特別寄与料を請求する流れや要件、計算方法をわかりやすく解説
2025/11/27
相続の場面で、長年にわたり無償で療養看護や家事などを支えてきたにもかかわらず、相続人に含まれないことで「不公平」と感じたことはありませんか?
こうした課題を背景に、平成30年度の民法改正によって『特別寄与料』という制度が新設されました。特別寄与料は、被相続人に特別な貢献をした親族が、一定の要件を満たすことで金銭の請求を可能にする仕組みです。
本記事では、大阪市の相続事情を踏まえて、特別寄与料の概要や寄与分との違い、具体的な請求要件・計算方法・請求手続きの流れをわかりやすく解説します。これにより、制度の利用可否や適切な対策を知り、これまでの貢献が正当に認められる相続を実現できるはずです。
目次
特別寄与料とは何かをわかりやすく説明
相続で特別寄与料が生まれた背景と意義を解説
● 特別寄与料とは
特別寄与料とは、被相続人に対して無償で療養介護等を行うことで財産の維持や増加に貢献した被相続人の親族(ただし、相続人を除く)が、相続人に対して請求できる金銭です。
この制度の特徴は、相続人以外の親族(配偶者および六親等内の血族と三親等内の姻族)が金銭を請求できるという点です。例として、子どもの妻や孫などが請求できるため、相続による不公平を解消するのに役立ちます。大阪市のような都市部では、家族構成や支援の形態が多様化しており、特別寄与料の必要性が高まっています。
請求には「被相続人に対する特別の寄与があったこと」「その行為が無償であったこと」など、いくつかの要件を満たす必要があります。また、請求できる期間や手続きにも決まりがあるため、具体的な流れを押さえておくことが大切です。知識として押さえておくことで、相続トラブルの未然防止や自身の貢献を正当に評価してもらうきっかけになります。
相続時に役立つ特別寄与料の基礎知識まとめ
● 制度ができた背景
特別寄与料は、平成30年度の民法改正によって新設されまさいた。
この背景には、被相続人(亡くなった方)に対して長年にわたり無償で介護や家事などの貢献をしてきた親族が、相続人でないために財産を受け取れず「不公平」と感じるケースが多発していたことがあります。
これまでにも、介護を行った人が最低限の相続分を確保できるようにするための制度として、「寄与分」という制度がありました。しかし寄与分は相続人にしか認められず、相続人以外の親族は、たとえ何十年も介護をしていた場合であっても、相続の権利を主張することはできませんでした。
こうした課題を解消し、相続の公平性を高めるために特別寄与料の制度が設けられました。これにより、相続人以外の親族も被相続人への特別な貢献が認められた場合、一定の金銭を請求できるようになったのです。
特別寄与料はどのような相続トラブルを防ぐか
● 寄与分との違い
特別寄与料の制度は、相続人以外の親族が被相続人に対して特別の寄与(たとえば長期間の介護や家事手伝い)を行った場合に、相続人に対して金銭の請求を認めるものです。従来の「寄与分」は相続人のみが対象でしたが、特別寄与料は相続人以外にも門戸が開かれています。
寄与分と特別寄与料の違いは以下のとおりです。
寄与分:相続人が請求でき、遺産分割協議や家庭裁判所での調停・審判により、相続分を増やすことができる。対象となる行為は比較的広く(介護以外にも、事業への協力や扶養行為、金銭的な援助も含む)、請求期限は比較的長い(実質10年間)
特別寄与料:相続人以外の親族が請求でき、相続人との協議や家庭裁判所での調停・審判により、相続人に対して金銭の支払いを請求できる。対象となる行為は比較的狭く(介護や事業への協力等の労務の提供のみ)、請求期限は比較的短い(知った日から6か月間・相続開始から1年間を過ぎると裁判不可)
相続と特別寄与料の制度概要と利用メリット
● 制度への期待
特別寄与料は、相続人以外の親族が被相続人に行った特別な貢献を正当に評価し、相続財産の分配に反映させる役割を持ちます。これにより、従来の「形式的な法定相続分」だけでなく、実際の貢献度に基づいた公平な遺産分割が可能になります。
たとえば、長男の妻が長年にわたり親の介護を担い、他の相続人がほとんど関与しなかった場合、特別寄与料の請求によって貢献が具体的に評価されることになります。この仕組みは、家族関係や親族間の感情的対立を和らげ、納得感のある相続を実現する効果が期待できます。今後も大阪市をはじめ、家族構成が多様な地域で制度活用が広がると考えられます。
特別寄与料請求の要件とは
相続で特別寄与料請求が認められる主な要件
● 特別寄与料を請求できる要件
特別寄与料とは、被相続人の親族が無償で介護や家事などの特別な貢献をした場合に、相続人に対して金銭請求できる制度です。大阪市の相続実務でも利用が増えていますが、請求が認められるにはいくつかの要件を満たす必要があります。
主な要件としては、①被相続人に対する労務や介護の提供、②その行為が無償であること、③その貢献が「特別の寄与」と評価されることの3つが挙げられます。単なる手伝いや一般的な親族間の行為では認められにくく、明確な証拠や経緯の説明が求められる点に注意が必要です。
例えば、長期間にわたり日常的な介護や家事援助を無報酬で行い、被相続人の生活維持に大きく貢献した場合などが該当します。大阪市内でも高齢化が進む中、特に介護負担が重くなりやすい家族にとっては重要な制度となっています。
無償労務が相続において評価されるポイント
● 請求できる人
先述のとおり、特別寄与料を請求できるのは、相続人以外の親族(配偶者・六親等内の血族・三親等内の姻族)に限られます。
ただし、「相続放棄・相続欠格・相続人廃除によって相続人ではなくなった人」や「内縁の配偶者」は請求することができませんので、注意が必要です。
この要件を満たす人がした行為について、以下の3つの要件を満たしているかを確認していきます。
特別寄与料の要件と相続時の証明資料の重要性
● 要件1:被相続人に対して労務の提供をしたこと
民法上、特別寄与料を請求するには、「療養看護その他の労務(=特別の寄与)」を提供していなければならないと定められています。
この労務の範囲は、単なる家事や見守りを超え、被相続人の生活維持や身体的・精神的な負担軽減に実質的な貢献があったかが判断基準になります。例えば、食事や入浴の介助、通院の付き添い、認知症対応など、専門的な知識や多大な時間が必要な介護行為が該当しやすいです。
寄与分とは考え方が違い、金銭的援助をしていたというだけでは特別の寄与とはみなされないため、注意が必要です。
相続手続きで問われる無償介護の範囲と判断基準
● 要件2:1の行為が無償であること
特別寄与料を請求する上で最も重視されるのは、提供した労務や介護が「無償」であったかどうかです。相続の現場では、親族間の協力が当たり前とされがちですが、単なる家族の手伝いと区別して評価される必要があります。
具体的には、給与や謝礼などの対価を受け取っていなかったこと、他の相続人にはできなかった特別な世話であったことがポイントです。たとえば、長期にわたり日常生活の全般的な介護や医療機関への付き添い、家事全般の負担を担った場合などが該当しやすい傾向にあります。
とはいえ完全に無償でなければならないわけではなく、受け取っていた対価が通常の給料等と比べて著しく低額な場合には、特別の寄与として認められることもあります。
しかし、短期間や一時的なサポート、または他の親族も同様に手伝っていた場合は、特別寄与料として認められにくいケースもあります。大阪市の実務でも、証拠資料の有無や具体的な内容説明が重要視されています。
特別寄与料の対象者と相続での認定条件を解説
● 要件3:1の行為が「特別の寄与」といえること
特別寄与料請求には、無償労務の提供だけでなく、その内容が「特別の寄与」と認められる必要があります。ここで問われるのは、一般的な親族関係を超えた貢献であったかどうかという点です。
具体的には以下のような行為です。
・長年にわたってほとんど毎日のように介護をしていたため、介護施設利用料を支払わずに済んだ
・寝たきりや重度の認知症といった重い症状の被相続人を献身的に介護していたため、医療費を削減できた
・被相続人の事業を無償で手伝っていたため、人件費を削減できた
ここでポイントとなるのが、「お金を節約できた」という点です。民法1050条では、特別の寄与について、「被相続人の財産の維持又は増加」に貢献したことが要件として明記されています。よって、親族の行為によってお金を節約できたことが証明できなければ、特別の寄与とは認められないのです。
実際の相続手続きでは、日記・介護記録・領収書・医療機関の証明書類など、第三者にも内容が分かる証拠資料が不可欠です。たとえば、介護の開始時期や頻度、かかった時間、家計の負担状況などを日々記録し、できるだけ客観的な形で残しておくことが、認定の可能性を高めるポイントとなります。
相続で特別寄与料を請求するための流れ
相続における特別寄与料請求のステップ解説
● 実際に特別寄与料を請求する手続き
特別寄与料を請求する場合、まずは相続人との協議を経て、合意に至らない場合は家庭裁判所での調停、さらに審判へと進む段階的な手続きが基本です。
請求の際には、貢献の内容や期間、無償性などを証明する資料が重要となり、手続きの各段階で注意点やリスクが存在します。制度の趣旨を理解し、適切に進めることが、公平な相続の実現につながります。
また、家庭裁判所を通じて請求する場合には、「相続発生から1年間」または「請求者が、相続が開始したことおよび相続人が誰かを知った日から6か月間」のいずれか早い日までに申し立てなければならない点に注意してください。期限があることも考慮して、早め早めに手続きをすすめましょう。
特別寄与料の請求手順を相続の流れで整理
● ステップ1:相続人との話し合い
まずは、直接相続人と話し合う方法を検討します。
相続では、通常、相続人同士の話し合いである遺産分割協議が行われます(ただし、遺言書がある場合を除く)。
特別寄与料の請求者は相続人ではないため、この遺産分割協議に参加することはできません。しかし、特別寄与料はあくまで請求者と相続人の合意で定まるものなので、相続人全員と特別寄与料に関する合意ができている場合は、遺産分割協議書に特別寄与料に関する規定を盛り込むことも可能です(もちろん、別途合意書や覚書をつくっても構いません)。
特別寄与料に関する規定を書面で残す場合には、「相続人○○は、以下の遺産を相続する。ただし、そのなかから金○万円を特別寄与料として○○に支払う。」等と記載します。
このような話し合いがすぐに終わればよいのですが、お金の話になるので、なかなか意見がまとまらないこともあるでしょう。話し合いの際には、介護日誌やタイムカード、関係者とのメールや手紙等の記録、介護用品等の領収書など、客観的な資料を準備することをおすすめします。また、当事者だけでの話し合いでは揉めてしまいそうという懸念がある場合は、弁護士や司法書士などの中立的な第三者に同席してもらうよう依頼するという手段も考えられますので、相続人に連絡する前にできることはないかをよく検討しましょう。
なお、相続人と疎遠な場合や、相続に関してすでに争いごとがある場合には、当事者同士で話し合う前に、はじめから相続を専門とする弁護士に依頼することをおすすめします。
相続手続きで特別寄与料を請求する際のポイント
● ステップ2:家庭裁判所での調停
相続人との話し合いがまとまらない場合、または話合い自体が困難な場合には、家庭裁判所に対して調停を申し立てることができます。ただし調停の申立ては先述の期限(相続発生から1年間または相続開始および相続人を知った日から6か月間)内にしなければならないので、注意してください。
調停では、調停委員を間にはさみ、当事者間の協議が行われます。裁判手続きとなりますので、話合いのとき以上に「客観的な証拠」が重視されます。介護日誌やタイムカード、日々のレシート、関係者とのメールや手紙のやり取りといった「客観的な証拠」を残しておくようにしましょう。
ただし、調停はあくまで話し合いベースの手続きです。調停の場で当事者全員が納得しなければ、次の段階である審判手続きに移行します。
特別寄与料の計算方法と実際の進め方
相続で特別寄与料額を計算するポイント解説
● 特別寄与料は個別の事情で決まる
相続の場面で特別寄与料を請求する際、どのように金額を計算するかは非常に重要なポイントです。
計算する際のポイントは、まず「どのような行為が特別の寄与に該当するか」を具体的に整理することです。たとえば、長期間にわたり日常的な介護や家事を担当した場合、その期間や内容、被相続人の生活状況などを客観的に記録しておくことが重要です。
また、特別寄与料の算定基準は法律で明確に定められているわけではなく、個別事情を踏まえて総合的に判断されます。実務では、介護サービスの市場価格や同様の貢献を有償で依頼した場合の費用などを参考にして、金額を算出するケースが多いです。
特別寄与料の算定基準と相続時の実務手順
● 目安となる計算方法:介護・看護をしていた場合
被相続人の介護や看護をしていた場合、【特別寄与料の目安 = 介護等をした日数 × 報酬相当額 × 裁量割合】という計算式が目安となります。
報酬相当額とは、プロに介護を頼んだ場合にかかるおおよその費用であり、およそ5,000~8,000円程度です。そして裁量割合とは、「プロではない人が介護をしているのだから、報酬相当額を満額与えるのは不適切だ」という考えから設けられる割合であり、個別の事情にあわせておよそ0.5~0.9が乗じられます。
相続の現場で使える特別寄与料計算のコツ
● 目安となる計算方法:事業を手伝っていた場合
被相続人の事業を手伝っていた場合、【特別寄与料 = 事業に従事していた年数 × 年収相当額 × (1-生活費控除割合)】という計算式が目安となります。
生活費控除割合とは、給料が支払われない代わりに請求者が被相続人から受けていた生活費の援助を調整するための数値です。「事実上いくら損をしたか」を計算し、特別寄与料とするわけです。
特別寄与料請求時に注意したい計算の落とし穴
● 計算時の注意点
このように、特別寄与料の算定には一定の基準となる計算式があります。ただし、この式はあくまで参考であり、以下の点に注意が必要です。
・特別寄与料の額は、遺贈された額を除く相続財産の額を超えることはできない:あくまで相続人間との公平を図る制度なので、いくら寄与行為をしていたとしても、相続財産の額を超えて請求することはできません。また、遺贈は特別寄与料に優先します。
・裁判で実際に認められる金額は、算出額よりも低くなることが多い:特別寄与料の請求者は被相続人と同居して利益を得ていることも多く、親族としての扶養義務を負うこともあります。よって、特別寄与料として認められる額は、この式による額よりも低くなることが多いです。
・請求者と相続人が納得しているのであれば、この式は気にしなくともよい:この式は、あくまで話し合いでまとまらない場合などに用いられる目安の金額を求めるためのものです。よって、請求者と相続人が納得しているのであれば、いくらにしても問題ありません。ただし、相続税の2割加算には注意してください。
特別寄与料を活用する際の注意点
相続で特別寄与料活用時に注意すべきポイント
● 重要なのは「証拠」
特別寄与料請求の際によくある落とし穴は、「証拠不足」による請求額の減額や却下です。無償での労務提供は、口頭や記憶だけでは証明が難しいため、日々の活動を記録することが不可欠です。領収書や日誌、写真など第三者にも分かる形で証拠を残しておきましょう。
「相続人と仲がいいから話し合いで終わるだろう」と考えている場合であっても、具体的な金額の話をするうえで資料は大切です。日ごろから残しておくようにしてください。
また、交渉が難航した場合には、裁判所の調停や審判に進むことも選択肢となります。その際も、客観的な資料や第三者の証言を準備しておくことで、自身の主張が認められやすくなります。早めの専門家相談も有効です。
大阪市の相続実務が特別寄与料に与える影響
● 公正な請求には専門家の関与をおすすめ
大阪市のような都市部では、相続財産が現金・不動産・有価証券など多岐にわたるため、特別寄与料の判断基準が複雑化しやすい傾向があります。特に不動産の管理や介護負担が大きい場合、相続人間で貢献度の認識にズレが生じやすいのが特徴です。
公正な特別寄与料の請求を希望する場合には、財産の種類や評価額の算定、寄与行為の内容・期間・頻度などが細かく問われます。地元の弁護士など専門家のアドバイスを受けることで請求が円滑に進むケースも多いため、地域特有の実情を踏まえて、円満な解決を目指しましょう。
特別寄与料請求でトラブルを防ぐ相続の工夫
● 関係性悪化の可能性
特別寄与料の請求は、相続人との間で感情的な対立を生む可能性があります。
特に「他の相続人も介護に参加していた場合」や「請求者が被相続人から金銭的な援助を受けていた場合」、「相続財産が少なくて特別寄与料を支払えない場合」には対立につながってしまうことも多いです。
請求にあたっては、客観的な資料に基づき、冷静に協議することが大切です。できる限り専門家に相談し、適切なアドバイスを受けることをおすすめします。
まとめ
特別寄与料を請求できるのは、被相続人の親族(配偶者や子、兄弟姉妹以外の親族も含む)で、相続人ではない方が対象となります。実際には、子どもの妻や義理の子どもなどが多く請求するケースが見られます。
請求には、被相続人への特別な貢献が無償で行われた事実と、それが相続財産の維持・増加に寄与したことを証明できることが条件です。大阪市においても、家族構成が多様化する中で、特別寄与料の認定が重要な役割を果たしています。
認定には家庭裁判所での調停や審判が必要となる場合もあり、請求の際は専門家への事前相談が安心です。失敗例としては、証拠が不十分で認められなかったり、相続人との協議がこじれて調停に発展することもあるため、事前準備が大切です。

