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家族信託で「信託できない財産」や「信託が難しい財産」を解説

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家族信託で「信託できない財産」や「信託が難しい財産」を解説

家族信託で「信託できない財産」や「信託が難しい財産」を解説

2026/10/02

家族信託では、自宅や賃貸不動産、預貯金など、さまざまな財産を信託することができます。

しかし、すべての財産を自由に信託できるわけではありません。財産の種類によっては、法律上信託できないものや、金融機関などの対応によって信託が難しいものもあります。

また、信託自体は可能でも、事前に許可や承諾を得る必要があるケースもあるため、注意が必要です。

本記事では、家族信託で信託できない財産や信託が難しい財産について、具体例を挙げながらわかりやすく解説します。

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目次

    家族信託ではどのような財産を信託できる?

    ● そもそも家族信託とは?

    家族信託とは、自分の財産を信頼できる家族などに託し、その財産を管理・運用・処分してもらう仕組みです。

    この家族信託では、「委託者」「受託者」「受益者」という3つの立場が登場します。

    • 委託者:財産を信託する人
    • 受託者:信託された財産を管理・処分する人
    • 受益者:信託財産から利益を受ける人

    たとえば、父親が自宅を信託し、子どもに管理を任せる場合、父親が委託者、子どもが受託者となります。そして通常の家族信託では、委託者が引き続き信託財産から利益を受け続けるため、父親は「委託者兼受益者」となります(この利益とは、居住権や家賃収入、売却益などのことです)。

    委託者と受益者が同一となる多くの家族信託では、財産から利益を受ける人が信託の前後で変わらないため、信託を設定したこと自体による贈与税は通常発生しない点も特徴です。

    このように、家族信託では、受託者に財産の管理を任せながら、受益者が信託財産から利益を受けるという仕組みをつくることができます。

    ● 家族信託では幅広い財産を信託できる

    家族信託では、法律上、現金や不動産、株式など、さまざまな財産を信託することができます。

    たとえば、次のような財産が信託の対象となります。

    • 現金
    • 自宅や賃貸不動産
    • 上場株式
    • 投資信託
    • 自動車
    • 貴金属や美術品などの動産

    ただし、上記の財産であっても、すべてのケースで問題なく信託できるとは限りません。また、法律上信託することができないとされている財産もあります。

    ● 法律上信託できない財産と、実務上信託が難しい財産がある

    家族信託で注意したいのが、法律上信託できない財産と、法律上は信託できても実務上のハードルがある財産の違いです。

    たとえば、年金を受け取る権利は、本人に専属する権利であるため、原則として信託することができません。一方、預貯金については、一般的な預金の場合、譲渡禁止特約などによって、そのまま受託者へ移転して信託することが難しいため、預金を払い戻して現金として信託する方法が一般的です。また、上場株式についても、法律上信託できる財産ですが、証券会社が家族信託に対応していない場合には、実際に信託することが難しくなります。(各財産について、後ほど詳しく説明します)

    このように、財産の種類によって信託できない理由や対応方法は異なります。

    ● 信託できるかどうかは、財産の種類や契約内容によって異なる

    家族信託を検討する際には、単に財産の種類だけでなく、信託する目的や財産の状況も確認する必要があります。

    同じ不動産であっても、住宅ローンが残っている場合や、他人に賃貸している場合には、追加で確認すべき事項があります。また、信託する財産が複数ある場合には、それぞれの財産について信託の可否や必要な手続きを確認しなければなりません。

    家族信託を始める前に、どの財産を信託するのかを整理し、財産ごとの注意点を把握しておくことが大切です。

    家族信託で信託できない財産とは?

    ● 法律上信託できない財産

    それでは、各財産について細かくみていきます。

    まず、法律上信託できない財産には、次のようなものがあります。

    • 委託者名義の預金口座
    • 年金受給権などの一身専属権
    • 農地
    • 借金や保証債務などのマイナスの財産

    ● 委託者名義の預金口座

    預貯金は、銀行に対する預金債権という権利であり、預金口座の名義をそのまま受託者に変更して信託することはできません。

    そのため、一般的には、委託者の預金を払い戻し、現金として受託者に信託する方法が用いられます。つまり、預貯金の管理権を受託者が引き継いだり、口座に今後振り込まれる金銭を当然に信託財産としたりするといったことはできません。

    受託者は、信託された金銭を管理するために、信託専用の口座(受託者名義の信託口口座、信託専用口座等)などを利用して、個人のお金と区別して管理します。信託口口座の開設には一定の条件が設けられていることもあるので、あらかじめ利用する金融機関の対応を確認しておきましょう。

    ● 年金受給権などの一身専属権

    年金を受け取る権利は、原則として家族信託の対象にすることができません。なぜなら年金受給権は、受給者本人に専属する権利(一身専属権)であり、他人に譲渡したり、担保に入れたりすることが法律上制限されているためです。

    同様の理由で、生活保護を受ける権利なども、本人に専属する権利として信託することができません。

    ただし、年金そのものを信託できないからといって、年金を受け取った後のお金まで信託できないわけではありません。年金が振り込まれた後の預貯金や現金については、信託財産として管理する方法を検討できます。

    ● 農地

    農地についても、家族信託を利用する際には注意が必要です。

    農地は、農地法によって権利の移転や転用などが制限されています。一般の家族信託では、農地を農地のまま利用することを前提として、受託者に農地の所有権を移転することはできません。

    農地を宅地などに転用してから信託することも考えられますが、転用のためには農地法上の手続きや農業委員会などへの確認が必要になります。

    また、農地には一定の要件のもとで利用できる特別な信託制度もあるため、農地を所有している方が家族信託を検討する場合には、信託契約を作成する前に、農地の所在地や利用状況などを踏まえて、どのような方法が利用できるのか確認することが重要です。

    ● 借金や保証債務などのマイナスの財産

    家族信託では、借金や保証債務などのマイナスの財産を、そのまま信託財産として移転することはできません。家族信託は、財産の管理や運用、処分などを目的とする制度であり、借金そのものを信託財産として受託者に移す仕組みではないためです。

    たとえば、委託者に銀行からの借入れがある場合、その借入金の返済義務が家族信託によって当然に受託者へ移るわけではありません。借金の返済義務を別の人に引き受けてもらう場合には、債権者との関係で別途手続きが必要になります。

    なお、借入れがある不動産そのものについては、信託できる場合があります。住宅ローンなどが残っている不動産の扱いについては、後ほど解説します。

    家族信託は可能でも、実務上のハードルがある財産

    ● 実務上信託が難しい財産

    一方、法律上信託が可能であるものの、実務上信託が難しい財産もあります。

    たとえば、以下のような財産です。

    • 上場株式や投資信託
    • 生命保険契約
    • 不動産の賃借権
    • 住宅ローンなどの借入れがある不動産

    ● 上場株式や投資信託

    上場株式や投資信託は、法律上、信託財産とすることができる財産です。

    しかし、実際に信託する場合には、証券会社の対応が問題になることがあります。

    家族信託では、委託者から受託者へ財産の名義を移し、受託者が信託契約に従って管理する必要があります。ところが、証券会社によっては、家族信託に対応した口座を取り扱っていなかったり、信託財産としての株式や投資信託の移管を受け付けていなかったりする場合があります。

    そのため、保有している株式や投資信託を信託したい場合には、事前に証券会社へ確認することが重要です。

    場合によっては、信託する前に売却して現金化することも選択肢となりますが、売却に伴う税金なども考慮する必要があります。

    ● 生命保険契約

    生命保険契約についても、家族信託を利用する際には注意が必要です。

    生命保険契約には、契約者、被保険者、保険金受取人などの立場があり、それぞれの権利や義務は契約内容によって異なります。そのため、生命保険契約そのものを信託財産とする場合には、保険会社の取扱いや契約上の制限を確認する必要があります。

    また、生命保険金を受け取る権利についても、誰が保険金受取人となっているかによって取扱いが異なります。たとえば、委託者が契約者となっている生命保険について、契約者の地位や解約返戻金に関する権利を信託したい場合には、保険会社が対応できるかどうかを事前に確認しなければなりません。

    生命保険を活用した相続対策を検討する場合には、保険契約を信託する方法だけでなく、受取人の指定や変更など、ほかの方法も含めて検討することが大切です。

    ● 不動産の賃借権

    土地や建物を借りている場合、その賃借権を信託するには注意が必要です。

    賃借権は、契約によって他人の土地や建物を使用する権利ですが、無断で第三者に譲渡したり、転貸したりすることは原則として認められていません。そのため、借地上の建物や借家の賃借権を信託する場合には、地主や賃貸人の承諾が必要になることがあります。

    建物の所有権だけでなく、土地を利用する権利についても確認しなければなりません。賃貸借契約の内容によっても取扱いが異なるため、信託を設定する前に契約内容を確認しておくことが大切です。

    ● 住宅ローンなどの借入れがある不動産

    住宅ローンなどの借入れが残っている不動産についても、注意が必要です。

    住宅ローンが残っている不動産であっても、信託できる場合はあります。しかし、不動産に抵当権が設定されている場合には、金融機関との契約内容や承諾の要否を確認しなければなりません。

    また、不動産を信託したからといって、住宅ローンの返済義務まで当然に受託者へ移るわけではありません。金融機関に無断で信託した場合、契約上の問題が生じる可能性もあります。

    そのため、住宅ローンが残っている不動産を信託する場合には、事前に金融機関へ相談し、信託の可否や必要な手続きを確認しておくことが重要です。

    信託できない財産はどうすればいい?

    ● 預貯金は金銭として信託する

    預貯金をそのまま信託することはできませんが、預金を払い戻して現金として信託する方法があります。

    たとえば、父親が保有する預貯金のうち、将来の生活費や介護費用に充てる予定のお金を信託するケースです。父親が元気なうちに、子どもを受託者として金銭を信託しておけば、将来的に父親の判断能力が低下した場合でも、受託者が信託契約に従って金銭を管理し、父親の生活費や介護費用などに充てることができます。

    ただし、信託する金額については、今後の生活費や医療費などを考慮し、無理のない範囲で決めることが大切です。また、信託した金銭は、受託者自身の財産とは分けて管理しなければなりません。

    信託専用口座を利用するなどして、入出金の記録を残しておくことで、受託者による財産管理の状況を明確にできます。

    ● 年金は受け取った後の金銭を管理する

    年金受給権そのものは信託できませんが、年金を受け取った後の金銭については、信託による管理を検討できます。

    たとえば、父親が受け取る年金のうち、生活費として必要な金額を除いた一部を信託財産として管理する方法です。

    ただし、年金の振込先口座そのものを受託者名義に変更することはできないため、年金の受領と信託財産の管理は区別して考える必要があります。

    また、年金を受け取る本人の生活に支障が出ないよう、信託する金額や管理方法を慎重に検討しましょう。特に、年金が主な収入源となっている方の場合、将来の生活費や医療費、介護費用などを見積もり、必要な資金を手元に残しておくことが重要です。

    ● 信託以外の制度を組み合わせることも検討する

    家族信託で管理できない財産や、信託することが難しい財産については、ほかの制度を組み合わせることも考えられます。

    たとえば、本人の判断能力が低下した後の財産管理については、成年後見制度を利用する方法があります。成年後見制度では、家庭裁判所によって選任された成年後見人などが、本人の財産管理や法律行為を支援します。家族信託では対応できない財産や、本人の身上保護に関する事務についても、成年後見制度によって対応できる場合があります。

    また、将来の相続に備えて財産の承継先を決めておきたい場合には、遺言を作成することも有効です。たとえば、自宅は長男に相続させたいものの、預貯金については長女にも一定額を取得させたい場合など、財産ごとの承継先を遺言で指定することができます。

    さらに、生命保険については、保険金受取人を適切に指定することで、相続発生後に特定の人へ保険金を渡す方法もあります。

    このように、家族信託だけですべての財産管理や相続対策を行おうとするのではなく、財産の種類や本人の希望に応じて、ほかの制度を組み合わせることが大切です。

    家族信託を始める前に確認しておきたいこと

    ● 信託したい財産を整理する

    家族信託を検討する際には、まず、どの財産を信託したいのかを整理することが大切です。自宅や賃貸不動産、預貯金、株式など、財産の種類によって必要な手続きや注意点は異なります。

    また、すべての財産を信託する必要があるわけではありません。本人の生活費や医療費など、今後必要になるお金を確保したうえで、信託する財産を決めることが重要です。

    財産を整理する際には、単に財産の種類や金額を確認するだけでなく、現在の利用状況や権利関係も把握しておきましょう。たとえば、不動産であれば、本人が居住している自宅なのか、第三者に賃貸している物件なのかによって、信託後の管理方法が異なります。

    また、住宅ローンなどの借入れがある場合には、残債額や抵当権の設定状況も確認する必要があります。

    預貯金や株式についても、どの金融機関や証券会社で管理しているのかを一覧にしておくと、信託する財産を検討しやすくなります。

    ● 財産の種類に応じた手続きや制限を確認する

    信託したい財産が決まったら、それぞれの財産について、信託できるかどうかや必要な手続きを確認しましょう。

    不動産であれば、登記手続きや抵当権の有無、賃貸借契約の内容などを確認する必要があります。預貯金や株式であれば、金融機関や証券会社の対応を確認することが重要です。特に、金融機関などの承諾が必要になるケースでは、信託契約を作成する前に確認しておくことで、後から手続きが進められなくなる事態を防ぎやすくなります。

    また、信託する財産によっては、契約書の作成だけでなく、名義変更や登記、口座開設などの手続きが必要になります。信託契約を締結しただけで、すべての財産が自動的に信託財産になるわけではありません。

    たとえば、不動産を信託する場合には、信託を原因とする所有権移転登記や信託登記が必要です。

    信託したい財産について、どのような手続きが必要なのか、また、手続きにどの程度の時間や費用がかかるのかも確認しておきましょう。

    ● 信託後の管理方法まで考えておく

    家族信託では、受託者となる家族が、信託財産の管理や契約に基づく事務を担うことになります。そのため、受託者に過度な負担がかからないかどうかも、事前に検討しておく必要があります。

    たとえば、賃貸不動産を信託する場合には、賃料の受領や管理費・修繕費の支払い、入居者への対応などが必要になることがあります。

    また、信託した金銭についても、受益者の生活費や介護費用などを適切に支出し、入出金の記録を残しておかなければなりません。

    信託財産と受託者個人の財産を混同してしまうと、財産管理の状況が不明確になり、家族間のトラブルにつながるおそれもあります。受託者を誰にするのかを決める際には、本人との信頼関係だけでなく、財産管理を継続できるかどうかも考慮しましょう。

    必要に応じて、専門家に定期的な管理状況の確認を依頼することも選択肢となります。

    まとめ

    家族信託では、現金や不動産、株式など幅広い財産を信託することができます。

    しかし、年金受給権などの一身専属権や、借金などのマイナスの財産は、そのまま信託することができません。また、農地や預貯金についても、法律上の制限や財産の性質による制約があり、通常の財産と同じように信託できるわけではありません。

    さらに、上場株式や投資信託、生命保険契約、借入れが残っている不動産などは、信託する際に一定の制限や実務上のハードルがあります。

    信託できない財産についても、預貯金を現金として信託したり、成年後見制度や遺言などを組み合わせたりすることで、本人の希望に沿った財産管理や承継を実現できる場合があります。

    家族信託を検討する際には、信託したい財産の種類や状況を確認し、必要な手続きや注意点を把握したうえで、適切な仕組みを設計することが大切です。

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