な事項として、生前に贈与された財産は、以下の要件を満たす場合、遺留分算定の対象となります。
- 相続開始前10年以内に行われた相続人への贈与のうち、特別受益に当たるもの(婚姻・養子縁組・生計の資本としての贈与など)
- 相続開始前1年以内に行われた相続人以外への贈与
- 遺留分権利者に損害を与えることを知って行われたすべての贈与
このような生前贈与は、原則として遺留分請求の対象となります。よって、生前贈与をする際は、できるだけ早めに始めることが重要です。
とはいえ、このような要件に当てはまるからといって、生前贈与ができないわけではありません。何より重要なのは、遺留分権利者に「遺留分を請求したい」と思わせないように配慮することです。具体的には、生前贈与を行う際にその内容や受贈者をしっかりと記録しておくことで、相続人間の納得感を高めるといった工夫が考えられます。その際には「なぜこのような贈与をしたのか」という理由も記載しておくと、より納得のいく結果となるでしょう。
一方、相続人と疎遠であるといった理由で、このような配慮が難しいこともあるでしょう。その場合には、遺留分を請求される可能性のある受贈者に現預金を残しておくことも対策のひとつです。たとえば、相続人のうちの1人に生前に自宅不動産を贈与していたとして、いざ相続が発生して他の相続人から遺留分を請求された際、その遺留分相当額のお金が払えなければ、自宅不動産を売らなければならない事態に陥りかねません。遺留分対策の際には、生前贈与や遺言、生命保険を活用して、現預金の確保にも努めると、より一層安心です。
● 事前に遺留分を放棄してもらう方法も
遺留分対策として、家庭裁判所での遺留分放棄の制度を活用する方法も考えられます。
遺留分権利者は、相続発生前に家庭裁判所に申し出て許可をもらうことで、遺留分請求権を放棄することができます。この制度を活用して、特定の人に財産を渡したいとき、他の相続人に事前に遺留分を放棄してもらうことで、相続発生後、財産を受け取った人が遺留分を請求されるリスクがなくなります。
ただし、この制度は他の相続人の権利を奪う行為なので、勝手に手続きすることはできません。遺留分の放棄は、遺留分を放棄する相続人本人が家庭裁判所に申し出て行う必要があります。つまり、「私はこの相続に関して遺留分を請求しません」と相続人自らが家庭裁判所に申し出て、自分の権利を制限してもらうのです。
遺留分トラブルを未然に防ぐにはうってつけの制度ではありますが、一度家庭裁判所の許可を得ると原則として撤回することはできませんし、許可の審理の際には「本当に相続人自らの意思で遺留分を放棄したいか」という点が厳格に審査されます。相続人に放棄してもらいたいときには、当事者全員が制度の仕組みをよく理解し、納得のうえで利用するようにしてください。
遺留分対策を専門家へ相談するメリット
● 遺留分対策を相談できる専門家
遺留分対策を進める際には、専門家への相談も有効です。
遺留分対策の相談先としては、弁護士・司法書士・税理士が挙げられます。いずれも法律の専門家ではありますが、それぞれの特徴は以下のとおりです。
- 弁護士:どのような事例にも対応可能/特に、争いが予想されるときにおすすめ
- 司法書士:遺産に不動産が含まれる場合や、遺言作成・相続発生時の手続きに不安がある場合におすすめ
- 税理士:相続税がかかるおそれがある場合や、生前対策時の贈与税等の不安がある場合におすすめ
そして、いずれの専門家にも共通していることとして、専門家には得意分野があります。遺留分対策を含む生前対策を検討する際は、「生前対策や相続手続きを得意とする専門家」に相談してみましょう。
専門家に相談する際は、事前に費用についても確認しておくと安心です。相談時には財産目録や家族関係図を持参し、現状や希望を具体的に伝えると、最適な提案につながります。
● 遺留分対策を専門家に相談するメリット
相続や遺留分対策において、専門家へ相談する最大のメリットは、法律や税務の複雑な知識を正確に活用できる点です。遺留分は複雑な制度であり、ときには専門家ですら判断に迷うような事例が見受けられます。遺留分対策として生前贈与や遺言書の作成を検討する場合には、法的な落とし穴を回避するためにも、専門家の知見が欠かせないといえるでしょう。
たとえば、遺留分を請求されないために生前贈与を行った場合でも、贈与の時期や内容によっては後から遺留分侵害額請求の対象になることもあります。また、よかれと思って生前に不動産を贈与したとしても、税務上の観点から、受贈者に不利になることも起こり得ます。
専門家のサポートを受けることで、こうしたリスクを事前に洗い出し、最適な対策を講じることができます。
また、検討段階のみならず、実際に遺言書の作成や生前贈与といった手続きを進める際にも、専門家が手続き全般をサポートすることで手続上のミスを防ぎ、円滑な財産承継を実現できます。家族の意向を尊重しつつ、将来のトラブルを未然に防ぐためにも、相続専門家への相談は非常に有効です。
● 相談窓口による違い
とはいえ、始めから専門家に依頼するのはハードルが高いと感じる方も多いでしょう。
そのような場合には、各自治体や公的な団体(弁護士会・司法書士会)などが開催している無料相談会の利用がおすすめです。「自分に遺留分対策は必要か」「遺言の内容を考えたが、これは適切か」といった疑問を解消し、具体的な対策の足掛かりとしてください。
また、専門家への相談の際には、「対面でしっかり相談したい」「まずは電話で相談したい」「初回は無料で相談してみたい」といった希望を整理し、それに沿った相談先を探してみましょう。
まとめ
遺留分トラブルは、生前の予防が大切です。ご自身の財産の状況や各相続人の遺留分割合を事前に確認したうえで、遺留分に配慮した遺言書の作成、生前贈与、家庭裁判所での遺留分放棄の制度といった方法を活用し、遺留分トラブル発生のリスクを抑えましょう。
「自分にあった対策は何か」「そもそもお金や手間をかけてまで遺留分対策をする必要があるのか」、疑問に感じる方は、まずはお気軽に専門家の無料相談を活用してください。専門家のアドバイスを受けて、ご自身の状況やリスクを整理して、自分も家族も納得のいく生前対策を進めるきっかけとしていただければ幸いです。

